ここから本文です

【W杯】スペインメディアが見た日本。「立派な試合以上のものをした」。なぜか高評価、その背景にある厳しい現実

フットボールチャンネル 6月16日(月)16時30分配信

写真を拡大 写真を拡大

【W杯】スペインメディアが見た日本。「立派な試合以上のものをした」。なぜか高評価、その背景にある厳しい現実

写真を縮小 写真を縮小

【W杯】スペインメディアが見た日本。「立派な試合以上のものをした」。なぜか高評価、その背景にある厳しい現実
香川真司【写真:Getty Images】
「立派な試合以上のものをしたし、それは結果以上に価値のあること」

「レシフェには、わずかに雨が降っており、日本はビニール傘とシューズで雨に濡れることを恐れずに散歩をしていた。そこに台風がやってきた。台風の名はドログバと言った」。

これは、日本対コートジボワール戦を終えた後のスペインのスポーツ紙、アス紙の書き出しだ。

 同紙は言う。「日本は立派な試合以上のものをしたし、それは結果以上に価値のあることだ」と。これは一つの真実かもしれないが、同じ結果を自国代表が手にした時、決して同じことが書かれることはないだろう。

 結果が伴わなければ、「立派な試合」をしたとはいえない。そして、それがW杯なら、なおさらだ。

 厳しい言い方になるが、まるで運動会でスポーツが苦手なのに頑張った子どもに対して、「結果は出なかったけれど、本当によくやったね」と親が励ましているようなトーンがスペインマスコミ全体的に見られた、というのが個人的な印象だ。

 とはいえ以前、日本代表がスペインの関心を惹くことなどは、全くなかった。それでも、前回のW杯、昨年のコンフェデレーション杯での活躍は高く評価され、ここまで来たのだ。

 加えて、日本代表の主軸が現在は欧州でプレーしているため、長友、長谷部、本田、香川などは、サムライブルーに興味のない一般のサッカーファンにも、十分名前が知られている。

 中でも、ドイツで一躍名を馳せてから、プレミアムリーグへ移籍した香川への評価は高い。それだけに批判される時も、他の選手より厳しく罵倒される。

 実際、試合後にスペインのサイトに書き込まれた批評には「サイアクカガワ」、「ドルトムンドを出たのが失敗だった」、「ピッチでの存在感ゼロ」など、厳しい声が飛んだ。

香川へのバッシングは期待の裏返し。バッシングなければ期待もない

 だが、こういった批判は額面通り受け取ってはならない。サッカー文化が定着している国で活躍できなかったことを非難されているのは、活躍できる選手だと根本で評価されている証明であり、香川が責められるのは期待の裏返しなのだ。

 つまり、バッシングされない香川以外の選手は、ほとんど期待されていないに等しいと言ってもいい。「時速100キロのゴールを決めた」とエル・ムンド紙にも報じられた本田は試合に貢献したので話は別だが、その本田のゴールも結果的には助けにならなかった。

 もとい、スペイン的には今回の日本対コートジボワール戦が行われたのは、午前3時だったため、大半は試合全体を見ていないと思われる。

 しかし、報道局は本田がゴールを決めるまで、「日本は試合をコントロールしている」、「非常によくオーガナイズできている」、「日本の最近の成長ぶりは目覚ましい」、「昨年のコンフェデレーション杯にしても、ベスト8でスペインと対戦しなかったのは、唯一PK戦が阻んだだけではないか」などと賞賛していた。

 以前は一人の名前を発音するのさえ、困窮していたスペインだが、「伝説的選手、遠藤」などと過去の遠藤での活躍を思い出し、交代をアナウンスするなど、日本での知名度がぐっとあがっていることが、今回のW杯では垣間見えた。

 だが、コートジボワールに負けた今、日本代表の評価は再び過去に使われた形容詞のリサイクルとなった。

 技術的には優れている、ボールタッチもうまい、優秀な選手が揃っている、アフリカ代表のフィジカルにテクニックで応え、試合を支配している…。

 そしてそういった賞賛の後に「だが、勝てない」と続く。4年前と変わらない。

 日本は支配したが、負けた。一言で言えば、「日本代表にはドログバがいない」。これが第一戦を終えた日本代表に与えられたジャッジだった。

山本美智子

最終更新:6月16日(月)16時30分

フットボールチャンネル

 

PR

注目の情報


他のランキングを見る