旧日本軍の慰安婦問題について「何もかも日本の過ちではなく、韓国にも責任がある」との観点で書かれた『帝国の慰安婦』という本が、元慰安婦たちによって告訴された。この本は昨年8月に出版された当時「あらゆる主張が盛り込まれているため、日本に免罪符を与えかねない」と評する声が多かったが、中にも「韓国人がこれまで知っていたのとは異なる慰安婦のありさまを示すものだ」という評価もあった。著者の朴裕河(パク・ユハ)氏(57)=女性=は韓国で生まれ、日本の慶応大学や早稲田大学大学院で日本文学を学んだ後、現在は世宗大学日本語日本文学科教授を務めている。
旧日本軍の元慰安婦たちは16日、朴氏を名誉毀損(きそん)の疑いで告訴し、17日には本の出版や販売などを禁止するよう求める仮処分を申し立てる。イ・オクソンさん(88)など9人の元慰安婦は告訴状で「この本は私たちを『売春婦』や『日本軍の協力者』と表現している」と主張した。
朴氏は本の中で「朝鮮人慰安婦と日本軍の関係は基本的には同志的な関係だった(67ページ)」「日本軍による性的暴力は、1回きりの強姦(ごうかん)や、拉致した上での性的暴力、管理下での売春の3種類があった。(中略)朝鮮人慰安婦の大部分はこの3番目のケースが中心だ(110ページ)」とつづっている。
元慰安婦たちの訴訟を支援する漢陽大学法学専門大学院のパク・ソンア教授は「元慰安婦の女性たちは日本軍によって性的な搾取をされた被害者なのに、この本は女性たちを『共犯』として描写している」と主張した。
一方、著者の朴裕河氏は「この本は日本を十分に批判するために書いたものだ。慰安婦問題のように主張が対立する事案について評価するには、反対の主張も含め、あらゆる事実を客観的に検証する姿勢が必要だ」と主張している。