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先住民の呼称は差別か愛着か 米プロスポーツ界に強まる変更論議

産経新聞 6月17日(火)7時55分配信

 米国のプロスポーツで使われている、先住民の「アメリカ・インディアン」にちなんだチーム名やマスコット人形の追放を求める動きが強まっている。もともとは“勇敢なインディアン戦士”のイメージから使用された歴史があるとはいえ「差別的な印象を与える」「時代錯誤的」との声が続出し、米政界も巻き込んだ論争に発展している。(米東部メリーランド州ランドバー 黒沢潤)

 ◆政界も巻き込み

 「『レッドスキンズ(赤い肌の者たち)』というチーム名は、先住民を侮蔑している。変更すべきだ」

 緑豊かなメリーランド州ランドバーにある米プロフットボール(NFL)チーム、「レッドスキンズ」のスタジアム前。先住民の依頼人を多く抱える弁護士事務所職員、バーネッサ・ダニエルズさん(35)はこう強調した。

 レッドスキンズの名称には、政界からも批判が出ている。東部ニューヨーク州下院のカリム・カマラ議員(民主党)は「ウェブスター辞書も米政府も、この言葉(レッドスキン)を人種差別的な中傷語とみなしてきた」と強調。その上で、「今の時代、先住民の品格をおとしめるようなプロのチームが米国の首都の近くにあること自体が憤慨すべきことだ」と語る。

 連邦上院の民主党議員50人も5月22日、NFLに対し、レッドスキンズの名称変更を迫るよう求める書簡を送付した。

 共和党でも、これに同調する動きが出ている。2012年の米大統領選共和党候補のマケイン上院議員は「私が彼(レッドスキンズのオーナー、ダニエル・スナイダー氏)だったら、(先住民と)対話するだろう。先住民がチーム名を侮辱と感じるなら、私は変更する」と述べた。

 名称変更問題は、ニューヨーク州のオネイダ部族が昨年6月、本格的に取り上げたことから注目された。レイ・ハルブリッター酋長(しゅうちょう)は「年間90億ドル(約9200億円)の収益を上げ、米国内で影響力のあるNFLは、重大な責任を持っている」と指摘する。

 だが、NFLはレッドスキンズに圧力をかけることに及び腰だ。レッドスキンズのスナイダー氏も、チーム名は「名誉の象徴」として変更に応じない構えだ。

 こうした中、全米184の先住民地域で作る団体が最近、レッドスキンズ主催の慈善ゴルフ大会(アリゾナ州)のスポンサーから降りる事態へと発展した。米東部の高校では、レッドスキンズという単語を校内新聞で使わないよう検討する所も出てきた。

 ◆懐疑的ファンも

 同じような動きは、大リーグやプロホッケー界でも起きている。

 顔が赤くて鼻が異様に高く、ニンマリ笑う先住民のデザインを使う米大リーグのインディアンス(中西部オハイオ州クリーブランド)に対しては、「試合開始前に先住民が球場近くで頻繁に抗議する」=先住民の流れをくむトニーさん(30)=という。チームは数年前から先住民に配慮し、クリーブランドの頭文字である「C」のロゴを各種グッズに使い始めた。

 頭に羽根飾りを付けた先住民のデザインを使うアイスホッケー北米プロリーグ(NHL)のブラックホークス(イリノイ州シカゴ)にも圧力がかかる。チームは対策を検討中だ。

 米国内では「誇り高き狩人の先住民にちなんだチーム名やロゴを使うのは、先住民に愛着を感じるからこそ。彼らに嫌悪感を抱くなら、そもそも採用しない」=インディアンスの女性ファン(49)=と、見直しに懐疑的な声もある。

 ただ、米国内では1978年以降、先住民にちなむチーム名を変更したり、マスコット人形を廃止したりした高校や大学が約3千校に上る。レッドスキンズが名称変更に踏み切れば、他のプロチームにも“ドミノ倒し”のように波及するとの見方が強まっている。

最終更新:6月17日(火)16時26分

産経新聞

 

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