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雷「ちょ、司令官、どこ触って！？」

エクスタシー

2014年06月17日 03:06

第六駆逐隊と遊園地行く話。

雷ちゃんがモミモミされたりペロペロされたりするけど、とても健全なのでお子様と一緒に読めます○

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「しれいかーん！朝よー！そろそろおきなさーい！」

今日は日曜日。昨日夜遅くまでエロ動画を見ていたので俺提督は眠いというのに、今朝も早速雷が起こしにやってきた。
まだ眠いし、もう少し寝ていることとするぜ・・・・・・

「あれれ、まだ司令官寝てるのー？もうー、しょうがないなー」

そう言ってユサユサ布団を揺さぶってくる雷。
うぬぬぬこれは起きない訳にはいかないようだな。でも言われたとおり起きるのも何だか釈然としないし、ここは少し悪戯でもするべきか。
そんなことを寝ぼけた頭で考え、俺はそっと右手を雷の胸へ向かわせる。

「うーん、もう揉みしだけないよー」

「うわっ、ちょ、司令官！どこ触って！んっ！寝ぼけてるの！？」

モミモミモミモミ。
小さいながらも柔らかい。オウ・・・・・・ナイスちっぱい・・・・・・！神は楽園を創りたもうた・・・・・・！
モミモミモミモミ。

「うーん、むにゃむにゃ、ワレはリト」

「ちょっと・・・・・・っ、しれいかん！もうダメだってば！」

「むにゃむにゃふひひ、すまんすまん」

そっと手を離す。5分くらい揉んでいたか。流石にやりすぎたかもしれん、なんだか雷、目がトロンとしてるし。
しかし朝から最高のちっぱいだったな、あの手の内におさまる感覚が最高にハイってやつだ。ごちそうさまでした。

「もう司令官ったら、ちゃんと起きてたんじゃない」

胸を手で隠すようにして雷は言う。

「はははすまんな！ちょっとからかってやりたくなってな！ははは！」

あらら怒っているのかな。ちょっとくらい怒られるのもやむなしだ。雷に怒られるのは、我々の業界ではご褒美だから問題はないがな！。

「もうー！ちゃんと先に言ってくれなきゃ驚いちゃうじゃない。そ、そういうことしたくなるのはわかるけど、今度はちゃんと先に確認してよね！」

「！？」

え？えなに確認したらしていいの？え？
ええ、ワイセクハラしてんねんで？おいおいおい、流石雷ちゃんマジ天使としか言いようがねえぜ。

「それじゃ朝ごはん作ってあるから、はやく食べにいきましょ！今日のお味噌汁の具は司令官の大好きなアサリにしたんだから！」

天使だ・・・・・・神は我に天使を遣わせたもうた・・・・・・。

「わかったよマイエンジェル雷ちゃん。さっさと着替えてラブリー朝食をイーティングするぜ！」

そうと決まれば颯爽と着替えを終わらせるぜ！オラオラオラオラ！服よ！吹き飛べ！

「わっ司令官！着替えるのはいいけど何でパンツまで脱いでるのよ！わ、わわ私先行ってるから！」

むーん、勢いあまってズボンと一緒にパンツまで脱いでしまった。流石の雷でもゾウさんを見れば慌てるのか。ふむふむ勉強になるなぁ。
さて、ちゃっちゃと軍服に着替えよう。休日でも軍服、これ提督のツライとこね。

～～～

鎮守府廊下を足早に歩く。向かう先は第六駆逐隊の部屋だ。
俺提督は、食事は必ず第六駆逐隊と一緒に食べることにしている。
何故かって？そりゃあ食事をする時、人間とは満たされていなければならないからだ。
暁、響、雷、電。あいつらに囲まれた食卓、それが俺にとって最も満たされた食卓なのだ。
つまり、あいつら第六駆逐隊の部屋は魂の安らぎの場所、ヴァルハラ。いざゆかん、ヴァルハラへ。

