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Appleに学ぶ、CMOとCIOの理想的な関係(前)
2014/06/17
1990年代末、Steve Jobs氏が華々しく復帰して間もない頃の米Appleで、マーケティング担当者のLiz Allen氏は、同社に大きな実りをもたらすWebサイトの開発チームに携わっていた。シンプルかつ洗練されたデザインのオンラインストアの開発だ。後にApple愛好者が「購入」ボタンを押しまくることになるサイトである。
マーケティング担当者のチームは、先進的なサイトデザインを完成させ、たった1つの指示を付けてプログラマーに送った。「そっくりそのまま動くようにせよ」との指示だ。プログラマーが機能を差し戻したり、ボタンの位置変更を求めたり、ナビゲーションのレイアウトを変えたりすることは許されなかった。ましてや、プロジェクトの期間延長などもってのほかだ。Jobs氏の雷が落ちることになる。Appleの世界では、CMO(最高マーケティング責任者)はCIO(最高情報責任者)より上だ。
「Appleでの経験はさまざまな面で時代に先んじていた」とAllen氏は当時を振り返る。同氏は4年後にAppleを退職した後、数々の企業でマーケティング責任者を歴任した。ゲーム開発大手の米LucasArts、衣料大手の米Gap、雑貨・食品類の小売チェーンの米Cost Plus World Market、数社の新興企業などだ。現在は、インテリア小売チェーンの米At HomeのCMOを務めている。
Allen氏の立場になってみると、CMOとCIOの微妙な関係が年月を経て変化する様子が分かる。ある意味、同氏は1周して振り出しに戻ったとも言える。CMOが崇められCIOが軽んじられていたAppleを退職した後の同氏は、IT予算や主導権を巡るCMOとCIOの過酷な勢力争いをたびたび経験した。そして現在、CMOとCIOの勢力争いは元の状態となり、CMOが優位の立場にある。