焦点:イラク内部崩壊で変わる勢力図、中東の国境再編も
[ベイルート 13日 ロイター] - アルカイダ系武装集団がイラク北部の都市モスルとティクリートを掌握したことは、イラク国内の宗派間の勢力図を塗り替えるだけではなく、中東地域の国境を再編する可能性がある。
スンニ派の過激派武装組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」は10日、イラク第2の都市モスルを掌握し、首都バグダッドに向けて攻勢を強めている。
こうした中、他の中東諸国や米国などの大国は、ISILが中東の中心部に危険な拠点を築き、「地中海のアフガニスタン」と化す危険性を認識している。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の中東専門家、ファワズ・ジョージ教授は「私たちが目にしているのは、権力の分裂であり、マリキ首相はこれまでのように中央集権化はできないだろう」と指摘。「国境の書き換えをまさに目の当たりにしている」と語った。
対立が激化する中、シーア派の最高権威シスタニ師は13日、支持者に対し、武器を取って反撃するよう異例の呼びかけを行った。これより先、マリキ首相は連邦議会に非常事態宣言を発令するよう要請したが失敗。スンニ派とクルド人の議員らは議会を欠席した。
<元イラク軍兵士を引き抜き>
一方、クルド人自治区の民兵組織ペシュメルガが、境界を接する北部の石油都市キルクークを制圧。混乱に乗じて勢力拡大を狙っている。
シリアの内戦で成長し、同国東部とイラク西部にまたがる広大な地域を手中に収めるISILが、いとも簡単に相次いでイラクの都市を掌握したことは、衝撃的な出来事には慣れていそうなこの地域を動揺させている。 続く...