第1話 暗い地下で プロローグ
6/8修正 序盤の修正プロジェクト始動!少しずつ直していきます。
薄暗い地下、小さな陽取り窓からかろうじて光が差し込むその空間には細かく区切られた小部屋が無数に並んでいる。
牢獄のようなこの部屋で俺は横になっていた。
横になっているだけで眠っては居ない。
ある騒音が安眠を妨害しているからだ。
うるさい女だ、もっと静かに犯されればいいのに。
「ここ」ではいつものこと、また監視役が好みの商品をつまみ食いしているのだろう。
誰も気にかけないし、気にしてもどうしようもない。
さっさと終われとばかりに毛布……ダニだらけの布を被った。
やがて声はなくなり静寂が戻る。
朝日が昇るまでそう長くはないが睡眠時間は多いほうがいい。
俺は目を閉じ、朝までの短い安息を満喫する。
俺が「ここ」にきたのはまだ物心付かない時だ。
気がついたらここに居た、来る前にどこにいたのかは知らないし、何故来たのかもわからない。
俺自身の歳も13か14かと言ったところで正確なところはわからない。ある程度育ってから来た奴から聞く限り、親に売られたか、盗賊にでもさらわれたのだと言うことだ。
「ここ」はどういう場所なのかは簡単に説明が出来る。
少年少女が集められ、抱かれたり殺し合いをさせられたりして変態客を楽しませるところだ。
ジャンジャンと鳴らされる下品な音で目を覚まし、飛び起きる。
準備するのは身体一つだけだ。
今日もまた生きるか死ぬかの戦いが始まる。
小部屋から出て食堂で吐瀉物のようなスープを流し込み待機する。
「フィニー、上で客が待ちかねてる水浴びしたらさっさといけ!」
「ドラ!てめえはご婦人の相手だ!金払いがいい、下手打ったらただじゃおかねえぞ!」
「エイギル!お前は試合だ、さっさと武器を選んで準備しろ!」
監視役が怒鳴り、集まった奴らが散っていく。
エイギルとは俺のことで、何かの神話に出てくる名前らしい。
以前の試合で相手を脳天から股下まで真っ二つにした時につけられた名だ。
他の奴らの名前はよく聞こえなかったし、覚えてもいない。
どの道すぐにいなくなるから覚えるだけ手間なのだ。
俺の相手として指名された男、といっても15にもならない少年の顔色が変わる。
試合というのはつまるところ客の前での真剣での殺し合いだ。
客は金を賭け、声援を送り、決着すればその凄惨な光景を楽しむのだ。
1対1だけではなく、猛獣と戦わせる、あるいは小さな少女を一方的に嬲り殺すような趣味の悪い試合もある。
相手の顔色の原因は俺だ。
俺は他の奴らと違って客をとらされることは少ない。
筋肉はよくつき、身長も低くないので子供を犯す変態の好みではない。
だが男として年増女の相手をするには愛想も可愛げもないからだ。
俺の「ここ」での役目は試合だ。
そして試合における敗北はすなわち死である。
俺は「ここ」での試合、数えて100戦余りを生き残った。
俺は手枷、足枷を外されて試合へ向かう。
手に持つ武器は馴染みの大剣だ。
刃渡り1.2m 重さ10kgはあろうかという分厚い両刃の両手剣
身長が160に届かない俺が持つと明らかに不恰好だが、刃こぼれと血油だらけのこの剣で俺は今まで生き残ってきた。
相手の装備は刃渡り60cmの片手剣と皮の丸盾のようだ。
剣を振り、感触を確かめている動作からは剣を握るのは初めてと言うわけでもないようだが
お前の装備は間違った選択だぞと、心の中で呟く。
どのみち皮の盾で俺の両手剣は防げない。
勝機は懐に飛び込んでの一撃しかないのだ。
盾など動きと視界を妨害するだけでしかないのに。
勿論声に出したりはしない。
相手が進んで死にやすくなってくれるのだから。
大広間・・・といってもせいぜい20人が入れる場所に過ぎないが。
その中心に鉄製の柵に囲まれた「闘技場」があるのだ
壁際には椅子が置かれ10数人の客が罵声とも歓声ともつかぬ声を上げる。
彼らの中心に鎧と槍で武装した監視役と「ここ」の主、肥え太った豚のような男がいる。
奴がいるなら観客の中によほどの上客がいるということなのだろう。
あの豚が 女を犯す、飯、酒を喰らう、金を数える、以外のことをするのは相当のことだ。
俺には関係のないことだが。
豚は、俺がいかに強いか、相手もそれに対抗できるかを語りたてる。
大げさな語りだが、実際にこれで賭け金が積みあがるのだから笑える。
俺は相手とただ向き合う。
何も難しく無い。
勝てば食事がいくらか豪華になり明日を迎える。
負ければここで死ぬ、それだけの話だ。
俺は左脚を前に一歩出して剣を右肩に担ぐように構える。
相手も盾を構え脇を開いて剣をこちらに突き出す。
さあ戦いだ。
殺すか殺されるか、終わってみるまではわからない。
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