「おーい！メシだメシ！朝メシをくれー！」

グリッと取っ手を回しドアを開ける。

「もう司令官！おそいわよ！レディーをいつまで待たせるつもり！？」

「ごめんって暁。でも待っててくれたんだな。ありがとうだぜ」

「ななな、れ、レディーは優しさをもって優雅たるものなのよ。だ、だから全然そういうんじゃないから！レディーとして当然のことよ！」

「ははは、レディーのわりには寝癖ついたままだぞー。どれ」

暁の頭を片手で押さえ、手ぐしで寝癖を整えてやる。

「はわっ！？ふ、ふにゃにゃにゃ・・・・・・」

咄嗟のことに反応できずふにゃふにゃしている暁をゆったりと梳いていると、残りの三人が話し掛けてくる。

「おはよう司令官。今日もいい天気だね」

「司令官さん！おはようなのです！」

「おはよう司令官。ちゃんと目は覚めた？」

「おう、おはよう、響、電、雷。今日は遅れてすまなかったな」

「いいさ。いつもより10分くらいしか遅れてないしね。それに、休日の朝は誰だってゆっくりしてしまうものだしね」

「なのですなのです。あれれ、でも雷ちゃんが司令官呼びに行ってから結構時間たってるのです。何をしていたのです？」

「何ってそりゃあ、胸をも」

「うわわわわわわ何口走ってるのよ！！？」

顔を真っ赤にして遮ってくる雷。なんだ、誰かに知られるのは恥ずかしいのか。ふむ、この反応も可愛いなぁ。

「ムネヲモ・・・・・・？何なのです？新しいスポーツとかヨガとかみたいなものなのです・・・・・・？」

「まぁスポーツだなアレは。結構体力使うしな。でもやってると気持ちいいぞ」

「しれいかん！？」

「朝からスポーツとは健康的だね。朝から体操をすると血行が良くなって、スッキリとした気分になるよね」

「血行な、うんうんわかるぞ。俺も朝で既に血行良くなりまくってるっというのに、更に血行が良くなってヤバかったからな」

「ししししれいかん！？」

「さって、それじゃ暁の寝癖も直ったことだし、食事にしようか。冷めたらもったいないしな」

もうちょっと雷の恥ずかしそうな姿を見ていたかったが、あんまりやるとかわいそうだしな。それに腹が減っていて元気がでない。さっさと腹にエネルギーを入れねば。
そっと暁の頭から手を離し、部屋の中心にあるちゃぶ台へ向かう。

「ふわわわわ・・・・・・ッハ！れ、レディーの髪をいきなり触るなんて！ぷんすか！」

後ろで我に返った暁がぷんすかしているが気にしない。俺提督のスルースキルは108式まであるぞぉ！ははは！

俺提督の食事の促しを聞いて、どこかホッとした表情の雷が胸を撫で下ろしながら言った。

「そ、そうね。それじゃ、ゴハンよそってくるから皆席についてて」

～～～

雷が白飯と味噌汁をそれぞれの椀によそっていく。今日の朝食は白飯、味噌汁、アジの開き、キュウリとナスのぬか漬けという日本帝国万歳なメニューだ。まったく日本人は最高だぜ！
俺提督的にはホットケーキとか甘めな朝食もアリアリなんだが、やはり日曜の眠たげな朝にこういう日本的な朝食がドンッと出された時の安心感は言葉に表せないものがある。流石雷、ツボを押さえてる絶妙な采配だぜ。

「雷ちゃん・・・・・・あのこれ・・・・・・」

「ん？どうしたの電？」

「電・・・・・・ナスは嫌いなのです！！！！」

「何言ってるのよー！好き嫌いはダメよ！それに漬物だから食べやすいわよ！」

まーた電はナスがどうとか言ってるのか。ナス、うまいと思うけどなぁ。
特に、夏の暑い昼に焼きナスに生姜醤油をかけて、そうめんと一緒に食べるのは最高だな。ただそればっかり食ってると夏バテ一直線だが。ソースは俺。
そんなこんなで適当に話をしながら朝食を食べていると、ふと響が皆に目配せをした後、口を開いた。

「そういえば司令官。今日の約束は憶えているかい？」

「え？約束？あ、あー、うんあれね！わかるわかる！提督わかるよ！」

「やっぱり忘れているんだね・・・・・・」

「ええ？！司令官忘れてるの！？レディーとの約束をすっぽかすとは、懲罰房行きは免れないわよ！」

「えええ、ちょ、ちょっとまって思い出すから・・・・・・」

約束？約束約束・・・・・・あ、なんかあったなそういえば、たしか一週間くらい前・・・・・・。
たしか合コンいくとか、なんかそんな約束したような・・・・・・いや多分それだ。よしそれで話を合わせよう。

