【モスクワ=田中孝幸】ウクライナ国営ガス会社ナフトガスによると、ロシア国営ガスプロムは16日、ウクライナへの天然ガスの供給を停止した。ウクライナがロシアから輸入したガスの代金を滞納し、16日の最終的な支払期限を守らなかったためとしている。ガスプロムはウクライナとの取引について、事前に払った分だけ供給する「前払い制」に移行した。
ガスプロムのミレル社長は16日、ウクライナが滞納分の支払いに応じれば、価格面の交渉に再び臨む考えを示した。ウクライナが自国の需要を満たす目的で他国向けのガスを抜き取る可能性を指摘したうえで「損失を補うためにウクライナを経由しないパイプラインでの供給を増やす」と語り、欧州域内への供給に影響が出ないように配慮する姿勢を鮮明にした。
ウクライナはロシアに価格の割引を要求し、折り合えないことを理由に6月分の支払いを拒否してきた。
ガスプロムとナフトガスは16日未明まで、欧州連合(EU)を交えてガスの供給価格を巡る交渉を続けたが、決裂した。ロシア側が1千立方メートル当たりで現行価格よりも100ドル安い約385ドルとする案を示したが、ウクライナ側は同268ドルへの引き下げを要求。議論は平行線をたどった。
ガスプロムは16日、ウクライナに計45億ドルの滞納金の支払いを求める訴えをストックホルムの国際仲裁裁判所に起こした。ナフトガスも同日、ロシアが設定したガス価格が不当に高いとして、ガスプロムを同裁判所に提訴した。
EUはロシア産ガスの月間消費量の約2カ月分に当たる計120億立方メートルのガスを備蓄し、ウクライナ経由の供給が細ってもすぐに深刻な不足に陥る懸念はないという。一方で欧州の需要の約3分の1を占めるロシア産ガスの約半分がウクライナを経由している。
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