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【スポーツ】

<首都スポ>空の王者だ 慶応高グライダー部が全国制覇

2014年6月17日 紙面から

コックピットの野田知寛主将と(前列左から)芝悠介、今福諒平、福井一玄、(後列左から)手塚佑輔、山路優輝=埼玉県熊谷市の妻沼滑空場で(福永忠敬撮影)

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 空を飛ぶ、高校の部活がある。慶応高航空部。日本に3つしかない高校のグライダー部だ。付属校というメリットを活用し、慶大航空部とともに活動。部員数の少なさなどに悩む中、昨年の全日本大会を制覇した。部員たちは飛べる喜びを味わいながら、白い翼とともに空を舞っている。(藤本敏和)

 埼玉県の北端、熊谷市の利根川河川敷。青々とした草が広がる妻沼滑空場で、白い翼が青空へと飛び立っていった。前席で操縦かんを握るのは、一介の高校生。慶応高航空部の部員だ。

 「上空で少し操縦かんを任せてもらえました。自分で飛んでいる感覚があって(教官の操縦に同乗するだけの)体験搭乗とはまったく違います。すごく楽しかったです」

 この日が初めての搭乗だった新入部員、今福諒平(1年)は目を輝かせた。スカイスポーツ経験者なら誰もが口をそろえる「空を飛ぶ喜び」を、高校生が経験しているのだ。

 グライダーは飛行機と同じように、操縦かんで補助翼と昇降舵(だ)、足元のペダルで方向舵を動かし操縦する。れっきとしたスポーツで、日本では大学生による学生選手権が1938(昭和13)年にスタートした。特に戦前は世界的にも非常に盛んで、五輪競技採用も検討された。

 高校選手権も、ほかならぬ慶応高航空部が1962(昭和37)年に創部されたのを機に翌年からスタート。一時は10校近くが覇を競ったという。今、高校の部活では全国でも慶応高のほかに航空学園の石川校、山梨校の計3校のみ。少し寂しい状態だ。

 ネックのひとつはやはり経費。グライダーは1機1000万円〜1200万円。慶応高は慶大と共同で5機所有しているため計6000万円近い。加えて無線が1機につき約50万円。グライダーにつないだロープを引っ張り離陸させるためのウインチが約2000万円−。忘れてはいけないのが保険で、機体と搭乗者をともにカバーするため年間およそ250万円かかる。

 慶応高はOBらからの寄付に加えて慶大と合同という形で活動しているからこそ、何とかまかなえている状態だ。それでも、部員の負担は高校生ということで抑えられている。部員1人あたりの自己負担額は、合宿費などを含め年間20万円程度だ。

 長年、悩まされてきたのは部員の少なさだ。昨年は3年生2人、2年生1人の計3人しか部員がいなかった。危険だと家族から反対されたり、滑空場の遠さに二の足を踏む入部希望者が多いという。だが、今春は4人も新入部員が入ってきた。2年生の中途入部者も加わり、部員数は一気に6人まで増えた。

 うち2人は、OBにも数多いパイロット志望だ。目標達成のため、体を鍛えようと、昨年度はヨット部所属だった手塚佑輔(2年)は「早く空を飛びたい」という気持ちを捨てきれず入部。山路優輝(1年)は本格的な飛行機オタクで、中学時代からさまざまな路線に乗ってきたという。もちろん熱意は人一倍だ。

 昨年は部員3人ながら3年生2人が個人戦1位、2位を奪って団体優勝した。部員が倍増したこれからの前途は洋々だ。空に魅せられた生徒たちが集う慶応高航空部は、高校界の“空の王者”になりそうだ。

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 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中

 

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