ザックジャパンの長所が
機能しないケースは決まっている
コートジボワール戦は前半の途中から、吐き気が止まらなくなった。胃が痛かった。
日本はやりたいことが何もかもうまくいかないのに、なぜかスコアだけは1-0。もう、このまま60分を守って過ごすしかないのかと、本当にその道しか残されていないのかと、やるせない気持ちになった。
正直に言えば、ザックの無策ぶりにはがっかりだ。
ザックジャパンの長所が機能しないケースは決まっている。コンフェデレーションズカップのブラジル戦、先日のザンビア戦、古い記憶をたどればウズベキスタン戦なども当てはまる。相手が両サイドバックを高い位置へ上げる戦術を採ったときだ。
これをやられると、その両サイドバックをケアするために香川真司と岡崎慎司のポジションがずるずると下がる。そして前線の大迫勇也と本田圭佑は、相手のセンターバックとボランチの計4人を2人だけで追う形になり、犬のように走らされてプレッシングがハマらなくなる。
本来なら、ザックジャパンは2トップがプレッシャーをかけて、サイドバックへパスを誘導したところで、香川と岡崎が“前へ”思いっ切り寄せる。しかし、相手の両サイドバックが上がってきたことで、彼らは“後ろへ”意識を引っ張られる。プレッシングの基本パターンがハマらず、完全にボールの奪いどころを失ってしまった。
このような弱点はザンビア戦でも改めて露呈したのだから、当然、コートジボワールがそれを真似しても不思議はない。それは僕にも想像できた。そして、向こうが非公開練習で秘策を用意したのなら、ザックにも必ず、僕らが驚くような隠し球を用意しているはず!
それはシステムか、選手配置か、それともプレッシングの手順か。事前会見では「3-4-3を完成させる時間がなかった」と言っていたが、それは単なる口三味線に決まっている。試合が始まれば、いつの間にか3-4-3を使い、「100パーセントではないが、必要なので使った」などと言ってのけるはず……と、試合中もずっと信じていた。
でも、何もなかった…。ザックには、『コートジ戦術』が本当に想定外だったようだ…。
だから僕は、記者会見で質問した。
「4-4-2で守備をする日本は、相手チームが両サイドバックを高く上げてきたとき、一方的に押し込まれる傾向があります。それはザンビア戦などにも見られましたが、その経験はどのように生きたのですか?」
ザックの返答はこうだ。「相手が良かったんです。相手がうまく我々よりもパスを回していきました。サイドで空間をうまく使われました。なので、我々の弱みが使われました」。
オーマイゴッド…。あれだけ日本の弱点を強化試合で露呈しておきながら、そのまま放置したとは…。かつての教え子、ラムーシ監督を甘く見ていたのだろうか。アフリカ予選でも使ったことがない戦術を、わざわざ使ってくることはないと高を括っていたのだろうか。日本の良さは、出したくても、出させてもらえなかった。
たしかにザックが言うとおり、コートジボワールのパス回しが良かったのは事実だろう。正直、左センターバックのバンバは、“もっと”ミスするだろうと僕は思っていたが、想定したほど多くもなかった。
ただ、その相手のパス回しの上手さを助長させたのは、日本の陣形がいつもよりも縦に間延びしていたことだ。センターバックの吉田麻也と森重真人は、グッと最終ラインを上げて中盤をコンパクトに保とうと試みていたが、サイドの長友佑都と内田篤人がついてこない。このような場面は頻繁に見られた。理由は必然、相手サイドアタッカーへの警戒だ。そこに神経が集中しているからだ。
最終ラインが低い位置のままだと、ダブルボランチの長谷部誠と山口螢がカバーしなければならないスペースは広くなる。その結果、ボランチから大迫と本田への距離が長くなり、大迫が「自分たちが追いかけても、後ろがついてこなかった」と振り返るように、プレスの連動をしづらい状況が生まれてしまう。
つまり、大迫と本田の“孤立プレス”は、実はディフェンスラインのコントロールから問題が始まっている。本田と大迫は下がらずにボールを追っていたので、僕はディフェンスラインがそれに応えて、勇気を持ってラインを上げるべきだったと思う。この辺りのリスクマネージメントが11人の中でちぐはぐだったのは否めない。
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