「あ、ああ、合コンいくんだっけか、ははは、まったくお前たちもマセやがってよー」

「？何を言ってるのです司令官さん？」

「やっぱり忘れてるー！ぴゃー！」

あ、あれ違うみたいなんだが・・・・・・あ！これ先週足柄が酔っ払いながら話してた内容だった！！
たしか「合コン約束されて行ったのに、なんか私だけ自己紹介のあと誰も話し掛けてくれなくて、一人でサラダ皆にもってる係になってた」とか！ぐぬぬあまりにも悲惨な話だったから記憶に残りまくってたわ。足柄ゆるさんあのアラサーめ。
本気で悩んでいると、雷が助け舟を出してくれた。

「はぁー、まったく仕方ないわね。司令官、私たちと遊園地行くって約束してたじゃない」

遊園地・・・・・・？そういえば、確か撮りためていた深夜アニメ消化してる時にそんな話をしたような・・・・・・。

「お、おう、そうだったな！ははは、なんだちょいっとふざけただけだぜ！最初からわかってたぜ！ははは！」

「もう、雷ったら、いっつもそうやって司令官を甘やかすんだからー」

「し、仕方ないじゃない、忘れちゃうことも人間ならあるわよ。ね、司令官」

「うう・・・・・・グスン・・・・・・雷の優しさに、オラなんだか涙がででぎでどまらないよお・・・・・・」

この雷の優しさはアレだ・・・・・・故郷に残してきたオカンの暖かみだ。優しく全てを包み込み、全てを肯定してくれるあの包容力、まさしくそれだ。
ありがとう母ちゃん、俺を育ててくれて・・・・・・今、俺、戻るよ・・・・・・魂よ原始へ還れ。

「そうだったな雷、お前は俺のオカンになるべき存在だ・・・・・・」

「は！？何言ってるの司令官！？」

「あ、ああごめん錯乱していた・・・・・・」

しかし、雷が俺にツッコミしてくるなんて珍しい。
そんな夫婦漫才をしていると響が咳払いをして話題の修正を促す。

「コホン。それで約束の話だけど」

「ああそうだったな脱線しまくってたぜ。それでたしか、新しく出来た海軍軍神遊園地に行くんだっけか」

「そうなのです！ちゃんと思い出してくれたのです！」

「おお、約束忘れちゃってて悪かったな、今ちゃんと思い出したから安心してくれ」

「まったく約束を忘れるなんてレディー度が足りなすぎるわね」

「なんだよレディー度って。それちんちんついてても発動されるのか？」

「はわわ司令官さん何言ってるのです！？」

「司令官！皆がいるんだからエッチなのはダメよ！」

雷電が同時にツッコミを入れてくる。なんでお前らそんな息ぴったりなんだよ、ビック・ボスに訓練受けてんのか？

「おうおうわかったよ。ま、朝飯食い終わったら適当に準備して行くとすっか」

「なのです！」

～～～

ブルルルウルルルルルル。俺の愛車、三菱重工試作10式戦車提督専用機がうなりをあげて車道を進む。

「このまままっすぐ進めば着くんだよな？」

「なのです！地図によれば、もうそろそろ目標座標に到着なのです！」

「お・・・・・・見えてきたな」

ジェットコースターの骨組みが段々と眼前に広がってきて、いやでも遊園地に来たのだということを意識させられる。
そういや遊園地に来たのなんて何年ぶりだろうなぁ。
ブルルルルルルルキュキュキュウウルルルル。俺は愛車を駐車場に停め、地面へと降りる。

「なんだか楽しくなってきたのです！」

「そうね、今日は遊ぶわよ！」

「な、なかなか楽しめそうじゃない」

「皆が楽しそうでなんだか嬉しいよ」

第六駆逐隊4人ともワクワクしている。まったくこれだから子供は単純だぜ。俺なんて全然ワクワク・・・・・・ん・・・・・・？
俺もワクワクしてる・・・・・・ワ、ワクワクが止められねえぜええええええええ！！

