集団的自衛権:公明、新3要件の修正要求へ
毎日新聞 2014年06月17日 02時30分
◇閣議決定、国会閉会以降の見通し
公明党は16日、自民党が示した自衛権発動の「新3要件」案について、集団的自衛権の行使容認の幅を狭める修正を要求する方針を固めた。新3要件案の「国民の権利が根底から覆されるおそれ」が採用されれば、行使容認の範囲が際限なく広がる可能性があるため。新3要件を巡る政府・与党の調整は難航しており、憲法9条解釈を変更する閣議決定は、今国会が閉会する22日以降に先送りされる見通しだ。
政府は16日、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態▽国際協力▽集団的自衛権−−に関する自衛隊の活動拡大のための閣議決定の原案を、与党に非公式に提示した。原案は、政府・与党が行使容認の根拠になると考えている1972年の政府見解を紹介したうえで新3要件案を引用している。
ただ、公明党内には異論が相次いでいる。「おそれ」を「切迫した事態」などに変更するよう求める声も上がり、17日に開かれる与党協議会で閣議決定原案について合意するのは難しい情勢だ。このため今国会中は「集団的自衛権の行使容認のための閣議決定を行う」との方向性だけで自民、公明両党が合意し、実際の閣議決定は国会閉会後に行う案が浮上している。
新3要件案を巡る公明党と政府・自民党の溝は、集団的自衛権をどの程度「限定容認」するかにある。
現行の自衛隊法は「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫」していれば、自衛隊が防衛出動できると規定している。公明党は集団的自衛権を行使できる要件を「国民の権利が根底から覆される事態」としており、これは自衛隊法の「危険が切迫」した事態とほぼ同じ状況と位置づけている。このため同党は、この考え方で行使を容認しても「自衛隊出動の要件など、実態は今と何も変わらない。首相には集団的自衛権という『名』を取ってもらう」(幹部)としている。
一方、自民党の高村正彦副総裁が示した新3要件の私案は「国民の権利が覆されるおそれ」があれば集団的自衛権を行使できる内容だ。実際に差し迫った事態が起きていなくても時の政府・与党が「おそれ」があると認めれば自衛隊を出動させることが可能だ。政府が集団的自衛権の行使が必要だとして示した8事例全てが「基本的にできる」(石破茂幹事長)ようになるほか、将来的に行使が拡大できるという懸念から公明党は難色を示している。【青木純、高本耕太】