自民党岸田派(宏池会)の名誉会長を務める古賀誠元幹事長が、存在感をアピールしようと躍起になっている。安倍晋三首相に対して、靖国神社に合祀されているA級戦犯の分祀を唐突に提案するなど、国会議員を引退したとは思えないほど精力的に動いている。だが、本人の思惑とは裏腹に、政界から向けられる視線は冷ややかだ。
「分祀とかね。これこそ安倍さんにしかできない。靖国に参拝する勇気があるなら戦争決着の勇気を持ってもらいたい」
古賀氏は今月初め、ラジオ番組の収録でこう語り、A級戦犯の分祀を求めた。12日には、1年生議員8人を連れて、宏池会中興の祖である大平正芳元首相が眠る東京都府中市の多磨霊園を訪問した。
かつて党内で権勢を誇った古賀氏は、安倍晋三首相が目指す集団的自衛権の行使容認には反対の立場で、権力闘争を起こそうとしたが失敗。今国会閉会後には内閣改造・党役員人事が控えているため、派内では「宏池会=反安倍とみられかねず迷惑だ」(中堅)との声も出るなど、影響力低下は隠しようもない。
分祀論や墓参りには、これを挽回する狙いがあるとの見方が強い。
ただ、分祀論には、宏池会出身の菅義偉官房長官が「信教の自由に関する事柄なので、政府として見解を述べる立場にない」と一蹴。古賀氏の凋落ぶりだけが目立つ結果となっている。