「おっしゃー！お前ら出撃だぜえええええええ！！」

「なのです！！！」

「し、司令官もとっても楽しそうだね」

駐車場から全力疾走をしているとチケット売り場が見えてきた。うお、結構並んでるな。こういう時はアレだぜ。職権乱用だぜ。軍服も着てるし適当に理由つければ迅速になおかつ無料で中に入れるっしょ！うはは俺様天才だぜええええええええ。

「それじゃ司令官、この特別チケットで特別入場口から入りましょ」

「えなにそれ」

「この間言ったじゃない、並ぶの嫌だからちょっと高いけど並ばずに入れる特別チケット買おうって。そしたら司令官アニメ見ながら、今良いところだから適当に買っといてってカード渡してきたじゃない」

ッハ・・・・・・そういえばその約束した時、ちょうどアニメがお風呂回で・・・・・・。

「ち、ちなみにそれいくらするんだ？」

「一人2万円くらいだったわ」

「！？」

おのれ遊園地ぃぃぃいいいいいいい。どこまでも卑劣なヤツよ・・・・・・！こんな初心でいたいけでチェリーな提督のサイフから金を毟り取ろうとは・・・・・・帰りに44口径120mm滑腔砲をぶち込んでやるから覚悟するのだ・・・・・・！！
い、いや、やっぱ請求きたら困るしやめとこ。お、落ち着け俺、スタンド使いは常にクールに戦うのだ。イッツクール！

「でも電話して申し込みする時、海軍鎮守府って名乗ったら、いつも平和を守ってもらっているからとかで無償にしてもらえたわ」

「なんだよもー！先に言ーえーよー！いかずーちー愛してるよぉーんちゅー」

「！？　ちょ、ちょっと司令官！いきなり抱きついてきてどうしたの！？って人がいっぱい見てるから！ちょっとぉ！」

「んーぺろぺろぺろ」

「んひゃあ！ちょっと、ほっぺた舐めすぎ！もう仕方ない司令官なんだから。甘えたいならそう言ってくれればいいのに」

ああ最高だよ雷ちゃん。僕のサイフは君が守ってくれたんだね！嬉しくて涙とペロペロが止まらないよ！

「はわわ司令官さん！憲兵さんが来るのです！そろそろやめるのです！」

「何！？それはイカン。さっさと入場しよう」

身を翻し、一目散に特別チケット入場口へ向かう。憲兵はこわい、そう提督でもね。

～～～

チケットを渡し、「夢の世界へようこそ！」など受付のネーチャンから言われて、いざ入り口の門をくぐると、そこには中心に噴水を置く、緑豊かな円形の庭園が広がっていた。なかなかデカイ。そして門の反対側、俺たちから見て庭園の向こう側には白亜の城がズンと確かな存在感を持ってそびえ立っていた。庭園といい城といい、まるでどこか別世界に迷い込んだ気分にさせられる。入り口からこの光景とは、いやはや遊園地ってのは卑怯だぜ。

「すげぇな・・・・・・」

「なのです・・・・・・」

噴水から立ち上る水が形を変え、庭園の芝生と木々を吹き抜ける風が気持ち良い。視線を奥に向ければ、真新しい純白の城壁が澄み切った空を背に俺たちを見下ろしている。

「司令官！折角だし写真撮ってもらいましょ！」

「お、そうだな！んじゃその辺の人にでも声をかけて撮ってもらうか。ちょうどあそこにいる二人組のネーチャンに頼むとするぜ。すみませーん！」

「はい？」

「ってお？鈴谷じゃねえか」

「うげええ提督！？」

「っと、もう一人の方は熊野か、偶然だなこんなところで」

「あ、あらあら提督さんじゃありませんこと」

「ははは！なんだよ二人で！デートか？だはははは？」

「「！？」」

「まぁんなワケねぇよな！ははは！お前ら俺のこと大好きだもんな！ははは！」

「「っほ・・・・・・」」

「まぁそれで写真撮ってくれよ、あ、お前らも交代で撮ってやるよ。てか一緒に撮るか？」

「い、いや交代でいいっすよ。そ、それと私たちが二人でここにいたことは皆には内緒で・・・・・・」

「ん？ああいいけどよ。別に女二人で遊園地なんて普通じゃねえのか？フェ○スブックとかでよく見る光景だぜ。まぁ、あんなの女どもの遊園地で楽しんじゃう私可愛いアピール・友達と仲良い私可愛いアピールでしかないんだろうけどよ」

