ゾンビ、カンフー、ロックンロール このページをアンテナに追加

2014-06-17

ドラゴン超新星爆誕! 『ハイキック・エンジェルス』 女ドラゴン超新星爆誕! 『ハイキック・エンジェルス』を含むブックマーク

『ハイキック・エンジェルス』観賞。

思えば『ドラゴン 危機一発』はだらしのない作品だった。モッタリとした展開。当時としても時代遅れなトランポリン・アクション。くだらなすぎるギャグ。細面の冴えない“ビッグボス”。そんなだらしのない作品でも本作は「伝説映画」足りえている。それは、むろん「動くブルース・リー」が記録されているからだ。

f:id:samurai_kung_fu:20140617135248j:image

『ハイキック・エンジェルス』は、かわいいワンピース姿で瓦割りをするCMで人気の武田梨奈ちゃんを発掘した『ハイキック・ガール』『KGカラテガール』の西冬彦がプロデュースと脚本を手掛ける一連のガールズ・カラテ・アクション映画の最新作だ。

問題は明確である。

西冬彦はブルース・リージャッキー・チェンが好きなのだろう。格闘技(空手)が好きなのも解る。しかし、映画が好きなようには思えない。少なくとも作品からは、映画が好きで映画製作をする者なら当たり前に獲得しているはずの映画テクニックは欠片も見えない。

『ハイキック・ガール』『KGカラテ・ガール』に本作『ハイキック・エンジェルス』3本とも「悪の秘密結社と戦う少女」という中学生が2秒で考えたようなプロットだ。それを飽きもせず繰り返し描く様は「馬鹿の一つ覚え」と罵りたい。特に本作では「さぁゲームの始まりよ!」という、現在邦画ダメさを象徴することで有名なセリフがご丁寧に一字一句違わず飛び出す始末だ。

アクション映画の要はアクションから、まぁストーリー荒唐無稽さとマンネリには目をつむろう。では、その肝心要のアクションは? というと作品を追うごとにレベルアップしているのは解る。『KGカラテ・ガール』での、キックを受ける悪役が試し割り然と拳を腰に添えて身構えているようなマヌケさは無いし、パルクール風アクションなども決まっている。

しかし、見せ方が全くなっていない。ジャッキー・チェン主演の作品群や、近年のトニー・ジャー作品ドニー・イェン作品からカット割りやアングルカメラワークを習おうというそぶりも見えない。いったい誰のどの作品に影響を受けるとアクションに合わせてカメラを振り回す愚行に至るのだろうか? 格闘シーンで打撃を受ける悪役の背中ごしなどというアングルを思いつくのだろうか? ほぼ垂直に掲げられた足が振り下ろされるのと、その足が悪役を打ちのめす瞬間をわざわざカットを割って見せる意味が解らない。 中でも特にひどいのはオープニングすぐ、主人公の決めるパルクール技は、手前にある木のおかげでほとんど見えない。

ハッキリと言ってしまうと本作はかなり「だらしのない作品」だ。

f:id:samurai_kung_fu:20140617140724j:image

そんなだらしのない作品を「動くブルース・リー」並みに、奇跡的なまでに救っているのが主人公サクラ」を演じる宮原華音(みやはら・かのん)ちゃんだ。

パンツ丸出し(もちろんパンツに見えるブルマか水着のようなものだろうが)でハイキックや回し蹴りをキメ、ジム・キャリーばりに表情を変え、ゲラゲラ笑って怒涛のように駆け抜けたかと思えば、強大な敵に打ちのめされて塞ぎ込んでしまう。本作はほとんど彼女の表情ショー・ケースの様相を呈している。全編にわたる彼女の愉快なぬいぐるみじみた様子を見ている間はニヤニヤが止まらない。

武田梨奈ちゃんが千葉誠司、井口昇金子修介*1に見出されたように。ブルース・リーがセルフ・プロデュースで世に出ていったように。本作は宮原華音ちゃんにとっての『ドラゴン 危機一発』になるであろう。

*1:あと、古澤健もいるけど、もっと重用すべき!

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/samurai_kung_fu/20140617