2014年06月16日
日本対コートジボワール ~ぼくたちのサッカーがきえたわけ~
日本はスタメンに長谷部が復活。不動のキャプテンをいつもの右ではなく左に配置していることは驚きであった。また、吉田の相方に森重を起用。その関係によって、吉田も左から右に移動している。その他のスタメンは、予想通りと言っていいだろう。
コートジボワールのスタメンは、ドログバがベンチ。ボニーが代役。その他ではコロ・トゥーレがベンチになっているが、それを驚きと表現すると、あまりに大げさになってしまう。
■消えた自分たちのサッカー
南アフリカでの反動から、日本はずっとボールを保持するサッカーを目指してきた。この方向性は日本サッカー協会からもお墨付きの方向性だ。わかりやすく言うと、ボールを保持して主導権を握る。そのために、コンフェデレーションズカップでも日本は正面衝突を画策した。アジア予選のあとの最悪のコンディションでどれだけ自分たちのサッカーが通用するかを試すためだ。つまり、日本はある大会の結果は度外視してでも、この方向性を多少のブレはあれど、突き進めてきた。多少のブレは言うまでもなく、3-4-3とゾーン・ディフェンスだ。
チームの根底とも言えるプレーモデルは決定した。あとは選手の個性の差が、長所と短所になってピッチに現れる。4年間の過程で日本が手に入れた長所は左サイドのコンビネーション、中央の本田を中心としたポストプレー、左サイドからのペナルティエリア侵入、そして最終手段であるボランチのエリア侵入と言えるだろう。
これらの長所を発揮するには、ボールを保持する必要がある。ボールを保持していなければ、左サイドからのコンビネーションも中央の本田のポストプレー経由の攻撃もすることはできない。ボールを保持するために必要なことはなにか。相手のプレッシングを効果的に回避することと、相手からボールを奪い取るプレッシングだ。この両者を装備していなければ、ボールを保持することは夢のまた夢と言える。
話はコートジボワール戦に戻る。シャビ・アロンソがリバプールにいた時代から行われている手法で日本のプレッシングに対抗した。
コンフェデレーションズカップのブラジル戦、ロンドンオリンピックのメキシコ戦で相手が行ってきた方法論とまったく一緒である。それらの方法論と激突したときに日本は無策で敗れ去った印象がある。この試合では、長谷部&香川、そして山口たちが前に飛び出すことで、システムのズレを解消しようと取り組んでいた。しかし、それらの取り組みが機能しない場面も見られた。もちろん、相手のSBの高いポジショニングに香川と岡崎が引っ張られたという現象も起きていた。序盤にコートジボワールのファーサイドへのクロスをクリアーした場面で登場したのが岡崎という場面には驚かされた。
ライカールト時代のバルセロナはグアルディオラ時代との差こそあれど、しっかりとポゼッションをするチームであった。特にCBに足元のある選手を起用することが始まった時代のお話。バルセロナも相手の高い位置からのプレッシングに苦しんだ。相手はバルセロナにボールを保持させたくなかったし、相手の陣地でボールを奪えば一気にチャンスに繋がる。そんな事情もあって、バルセロナの相手は高い位置からのプレッシングに熱心なチームが多かった。そんな相手に対して、バルセロナが行った対策は自陣の深い場所にCBのポジショニングを置くことであった。
いくら高い位置からのプレッシングといっても、限界がある。特に相手のゴールキーパーまでその都度プレッシングをかけるのは困難な作業だ。つまり、バルセロナは誘った。自陣の深い位置までプレッシングをかけられるかどうか。プレッシングは全体の距離をコンパクトに保つ必要があり、バルセロナの陣地の深い場所まで侵入していくことになれば、必然的にDFラインは非常に高いポジショニングが要求され、自陣のキーパーとDFラインとの間に広大なスペースが出来てしまう。バルセロナは相手のプレッシング開始ラインとの駆け引きによって、高い位置からのプレッシングの連動性に挑戦を投げかけた。
ボールを保持する理由は試合の主導権を握るため。だとすれば、主導権とは具体的にどのようなプレーを示すのか。ボールを保持していれば、時間とスペースを操ることができる。自分たちで攻撃のスイッチをいつ入れるかを決定することができるし、ボールを動かせば、たいていの相手はボールに連動して動いてくれる。もちろん、それらはゴールを奪うために行われる。しかし、近年はボール保持を守備に使うという考え方が発展してきた。
序盤のコートジボワールは、GKを使ってまったりとボールを動かしている場面が目立った。日本がどの位置まで深追いしてくるのか。前線のプレッシング隊は何枚なのか。後方の選手はどれだけ連動してくるのかをチェックしたかったのだろう。GKを使うという意味では、ライカールト時代のバルセロナの相手のプレッシング開始ラインとの駆け引きに似ている。低い位置からのビルドアップで狙うのは前線の本田と大迫ではなく、連動すべき日本のMFの選手たちが連動するかどうかだ。自陣の深い位置にビルドアップ隊を揃えることで、リスクは増すが、相手が来ればロングボールを蹴っ飛ばして回避すれば、そこまでのリスクがあるプレーとは言えない。
大迫と本田は高い位置から深追いを辞さずのプレーを見せる。実際にキーパーまでプレッシングをかける場面が見られた。しかし、後方の選手たちがその深追いに対して、連動していたかは曖昧であった。連動している場面もあれば、連動していない場面のほうが多かった。どちらかと言えば、相手の3バック+SBの位置に移動するティオテの動きに対して、本田と大迫が振り回される場面が多かった。