「提督性格アレすぎ・・・・・・まぁとにかく秘密にしてよね。もし言ったら提督がロリと遊園地デートしてたって青葉に言いつけるから」

「お前よくそんなえげつないこと思いつくな・・・・・・」

「とにかくカメラ渡して！時間もったいないよ！」

「お、おう。ほらよ」

「なんかこのカメラ・・・・・・ヌメヌメしてるぅー！」

「してねぇよ！さっさと撮れって！」

鈴谷にカメラを渡し、入り口の門のあたりで遠巻きに見ていた第六駆逐隊のもとへ歩み寄っていく。

「鈴谷さんたちも来てたなんて、ちょっとビックリね」

「おうそうだな。ちなみに、あいつらがここにいたことは内緒にして欲しいらしいぞ。何でかはわからんが」

「なのです。わからなくても内緒にしといてあげるのですよ、司令官さん」

「馬に蹴られたら困るからね」

「そうね、私たちは何も見なかったわ！」

暁以外の3人が何かわかったような顔で頷いている。馬に蹴られるあたりで何となく鈍感な俺提督も察したが、いやまじでそうなの？提督的にはちょっと寂しいけど、俺個人としてはむしろちょっと妄想がほとばしるんだがそれは。今日は鈴谷×熊野で夜食とするか。

「おーい提督ぅー！撮るよー？何真剣な表情で固まってんのさー？」

「おおすまん！体位について考えていた！よーし撮ってOKだぜ！」

「なんじゃそりゃ。まぁ撮るよー！はい、艦上爆撃ぃー」

カシャ。
おいおいなんだよ艦上爆撃って。そこは、はい、チーズ！とかだろ。え、もしかしてこれ、鈴谷のズズヤンジョークなのかな？こ、これ笑うとこ？これは笑ってあげた方が助かる場面だったりするよね？学生時代よく滑って女子から白い目で見られた俺提督にはわかるよわかる。ここは笑うべき時だってね！

「ぬ！ぬははははは！ヌッッツッツッツ！！ぬはははははははははははははは！！ぬははは！！」

「うわキモ」

「ぬわっ！？」

カシャカシャ。
え今キモとか聞こえたんだけど、あれれ俺提督もしかしてしくじった？これ逆に俺提督滑ってる？だ、大丈夫？提督大丈夫？

「くすす、司令官さん面白いのです」

「まったくいきなり何よもう、笑わせないでよ」

あれれ第六駆逐隊の面々にはウケてる。こ、これはOKなのでは？許された？提督許された？

カシャカシャ。
その後高度な心理戦を繰り広げること数度、写真撮影は終わりとなった。
撮ってもらった後、交代して鈴谷と熊野のツーショットも数枚撮ったが、なんだかあいつら終止ソワソワしていたな。恥ずかしいなら別の人に撮ってもらえばいいのに。
カメラのデータ閲覧で撮れた写真を確認していると、鈴谷が歩み寄ってきた。

「いやぁー提督お疲れ様。途中いきなり笑い出した時はお薬きれたのかと思ってガチで引いたけど、まぁありがとね」

「お前こそスズヤンジョークはやめとけよ、俺がいなきゃ今頃お前、心に深い傷跡が残っていたかもしれないんだぜ？」

「なんだよスズヤンジョークって！提督マジでお薬必要なんじゃなーいー？」

「こらこら鈴谷、そんなに提督を言うものではありませんわ。それと提督、ありがとうございました」

熊野が深々とお辞儀をする。うむ、お辞儀の時にチラ見えしたうなじがたまりませんな。

「てか提督写真撮るの上手いね、見直しちゃったよ」

「ああ、昔色々撮ったからな」

「ふーん」

鈴谷、その無関心さは正しい。俺もうっかり口を滑らせてしまった手前、もし詳しく聞かれたらどうしようと内心焦っていたからな・・・・・・。これが艦娘の危険予知能力ってヤツなのだろうか。それとも女の勘だろうか、とにかくツッコまれなくて助かった。え？盗撮？いやいやしてませんよはははは。

