The Economist

ウクライナの汚職の呪いダチョウ動物園からクラシックカーのコレクションまで

2014.06.17(火)  The Economist

(英エコノミスト誌 2014年6月14日号)

ウクライナにおける汚職撲滅の取り組みは、極めて困難な戦いだ。

豪華すぎるヤヌコビッチ前大統領の私邸に見学者殺到豪華すぎるヤヌコビッチ前大統領の私邸に見学者殺到

キエフ郊外のヤヌコビッチ前大統領の豪邸内部とクラシックカーのコレクション〔AFPBB News

政権の座を追われたビクトル・ヤヌコビッチ前ウクライナ大統領がかつて住んでいたメジヒーリアの大邸宅は、キエフ郊外のドニエプル川に面した美しい地区にある。

 ヤヌコビッチ前大統領は2月22日、夜の闇に紛れてこの邸宅から脱出した。それ以来、この場所は汚職を象徴する野外博物館と化している。週末には、親子連れが手入れの行き届いた庭園を散策し、前大統領のクラシックカーコレクションやダチョウ動物園の前で写真を撮る。

 前大統領の邸宅で発見された膨大な文献のアーカイブ化に取り組むウェブサイト「ヤヌコビッチリークス」の創設者の1人であるアンナ・バビネッツ氏は、敷地内のゲストハウスで腰を下ろし、「文献、数字、政治家のカネの使い道の解明が有する力」について語る。

 バビネッツ氏によれば、最初にメジヒーリアの大邸宅の門をくぐり、ヤヌコビッチ前大統領の時代を特徴付ける手の込んだ計略を発見した時の模様を「おとぎ話」のようだったと表現する。その後詳細が明らかになったことで、新たに透明性を求める声が上がっている。

汚職を促す権力構造

 ウクライナの汚職はヤヌコビッチ前大統領から始まったわけではない。そして、前大統領で終わるわけでもない。公的機関の力は弱く、志気は低く、公職に関する意識が未発達のウクライナでは、旧ソビエト連邦からの独立以降の時代を通じて、裁判官から交通警察官に至るまで、誰もが汚職に手を染めやすい状況にある。

 1990年代半ばに当時のレオニード・クチマ大統領の主導で実施された不透明な民営化によってオリガルヒ(新興財閥)と呼ばれる階級が生まれ、政界と実業界に過大な影響力を及ぼすようになった。

 2014年5月に行われた大統領選挙での2人の有力候補、ペトロ・ポロシェンコ氏とユリア・ティモシェンコ氏が、どちらも1990年代に不透明な取引を通じて巨額の富を築いたという事実は、この時期に形成された権力構造による支配の揺るぎなさを示している。

 ヤヌコビッチ前大統領は、中央集権化された汚職のヒエラルキーを築き上げた。前大統領は自分自身と、40歳になる息子のオレクサンドル・ヤヌコビッチ氏が率いる「ザ・ファミリー」と呼ばれる集団を、ウクライナのすべての経済セクターと組織から裏金を吸い上げる仕組みの頂点に据えた。

 「この国に帝国は1つであるべきで、残りの帝国はすべて臣下になるべきだ」というのが前大統領の姿勢だったと、「トランスペアレンシー・インターナショナル」のウクライナ支部代表、アンドレイ・マルソフ氏は指摘する。

 この仕組みにより、かつてないほど貪欲な不正利得の悪…
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