月天03 [1/2] 目次


スペシャルインタビュー いけぶん×アート

 

いけぶん「みんなの笑顔・思いの木」

 

私の愛しの美化委員長晴海まどか

 

七月六日なかのたいとう

 

白昼夢シラカネ ミクニ

 

大神佐藤弘悦

 

エコノミック・アニマル仲村ひなた

 

迷子のじかん柳川たみ

 

看板娘には公然の秘密がある宗像ちよこ

 

作家一覧

出版情報

 

 

月天03 [2/2] 目次

 

スペシャルインタビュー いけぶん×電子書籍

 

いけぶん アートコレクション

 

うごのくそ山田宗太朗

 

石化少女木橋啓助

 

ウクララ王女のオアシス天野 蒼

 

色彩病登り山泰至

 

煙草の中の冒険北島雅弘

 

絵本『青の月』より 李白の詩「把酒問月」を添えて初見 寧

 

作家一覧編集後記出版情報

 

 ポップな色遣い、かわいい雰囲気でありながらどこかシュールで、洋風かと思いきや滲みでてくるのは和の雰囲気。アーティスト・いけぶん氏の作りだす世界を一言で表現するのは非常に難しく、それはほとんど不可能に近い。

 いけぶん氏がアートに目覚めたのはほんの数年前。アーティストとしてはスタートが遅いかもしれない。けれども、その開花のスピードはあまりに目まぐるしい。二〇一一年には「アート未来展」に初出展で特選賞受賞、その後三年間連続入賞。その後もゲストハウスの天井に絵を描いたり、カフェやギャラリーに作品を展示したり、日本テレビの「おしゃれイズム」のスタジオアートを担当したりするなど、その活躍の場はあまりに広い。

 これらの活動歴を見ると、いけぶん氏の活動は絵画の制作が主であり、画家ではないかと思われるかもしれない。だが実際には平面に限らず、神輿(みこし)のようなオブジェの創作に始まり、お手製のバッグや帽子などの小物類の制作なども手掛けている。そして氏が、現在最も力を入れているのが参加型ライブアート「みんなの笑顔・思いの木」である。活動の範囲は非常に幅広い。

 いけぶん氏はこう述べている。

「自分は画家ではないし彫刻家でもない。『いけぶんアート』というジャンルを作りたい」

 そんないけぶん氏の世界の一端を、ぜひ覗いてほしい。

 

 

 ——いけぶんさんがアートに目覚めてから、実はまだ五年も経っていないとお聞きしました。どうしてアートを始めようと思ったのか、そのきっかけを教えていただけますか?

 

 きっかけは、思いっきり偶然です。スケジュールが半日空いたので、たまたま通りすがった東京都現代美術館(注)に生まれて初めて入ったんですよ。もともと仕事は建築業で、アートとはまったくの無縁でした。なので最初は、こんな広いスペースにうちらの税金を使っていて、なんかもったいないなぁ、くらいの気持ちで見ていました(笑)

 そこで、あまーりに時間があったので。ワケがわからない作品だなぁと思いつつ、ある作品の説明文を読んで、作品をスミのスミまでジーっと見てみたんですよ。したら、あっなるほどな、こういう作品だったんだ、へ〜っみたいに思えてきて。

 それを二つ、三つ続けていたら、自分でも不思議なんですが、足が動かなくなっていったんですよ。作品がドンドン体に伝わってきて、まるで生きているようにも感じました。そうしたら最初の作品がフラッシュバッグしてきて、もう一度戻ってみたりして……

 こうして、美術館を出る頃には、いけぶんが誕生していました。あのとき、〝いけぶん〟っていう自分がこの世界にいる、ということを発見したように感じたんです。

 理由はこれだけです。アートをやりたいとか思ったのではなく(ここ重要です!)、自分がアーティストであるということに、突然気づいてしまったんです。

 

編注 東京都現代美術館:東京都江東区三好にある、現代美術専門の公立美術館。

 

 ——いけぶんさんのアートって、すごく表情豊かだなぁと思います。不思議な生物や人の顔などが生き生きしていて。この〝顔〟には、何か特別な思いなどが込められているのでしょうか?

 

 そこに気づいていただいて感謝です!

 この〝顔〟には、未来を詰めています。

 私は、未来と通じる世界と、絵を見ている皆さんに、会話をしてほしいと願っています。その未来へ導いてくれるものとして、顔が存在するんですね。

 私が描くほとんどの顔は、目線が少し横を向いています。これは未来を見ているんです。逆に、正面を見ているときは今を見ているということです。

 いけぶんの鉄則で人が不幸になる絵は思い浮かんでも描かない、スカル(骸骨)も描かない、それだけは決めました。不思議な生物(妖精)が多いのは、私たちは彼らに守られているのだ、と伝えたいからです。それと、私の頭の中に『私を描きなさい』って妖精が出てくるのもありますけどね。

 

 ——そんないけぶんさんの代表作といえば、二〇一一年に「アート未来展」で特選賞を受賞された作品なのかなぁと思っているのですが。

 

 ——この作品を描いたきっかけやモチーフ、込めた思いなどを教えていただけますか?

 

 賞をいただいたときに、色んなことがわかりました。多分、護国寺(注)の神様に描かされましたね。経緯はこうです。

 車で信号待ちをしているときに、右側がどうも気になってチラッと見たんですよ。それが護国寺の横にある古〜い門だったの。ものすごく気になったんだけど、そのときは持っていた携帯でパチリってしただけでした。

 でも、それから二ヶ月経っても、まだ頭ん中に引っかかって……。迫ってくるように感じたんですよねぇ。ならば、邪念を消して素直に古~い家と、日本らしさを描いて見たらどうかなぁって。

 描いていくうちに、人々の暮らしがこの中に見えてきて。描けたときには、現れた! って思いました。

 いけぶんの力だけでは描けなかった作品です。神を感じましたね。

 

編注 護国寺:東京都文京区大塚にある真言宗豊山派の寺。多くの文化財を有する。

 

 ——いけぶんさんの活動は絵画に限らず、非常に多岐にわたっていて精力的ですよね。「みんなの笑顔・思いの木」については別でご紹介させていただくとして。今後、もっとこういうことを表現していきたい、こういうことをやってみたい、など、チャレンジしていきたいことなどありますか?

 

 そうです、チャレンジしかないですね、枠から外れているので(笑)いけぶんという存在であるためにも、自分から既存の枠に当てはまるようなことはしたくありません。

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