「さて俺たちはそろそろ園内を回るが、お前たちはどうする？」

「わたくしたちも、アトラクションを楽しみますわ、それで、その・・・・・・」

「ああわかってる、以後は別行動にしようぜ。流石に俺もホースにキッキングされたくはないしな」

「なっ、ちょっ」

鈴谷がアワアワと慌てている。熊野はよくわかってないらしく頭上に？を浮かべているが。

「と、とにかくそういうことで！んじゃまたねー！」

鈴谷が熊野の手を握り、逃げる様に去っていく。うーんなんだか初々しいねぇ。青春だねぇ。

「さて俺たちも行くか。まず何から行く？ブギョーさんの殿中ハントとか？」

ブギョーさんの殿中ハントとは、江戸城内を模した室内を謎の乗り物に乗りながら勘定奉行であるブギョーさんといっしょに賊を討伐するアトラクションだ。見所はブギョーさんの持つ太刀が名匠和泉守兼定の実物であったりと色々リアリティが凄まじいことだとか。それとブギョーさんはハチミツが大好物らしい。なんだその謎設定。

「なにそれ面白そう！まずはそれから行きましょ！」

暁が体を乗り出して賛成してくる。俺としては、ネタ枠的な扱いで名前を出したんだが。

「えまじでいくの。まぁ身長制限ないらしいし、安心か」

地図を確かめブギョーさんの殿中ハントに向かい歩くこと数分、目の前には江戸城の天守閣がそびえ立っていた。
おいおいおい白亜の城があるってのに、江戸城まであるのかよ、色々カオス過ぎるだろ和洋折衷かよ。

「早速中に入ってみましょ！」

「なのです！」

あああ奴ら、何も臆することなく中へ入っていく・・・・・・これが若さなのか・・・・・・？
俺提督も追って中へ入って特殊チケットをかざすとそのままスルスルと受付を通してもらえた。説明によればこのチケット園内に入る時だけでなく、アトラクションも並ぶことなく乗ることが出来るらしい。流石2万円は伊達じゃないぜ。

江戸城をそのままに造ったという城内に圧倒されながら廊下を奥に進むと、陣羽織を着た精巧な人形が畳の上に立っていた。このアトラクションのマスコット、ブギョーさんである。

『それがしは勘定奉行。これより殿中を案内する、おぬしたちはこのクナイに乗るでござる』

そうブギョーさんアナウンスが流れ、目の前にクナイの形をした乗り物が障子を開けて入ってくる。

「2人ずつ6人まで乗れるみたいね！」

「ってことは俺は一人席か」

てかなんでクナイなの？ツッコンじゃだめなのかな、ツッコミたいな、うぬぬ。
前席に暁響、中席に雷電、そして後席に俺が座り、安全ベルトを締めると出発の合図がかかった。

『それでは、いざ出陣でござる！』

ウイイイインゴゴゴゴゴゴ。振動とともにクナイが動きだす。な、なんかこう、勝手に動き出されるとちょっと不安になるよね、わかるわ。

『この江戸城天守は寛永期に造られた事実上最後の天守閣でござる。明暦の大火によって江戸城下町と共に・・・・・・』

え、おいおい、いきなりブギョーさん歴史について語り始めたんだけど！？え、これどういうことなの？やべえよこれ続くと暁とか寝始めるパターンじゃないの？おいおいおい。
と突然の歴史講座にヒヤヒヤしていると、突如敵の鎧を着た兵士が上から降ってきた。
ガッシャーン！！

「ぴゃああああああああ」

歴史の話で集中力を欠いていた暁がガチで驚いてる。なるほどこれが狙いか・・・・・・ブギョーさんの殿中ハント、侮れないな。

「（あ、暁大丈夫かい？）」

「（う、うう、ちょっと出ちゃった）」

「（でちゃった！？）」

何か前から不穏な会話が聞こえた気がするが、き、気にしない。俺提督は気にしない。

『むむ、いきなり賊と遭遇したでござる！皆のもの下がれぃ！ここは殿中なれば鯉口三寸抜けば即ち謀反であるぞ！！殿中であるゥウウウウウウウウウウウウウウ!!!』

大音量でブギョーさんは叫ぶと、いきなり居合いで敵兵の胴を横薙ぎに両断した。ブシャーと血が飛び散り、敵兵の骸が畳の上に転がった。
ひえええええええええ。なにこれグロすぎいいいいいいいい。てか人形とはいえ、めちゃくちゃリアルでなんか内臓的なものまで見えてるんですけど！！腸みたいなものがぬろぬろと出てますけど！！リアリティ高すぎだろこれ！！

