すず黄さんのエントリー
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すず黄
我々は正しい。我々が正しいことを訴えていれば人はついてくる。その我々に大衆の支持を得るために迎合せよ譲歩せよと言うのは、我々の正しさを堕落させる甘言にすぎない。正しさは自明であり、自明である正しさは不動である。正しさが人に寄るのではない。人が正しさに寄るのである。人は誤るが、正しさは誤らないがゆえに正しさであるのだから。
などと昔よくアジってた先輩と、ふとしたことで飲みに行った。
社外に出て専従になって、戻ろうにも前の職場はなくなり、いまさらやり方のすっかり変わった仕事を憶えなおす気力もないし、そもそも顔を知る人も少なくなって、50代を越してわかる迎合や譲歩と忌避してきたバランスの大切さだよなあと笑っておられた。
僕にそんなこと言うとうっかりハイクに書いちゃいますよと脅かしたが、別にこんなこと、と笑うだけだった。
とりあえず結論を出すために経営といろんなものを握っては、僕はよくこの先輩に怒られた。お前はもっと孤立しろ、孤独になっても人が頼らずにはいられないものが俺たちのやってることの正しさの証なんだから、と、よく諭された。
実際、先輩は内外から嫌われてはいたけれど、軽蔑はされていなかったように思う。僕と違って。
当時、僕はよく僕についての軽蔑のことばを聞いた。日和見だ、蝙蝠よ、臆病のくせにうるさく音出す太鼓持ち、などなどなど。
昔馴染みと集まると、必ずそれを言われる。結局お前はうまくやった、と。正しさに浮かされて、なにかと戦う熱病にかからなかったお前が正解だ、と。僕はそれを褒めことばとは受け止めない。あいかわらす僕の過去は、彼我でいい顔をしてきた蝙蝠が見る復讐者におびえる悪夢になるだけだ。
俺は正しかったが、間違っていたな。と、先輩は言った。今の社会を見ろよ。なにもかも、間違ってるだろう。なあ。世の中が間違ってるんだ、俺が正しいなら、そりゃあ俺が正しさを貫いたのは間違いってことになるだろ。そう一息に言って、ひとつおくびをしてから、先輩はトイレに行った。
そのままトイレからは帰ってこずに、1通のメールが来て、僕らは数年ぶりの逢瀬を別った。
勘定を頼む。多謝。
などと昔よくアジってた先輩と、ふとしたことで飲みに行った。
社外に出て専従になって、戻ろうにも前の職場はなくなり、いまさらやり方のすっかり変わった仕事を憶えなおす気力もないし、そもそも顔を知る人も少なくなって、50代を越してわかる迎合や譲歩と忌避してきたバランスの大切さだよなあと笑っておられた。
僕にそんなこと言うとうっかりハイクに書いちゃいますよと脅かしたが、別にこんなこと、と笑うだけだった。
とりあえず結論を出すために経営といろんなものを握っては、僕はよくこの先輩に怒られた。お前はもっと孤立しろ、孤独になっても人が頼らずにはいられないものが俺たちのやってることの正しさの証なんだから、と、よく諭された。
実際、先輩は内外から嫌われてはいたけれど、軽蔑はされていなかったように思う。僕と違って。
当時、僕はよく僕についての軽蔑のことばを聞いた。日和見だ、蝙蝠よ、臆病のくせにうるさく音出す太鼓持ち、などなどなど。
昔馴染みと集まると、必ずそれを言われる。結局お前はうまくやった、と。正しさに浮かされて、なにかと戦う熱病にかからなかったお前が正解だ、と。僕はそれを褒めことばとは受け止めない。あいかわらす僕の過去は、彼我でいい顔をしてきた蝙蝠が見る復讐者におびえる悪夢になるだけだ。
俺は正しかったが、間違っていたな。と、先輩は言った。今の社会を見ろよ。なにもかも、間違ってるだろう。なあ。世の中が間違ってるんだ、俺が正しいなら、そりゃあ俺が正しさを貫いたのは間違いってことになるだろ。そう一息に言って、ひとつおくびをしてから、先輩はトイレに行った。
そのままトイレからは帰ってこずに、1通のメールが来て、僕らは数年ぶりの逢瀬を別った。
勘定を頼む。多謝。
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