メキシコ代表は日本のお手本となるか?

日々是世界杯2014(6月17日)

2014/6/18 21:16配信 宇都宮徹壱/スポーツナビ

今大会初めて、デモに出くわす

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フォルタレーザの会場付近で反W杯デモを繰り広げる人々。機動隊の催涙弾を受けて退散した【宇都宮徹壱】

 ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の6日目。この日はグループHの2試合、13時(現地時間。以下同)からのベルギー対アルジェリア(@ベロオリゾンテ)、19時からのロシア対韓国(@クイアバ)が行われ、その間の16時にグループAの2巡目となるブラジル対メキシコがフォルタレーザで開催された。

 投宿先のクムブコから、メディアバスが出るフォルタレーザのホテルまで、タクシーでおよそ40分。水着姿の観光客がそぞろ歩くのどかなリゾート地から、高層ホテルが建ち並ぶフォルタレーザの中心街まで、風景が徐々に都会的になるにつれて、カナリア色のブラジル代表ユニホームと、アウリヴェルジ(ポルトガル語で「黄金と緑」の意味)のブラジル国旗がやたらと視界に入ってくる。セレソン(ブラジル代表の愛称)を迎えたフォルタレーザは、まさにフェスタ一色となっていた。

 とはいえ、開幕から間もなく1週間がたつこの時期にあっても、W杯を快く思わない一定数の人々は存在する。タクシーからメディアバスに乗り換えて、今日の会場であるエスタディオ・カステロンに向かう途中、いきなり渋滞にはまってしまった。最初は単に、試合当日だからかなと思っていたのだが、車窓の向こう側にさまざまな横断幕を掲げた人々がいるのを目視して、瞬時に反W杯デモが原因であることに気づいた。

 急いでカメラを取り出し、デモ隊の表情にフォーカスを合わせる。すると目の前で「ドン!」という衝撃音がした。デモ隊の若者が、敵意丸出しの表情で車窓をたたいたのである。

 ほどなくして機動隊が応戦するべく、デモ隊に向けて催涙弾を投げ込んだ。密閉されているはずのメディアバスにも催涙ガスが入りこんできて、目頭がツーンと刺激される。私は今大会、日本がベスト8進出を果たすまで、大事に涙を取っておこうと考えている。だから催涙ガスごときで泣くわけにはいかないと、何とかこらえた。幸い、デモ隊はくもの子を散らすように逃げ去り、再びバスはスタジアムに向けて動き出した。余談ながら、催涙ガスを浴びた目には、レモン水を浸すと良いそうである。

GKオチョアと5バックに沈黙したブラジル

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ラジル対メキシコのカードは、昨年のコンフェデレーションズカップも、ここカルデロンで行われた【宇都宮徹壱】

 キックオフ15分前、ぎりぎりで記者席に到着。ブラジルとメキシコの顔合わせといえば、最近では昨年のコンフェデレーションズカップで、会場も同じくここカステロンで行われている(結果は2−0でブラジルが勝利)。
 その後、メキシコは当時のホセ・マヌエル・デ・ラ・トーレ監督から2人の暫定監督を経てミゲル・エレーラ監督に交代し、その中でメンバーもシステムも大きく変わった。

 今大会の代表で特徴的なのは3バックを採用していること。そして状況によっては、両ウイングを下げて速やかに5バックに変化することである。5バックといえば、タンパで日本が対戦したコスタリカが思い出されるが、今大会ではオランダも初戦のスペイン戦で披露し、結果として5−1と大勝したことで話題になった。一方、コスタリカもウルグアイに3−1で勝利しており、5バックは密かなトレンドになりつつある。

 この試合は、ブラジルの圧倒的な攻撃陣に対して、メキシコがどのような対応策を見せるかに注目してみた。初戦のカメルーン戦に1−0で勝利しているメキシコにしてみれば、ブラジルとの第2戦は引き分けでも十分。ゆえに守備的な布陣で臨むことが予想されたが、フタを開けてみると3バックで中央をしっかり固めつつも、両ウイングは攻めこまれている時間帯を除いては比較的高いポジションをキープしており、決して引いて守るというわけではない。

 前半はブラジルが敵陣でプレーする時間帯が続いたが、後半に入るとメキシコが主導権を握り、ブラジルが守勢に回ってカウンター狙いという場面も見られた。メキシコは無理にバイタルエリアをこじ開けるのではなく、精度の高いミドルシュートを連発することで、ブラジルに心理的な脅威を与え続けた。

 中央をしっかり固められているので、ネイマールのドリブルも絡め取られる。両サイドも守備の意識が高いので、なかなかクロスを供給できない。手詰まりとなったブラジルは、交代カード3枚すべてを攻撃陣の入れ替えに費やし、何とか打開を図ろうとするが、効果は上がらない。セットプレーで活路を見いだそうとするも、守護神ギジェルモ・オチョアのファインセーブに阻まれ、スタンドからは何度もため息がもれた(とりわけ後半41分、ネイマールのFKにチアゴ・シウバが頭で合わせた決定的なシーンを防いだオチョアの反応は、まさに神がかっていたと言えよう)。

 結局、試合は0−0のスコアレスドローで終了。この試合でグループリーグ突破を決めたかったブラジルにとっては、いささか心外な足踏みとなってしまった。

 一方のメキシコは、勝利に近い引き分けと言えよう。トータル的に見ても、ゴールこそなかったものの、随所に見どころの詰まった好ゲームであった。

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※時間は日本時間で表示しています。現地時間は-12時間(クイアバ、マナウスは-13時間)の時差があります。
※大会運営・公式記録の規定に従い、ホーム側と指定されたチームを左(先)に記載しています。

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