サイドに3人を集めて、3人目が自由になる方法である。なお、ドルトムントとレアル・マドリーは4-3-3に変更することで、この戦術を打ち破っている。相手が3バックをやめたら、4-4-2に戻す。他にも方法はあるが、割愛する。
大切なことは、コートジボワールはキーパーを使って、ビルドアップの出発点の深さを考えていたことだ。ときにコートジボワールはボールを前進させるためではなく、休憩するため、または前線の大迫&本田を疲弊させるためにボールを保持していた。平たく言えば、コートジボワールから効率的にボールを奪えなかったので、日本はボールを保持する機会を失うこととなった。ボールを保持することが大前提の自分たちのサッカーが消えた瞬間である。
■日本はなぜボールを保持できなかったのか
サッカーは同じ局面が延々と続くことは基本的にありえない。よって、日本がボールを回復する場面ももちろんある。つまり、自分たちのサッカーを表現する機会がなかったわけではない。コートジボワールも攻撃を仕掛けてくる。攻撃を仕掛けるということは成功か失敗かの結果が待っている。成功はもちろんゴールだ。サッカーはロースコアーのスポーツなので、簡単に成功することはない。失敗はボールが相手に渡ることを意味する。
ボールを取り返した日本を待っていたのは危険な罠であった。コートジボワールは日本が延々とボールを保持している展開は期待していない。確かにカウンターのチャンスを得られる機会は多くなるかもしれないが、相手にボールを保持されて、こちらの体力が無駄に削られる、または日本がボールを保持したときに強いことはスカウティングでわかっているだろう。
つまり、日本には攻撃を仕掛けてもらいたい。攻撃のスイッチを入れてもらいたい。相手に攻撃のスイッチを入れてもらう方法は2つある。相手の選択肢を削るようにプレッシングをかけるか。ロンドンオリンピックのときのメキシコがこの方法を採用した。もう一つの方法は博打である。この方法をコートジボワールは採用した。その方法は前線の選手が守備を熱心に行わず、MF付近のスペースをあけることである。相手に攻撃をさせたい状況、要するに罠をはり、攻撃のスイッチを入れさせる方法だ。
前半の序盤に香川が妙にフリーでボールを受けることができた、または吉田、森重、長谷部が自由に振る舞うことができたのは、コートジボワールの前線隊がろくに守備をしていなかったからだ。時には4-2-4のように見えるコートジボワールを目にした日本の選択肢は2つ。守備をしないコートジボワールの罠にはまらずにボールを運びながら相手を押しこむことができるか、それとも、空いているスペースを利用して攻撃のスイッチを入れるか。
日本の選んだ道は攻撃のスイッチを入れるであった。もしかしたら、カウンター要員で残っているカルーやジェルビーニョが怖かったのかもしれない。彼らのそばにボールがない状況を作るには、さっさと2列目にボールを預けるほうが得策である。自信に満ち溢れている2列目の面々は果敢な攻撃を見せるが、その攻撃の結末はゴールに届かない場面が多く、逆にカウンターをくらい形が多くなっていった。なお、2列目からボールを最終ラインに戻そうとすると、カウンター要員であるジェルビーニョたちがここぞとばかりに動いただろう。つまり、ボールを前に入れた時点で、日本は攻撃のスイッチをきることができなかった。もしかしたら、本田のスーパーゴールによって、攻め切れるという考えに至ったのかもしれない。
リードしている状況ならば、無理に攻撃のスイッチを入れる必要はない。守備の場面では本田が中盤に落ちて守備に参加する場面も見られるようになっていった。前線で機能しない守備を繰り返すなら、引いたほうが好手といえるだろう。ただし、余計にボールを保持できなくなる展開になってしまうが。ザッケローニの最初の手は長谷部→遠藤であった。恐らく、遠藤に攻撃のスイッチを入れるべきか入れないべきかの判断をして欲しかったに違いない。しかし、川島をビルドアップに組み込めない日本からすれば、最終ライン付近にボニー、ジェルビーニョ、カルーが残っている状況はやはり恐怖だったのだろう。前半よりも攻撃の精度が若干上がった程度の影響力の采配であった。
遠藤投入と共に、コートジボワールは動き始め、ドログバが登場する。交代したのは、中盤のセレディニ。ヤヤ・トゥレを中盤に落とすという采配になるが、後方のビルドアップ隊を削っても大丈夫という判断だろう。そして、日本は左サイドからクロスを放り込まれ、あっさりと逆転を許す。いるべき場所に選手がいない長所よりも短所が守備面で露呈する形となった。
その後の日本は大久保を投入するも、ポジションが定まらず。明らかな混乱状態を経て、本田がトップ、香川がトップ下の形になる。最終的には柿谷が香川にかわって登場するが、そのころにはコートジボワールも守備職人を中盤に登場させていた。選手紹介を見る限りは攻撃のキャラクターのようだけれども。混乱状態ならばと吉田を前線に上げるパワープレーで偶然性にかけるが、勝利の女神は微笑んでくれずに2-1で試合は終了した。ドログバの登場で会場の雰囲気が一変した采配は、2002年の日本対ロシアの中山雅史投入を思い出させる采配であった。
■独り言
まだだ、まだ終わらんよ。
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- posted by らいかーると
- 23:35
- ブラジルワールドカップ2014
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