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【産経抄】悪い密約 6月18日

ニュースカテゴリ:政治の政策

【産経抄】悪い密約 6月18日

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 「密約」という言葉でまず思い浮かぶのは、昭和47年の沖縄返還をめぐり、日米両政府が交わしたとされる文書である。日本政府は長らく否定していたが、やがてその存在を裏付ける米政府公文書が見つかった。

 ▼密約文書の開示を求めた沖縄返還密約訴訟では、当時の外務省アメリカ局長が、存在を法廷で初めて認めた。そのとき一部の新聞は、「国家の嘘を歴史が裁く」などと、大はしゃぎしたものだ。

 ▼今年元日の小紙は、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の「河野洋平官房長官談話」についても、日韓両国の間で密約があったことを伝えていた。原案に「反省の気持ち」という言葉を付け加えるなど、細かいすり合わせの事実を明らかにしたものだ。

 ▼さらに、きのうの1面の記事によると、談話の作成時、韓国側の担当者だった元外交官は、すり合わせについては日本側から「相談に乗ってほしい」と要請があった、と証言している。「韓国とすり合わせる性格のものではありません」と朝日新聞のインタビューに答えた河野氏は、嘘をついていたことになる。

 ▼河野談話については、根拠となった調査がいかにずさんであったか、すでに明らかになっている。事実より謝罪を優先した談話は、日本政府が期待した慰安婦問題の決着には、残念ながら結びつかなかった。それどころか国際社会で歴史戦を仕掛け、日本人の名誉を貶(おとし)める韓国に、格好の材料を与えてしまった。

 ▼小欄は密約自体を否定するつもりはない。外交の現場では、国益にかなうと信じつつ、後世の評価を待つしかない判断を迫られるときがある。自分の言い分を聞いてくれるメディアにしか登場しない河野氏には、そんな歴史の法廷に立つ覚悟が、決定的に欠けている。

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