成長戦略素案:労働・医療改革踏み込む

毎日新聞 2014年06月16日 21時14分(最終更新 06月16日 23時44分)

成長戦略で暮らしや経済どうなる
成長戦略で暮らしや経済どうなる

 政府は16日の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)で、成長戦略「日本再興戦略」改定版の素案をまとめ、従来「岩盤規制」とされた分野に踏み込む姿勢を強調した。労働時間の規制改革や、保険診療と保険の利かない診療を組み合わせる「混合診療」の拡充、農業協同組合(農協=JA)の制度見直しなど規制緩和策を打ち出した。また、人口減少時代を踏まえた労働力確保策として、女性の活躍推進や外国人材の受け入れ拡大などを盛り込んだ。

 安倍首相は同会議で「日本は今、劇的な大転換期にある。挑戦することすらタブー視されていた『壁』、乗り越えられなかった『壁』を突き抜けるような政策を盛り込めた」と成長戦略を自賛。そのうえで「持続的な成長軌道につなげるため、やり抜かなければならない」と強調した。政府は素案を与党と調整し、月内に閣議決定する方針。

 素案では「経済の好循環を引き続き回転させるためには、日本経済全体の生産性を向上させ『稼ぐ力=収益力』を強化していくことが不可欠」と指摘。前年の戦略を改定し、「稼ぐ力」の強化▽残された課題への対応▽成長の果実の全国波及−−の三つの観点で政策を具体化した。

 「稼ぐ力」では、企業統治の強化のほか、約130兆円もの公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の株式運用拡大などに備え、「法改正の必要性も含めた検討を行う」と明記した。

 昨年から積み残しとなっていた雇用問題は、今後3年間を集中改革期間に設定。働いた時間に関係なく成果に応じて賃金を払う新制度を「少なくとも年収1000万円以上」「職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する」従業員を対象に創設するとした。

 女性の就労支援では、小学生を放課後に預かる「放課後児童クラブ」(学童保育)の定員を2019年度末までに約30万人分拡大。自治体や企業に女性登用の目標や計画の公表を義務づける新法を制定する。会社員の夫と専業主婦の妻の世帯を念頭に夫の税負担を軽減する「配偶者控除」や社会保険料負担の在り方については、経済財政諮問会議で年末までに検討する。

 また、途上国などの労働者を実習生として受け入れる「外国人技能実習制度」は、現行最大3年の実習期間を5年に延長。対象職種や受け入れ人数も一部拡大する。

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