●Tyler Cowen, “Testosterone economics”（Marginal Revolution, July 5, 2007）
最後通牒ゲーム（ultimatum game）のことはご存知だろうか？
このゲームでは2人のプレイヤーの間で一定額のお金が分け合われることになる。一方のプレイヤー（プレイヤーA）がお互いの取り分を提案し、もう一方のプレイヤー（プレイヤーB）はその提案を受け入れるかどうかを判断する。プレイヤーBがプレイヤーAの提案を受け入れればその提案通りに両者の間でお金が分け合われることになるが、プレイヤーBが提案を撥ねつける場合には両者ともに1銭たりともお金を手にすることはできない。標準的な経済学が予測するところ1とは異なり、プレイヤーAがケチくさい提案を行った場合（プレイヤーBの取り分として全体の4分の1を下回る金額を提示した場合）、その提案はプレイヤーBに撥ねつけられる可能性が高いことがこれまでに実施された実験を通じて何度も確かめられている。
つい最近実施された最後通牒ゲームの実験結果を以下に紹介しておこう。
低額の提案を撥ねつけたプレイヤーはそれと同額の提案を受け入れたプレイヤーと比べるとテストステロンの値が平均で50％以上高かった。テストステロンの値が最も高かった男性7名のうち5名は低額の提案（「あなたの取り分は（総額40ドルのうち）5ドルということでいかがでしょう？」との提案）を撥ねつけたが、それ以外の男性19名のうちで同様の提案（「あなたの取り分は5ドルということでいかがでしょう？」との提案）を撥ねつけたのはわずか1名だけだったのである。
言い換えると、ヒトが不合理な振る舞いをするのは人間が不完全な存在だから2というだけではないということだ。我々人間は（テストステロンの作用を通じて）執念深く振る舞うようプログラムされているのだ。テストステロンの値の高さが旺盛な競争心や支配欲の強さとどのように関係しているかという話題についてはこちらを参照されたい。この論文（pdf）では女性を対象としてテストステロンの値と服装の選択との関係が調査されているが、この調査結果をもとにして薄着の女性は執念深い可能性が高いとの少々大胆な推測を導き出してもよいものだろうか？ 同じプロジェクトで一緒に仕事をするなら（テストステロンの値が低い）華奢な男性やフラットシューズを好んで履く女性をメンバーに迎えるのが望ましいと言えるだろうか？ 長期的に協調関係を保つ方が束の間のホットな関係に浸るよりも価値があると判断した場合、（恋人や結婚相手といった）パートナーを探す上ではホットではない人物（テストステロンの値が低い人物）に焦点を絞るべきだと言えるだろうか？
この話題に気付くきっかけをくれたDaniel Akstに感謝する。
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●Tyler Cowen, “How to get a macho guy to give in”（Marginal Revolution, April 21, 2006）
ベルギーにあるルーヴェン・カトリック大学に籍を置く研究者チームは男性を対象に最後通牒ゲームの実験を行った。最後通牒ゲームでは2人のプレイヤーの間で一定額のお金が分け合われることになるが、テストステロンの値が高い男性は非常に厳しい態度で交渉に臨む傾向にあった3。しかし、それは彼らがビキニ姿の女性モデルが写った写真を目にするまでの話だ。写真に写るビキニ姿の女性を見た後ではテストステロンの値が高い男性らはケチくさい提案であってもそれを受け入れる可能性が高まったのである。
一方で、テストステロンの値が低い男性は写真に写るセクシーな女性の姿を目にした後でも（テストステロンの値が高い男性に比べると）それほど交渉態度を変化させることはなかったということだ。研究内容の詳細はこちらを参照のこと。
全文はこちら。リンク先の写真は職場のパソコンで閲覧しても（シャレでも何でもなく）ギリギリセーフだろう。
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