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STAP細胞 広がる疑義

6月17日 20時10分

藤原淳登記者

STAP細胞の存在が根底から揺らいでいます。
STAP細胞の論文の著者の1人、山梨大学の若山照彦教授が第三者機関に依頼していた細胞の解析結果が発表されました。
理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーが作製し、若山教授が培養したこの細胞。
しかし、解析の結果、小保方リーダーが使ったとしていたマウスの細胞ではないことが分かったのです。
STAP細胞を巡る疑義はさらに広がっています。
科学文化部の藤原淳登記者が解説します。

若山教授の解析

ことし3月、若山教授は小保方リーダーをはじめとする著者たちに論文の取り下げを呼びかけるとともに、みずからが保管していたSTAP研究に関係する細胞の詳しい解析を第三者機関に依頼していました。

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解析に当たったのは、この分野で有数の技術を持つ放射線医学総合研究所です。
解析されたのは小保方リーダーから受け取ったSTAP細胞をもとに若山教授が培養した細胞。
そのままでは死んでしまうSTAP細胞を特殊な方法で培養することで増殖性を高め、凍結保存できるようにした「STAP幹細胞」と呼ばれる細胞です。

解析の結果・・・

解析の結果は若山教授を驚かせました。
小保方リーダーがSTAP細胞を作る際に使われたマウスは若山教授が提供していました。

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このマウスは染色体の一部に緑色に光る遺伝子が入っていました。
このマウスの細胞は別のさまざまな細胞に変化しても緑色に光り続けるため、研究成果が一目で分かるのです。
光る遺伝子は染色体の中にランダムに入れられますが、一度入ってしまうとその染色体が子孫のマウスに受け継がれていきます。

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若山教授が光る遺伝子を入れていたのはマウスの18番目の染色体でした。
ところが保存されていたSTAP幹細胞では、光る遺伝子が入っていたのは15番目の染色体だったというのです。
これは8株あるSTAP幹細胞すべてで同じ結果でした。
若山教授の研究室では過去に15番染色体に光る遺伝子が入ったマウスを使用した記録は、一切ありませんでした。
今回の結果について若山教授は記者会見で「僕の研究室から提供されるマウスからでは絶対にできない結果になったということです。すべての解析結果が今のところは否定する結果になっている。小保方さん自身でこの問題、解決に向けて行動してもらいたいと思っています」と話しました。

さらに新たな事実が

疑問として残されるのは、STAP細胞を培養したとされていた細胞が何から作られたのか、です。
もう1つの新たな分析結果が明らかになりました。

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若山教授がSTAP論文の取り下げを呼びかけてから小保方リーダーが所属する神戸市の理化学研究所発生・再生科学総合研究センターでは小保方リーダーの研究室に残されていた細胞などのサンプルを回収し、厳重に保管していました。
そして若山教授の第三者機関での検査結果を受けて、保管していたサンプルを調べました。
小保方リーダーが使っていた研究所内の冷凍庫には「ES」と書かれたラベルを貼った容器が複数、保存されていました。
センターの研究者が中にあった細胞の遺伝子を詳しく分析した結果、このうちの1つの容器に入っていた細胞の15番目の染色体に緑色の光を出す遺伝子が入っていることが分かったのです。

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若山教授がSTAP幹細胞として保存していた細胞と遺伝子の特徴が一致したことになります。
容器に貼られていた「ES」というラベルは、ES細胞のことを指すのか?
実は、ES細胞とSTAP幹細胞は性質が非常によく似ているため、「ES」と書かれた容器の中の細胞が本当にES細胞かどうかを調べるのは簡単ではありません。
このため理化学研究所では「これだけでSTAP細胞がES細胞だったと結論付けることはできないが、今後さらに詳しく検証を進めていきたい」とコメントしています。

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これについて日本分子生物学会の副理事長で九州大学の中山敬一教授は、「これまではSTAP細胞はあるという前提で話が進んでいたが、今回の分析結果は、実際にはES細胞だった可能性を強く示している。こうしたデータが明らかになった以上、ミスでは説明がつかず、人為的な混入も考えられるので小保方さんや笹井さんがみずから会見し、説明するのが科学者としての義務だ」と指摘しています。

小保方リーダー側の反応

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今回の一連の解析結果について小保方リーダーの代理人を務める三木秀夫弁護士は、報道陣に対し、「小保方さんと連絡を取ったが、体調がとても悪かった。内容を十分に把握できていないので、コメントは控えたい」と述べ、詳しい説明を避けました。
また、「本人が説明するのが科学者の使命ではないか」という質問に対しては、「そう思うが、今、私があるべき論に答えるべきではない」として、今後、弁護団で事実関係を確認したうえで対応を検討すると述べました。

今後はどうなる?

理化学研究所では現在、所内の研究者がSTAP細胞を再現する実験に取り組んでいます。

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1年計画で行われる実験ですが、7月末にも、その中間結果が発表される予定となっています。
これについては理化学研究所が設置した外部の有識者による改革委員会では、先週発表した研究不正防止のための提言の中で、この実験に小保方リーダー自身を厳重な監視の下で参加させるべきだと指摘しています。
理化学研究所では小保方リーダーがすでに神戸市のセンターに出勤し、実験チームに助言を与えたことがあることを明らかにしていますが、実験そのものについては関わっていないとしています。
今後、小保方リーダー自身がどのように関わるのか注目されます。
また、理化学研究所では現在、懲戒委員会を開いて小保方リーダーをはじめ関係者の処分を決めることにしています。
一方で、これだけ新たに疑義や問題点が明らかになってきた状況を考えると小保方リーダー自身や小保方リーダーの指導役だった笹井芳樹副センター長は改めて記者会見を開くなどしてこうした疑問点について科学的な説明をすることが求められています。