「きゅう」

「暁！？」

どうやら暁が失神したみたいだな・・・・・・だがヤツは第六駆逐隊四天王の中でも最弱・・・・・・っと、そんなことを言ってる場合でもないか。

「響、暁は大丈夫なのか？」

「う、うん、どうやらさっきの殺陣で気絶しただけみたいだ。艦娘だし気絶くらいなら大丈夫だとは思うけど」

「お、お前らも怖かったら目を瞑ってもいいんだぞ？これかなり本格派だぞ」

「ヤー」

「司令官、怖かったら私と手を握ってもいいのよ？」

「か、かっこいいのです、ブギョーさん」

おいおい他の奴ら全然平気そうじゃねえか。暁本当に最弱かよ。ちょっとビビッてた俺が逆に恥ずかしくなってきた。てか電が超楽しそうなんだが・・・・・・

その後何度かの殺陣があって、毎回ブギョーさんが華麗に敵を一刀両断してブギョーさんの殿中ハントは終わりを迎えたのだった。
暁はというと、クナイ型の乗り物が終点へ着いたと同時に目を覚ました。

「なによもう！あんなにコワイなんて聞いてなかったわよ！ぷんすか！」

「いやお前めっちゃ最初食いついてたじゃん、あのアトラクション」

「それより暁、どうしてそんなにヨタヨタ歩いているんだい？もしかして本当に失きｎ」

「きゃああああああ！ち、違うわよ！してないわよ！こ、これはさっきので腰が抜けてその・・・・・・」

「OH！艦娘が時代劇で腰を抜かしたってのかい？HAHAHA！これはお笑いだぜ、なぁジョニー？HAHAHAHA！」

「今すぐこのおっさんをぶち殺したいわ・・・・・・」

先導して歩いていた響がくるりと反転し、こちらを向いて提案してくる。

「さて次はどうしようか。少し休むかい？」

「ちょ、ちょっと待って、そ、その前にトイレ・・・・・・」

「暁・・・・・・やっぱり失禁・・・・・・」

「してないわよ！！」

「実は私もおトイレに行きたかったのです」

「となると暁と電か、雷と司令官は大丈夫？」

「私は特に問題はないわ」

「俺も大丈夫だ」

「ヤー、それじゃ司令官。私と暁、電はちょっと花を摘みに行ってくるよ」

「それじゃ俺と雷はそこらへんのベンチでまったり待ってることにするか」

「そうね、わかったわ」

「それじゃ行ってくるね」

ヨタヨタと歩く暁を連れて響と電はトイレマークが指し示す方へ歩いていく。
女子はトイレ近くて大変だなぁ。
帰ってくるまでちょっと暇だし飲み物でも買ってくつろぐか。

「なぁ雷、何か飲みたいものとかあるか？買ってどっかに座って待とうぜ」

「え！？うーんと。それなら、あそこのカフェにある“二人で飲めるジュース”なんてどうかしら！」

「ちょうど二人だしいいんじゃないか。よし、じゃあ買ってくるぜ！」

「私はテラス席をどこか確保しておくわね！」

小走りでレジに向かい、売店のネーチャンに「二人で飲めるジュースってやつくれ」と注文する。かなり適当な注文だと思ったが、流石はプロ「かしこまりました」と笑顔で頷くとササッと慣れた手つきで会計を済ませ、注文した商品をトレーに乗せて渡してくれた。こいつ、できるッ！
てかこの商品、注文してから気付いたが、明らかに恋人同士が一緒に飲むやつじゃないか。ご丁寧に二本入っているストローがハート型に湾曲してやがる！まさか雷、俺とこれを飲みたかったのか・・・・・・？策士ッ・・・・・・そして、それ以上に天使ッッッ！！！
こういうのは男のほうが照れてはいけないドンと構えていくぜ。

「おーい雷！買ってきたぜ！さあ一緒に飲もう！」

「し、しれーかん、そ、その、へへ」

少し恥ずかしそうにはにかむ雷。俺はもう今ここで死んでもいい。

「それじゃあ、一緒に飲みましょ？」

「らりりりりょ了解した」

いかん集中力がさっきのはにかみで切れてキョドってしまった。マイガッ！
さてトレーを机に置くと、早速雷の唇がストローに近づく。そして、ストローをくわえる。こ、これは、俺もくわえざるをえない！雷め先手必勝ということか！やるじゃあないか！！
し、しかし、これ、間接キスか？もしここでジュースを飲んだなら、え、液体同士を通しての間接キスなのか？な、なんだそれ、凄い興奮する。
雷がスススとすこし吸い始めた。液体がストローの中を移動していくのが見える。お、俺も、す、吸わねば。これほどストローからジュースを吸うということに集中する瞬間なんておそらく後の人生においてもうないだろう。吸わねば。生きねば。
スススス。ピチャ。ゴクン。雷と俺、ほぼ同時にストローを通してジュースを飲む。

「んくっ、んくっ」

雷が可愛げに喉を鳴らしてジュースを飲んでいる。
俺も、もう必死でジュースを飲んでいる。もうこれ何味なのかもわからねえ。たしか緑色だったからメロンとかだろうか？い、いやこれはそうじゃない、そう、いうなればこれは雷味のジュース！ヤバイ更に興奮してきた！ジュースうめぇ！雷ジュースうめぇよぉ！うめえうめえうめえ！うめうめ！いかずちうま！いか　うま。

「「ズズズズズズズズ」」

気がついたらいつのまにかジュースを飲み干していた。やべえやべえ完全にトリップしてたわ。
ジュース飲んでる時間が一瞬で過ぎた、なにこれ相対性理論実践。1分が0.1秒に感じるマジック。

「い、雷」

「な、何？司令官」

「ま、ま、まま、またやろうな」

「う、うん、また」

うつむいて首筋まで赤くした雷がふるふると震えながら答える。
こりゃもう辛抱たまらんでぇ！今ここが外じゃなかったら襲ってたね、間違いなく。俺の内なるビーストが暴れようとしている。落ち着け、またできるんだからいいじゃないか、なぁビーストよ。鎮まっておくれ鎮まりたまえ鎮まりたまえ。

前半完。

「しれいかーん！朝よー！そろそろおきなさーい！」

今日は日曜日。昨日夜遅くまでエロ動画を見ていたので俺提督は眠いというのに、今朝も早速雷が起こしにやってきた。
まだ眠いし、もう少し寝ていることとするぜ・・・・・・

「あれれ、まだ司令官寝てるのー？もうー、しょうがないなー」

そう言ってユサユサ布団を揺さぶってくる雷。
うぬぬぬこれは起きない訳にはいかないようだな。でも言われたとおり起きるのも何だか釈然としないし、ここは少し悪戯でもするべきか。
そんなことを寝ぼけた頭で考え、俺はそっと右手を雷の胸へ向かわせる。

「うーん、もう揉みしだけないよー」

「うわっ、ちょ、司令官！どこ触って！んっ！寝ぼけてるの！？」

モミモミモミモミ。
小さいながらも柔らかい。オウ・・・・・・ナイスちっぱい・・・・・・！神は楽園を創りたもうた・・・・・・！
モミモミモミモミ。

「うーん、むにゃむにゃ、ワレはリト」

「ちょっと・・・・・・っ、しれいかん！もうダメだってば！」

「むにゃむにゃふひひ、すまんすまん」

そっと手を離す。5分くらい揉んでいたか。流石にやりすぎたかもしれん、なんだか雷、目がトロンとしてるし。
しかし朝から最高のちっぱいだったな、あの手の内におさまる感覚が最高にハイってやつだ。ごちそうさまでした。

「もう司令官ったら、ちゃんと起きてたんじゃない」

胸を手で隠すようにして雷は言う。

「はははすまんな！ちょっとからかってやりたくなってな！ははは！」

あらら怒っているのかな。ちょっとくらい怒られるのもやむなしだ。雷に怒られるのは、我々の業界ではご褒美だから問題はないがな！。

「もうー！ちゃんと先に言ってくれなきゃ驚いちゃうじゃない。そ、そういうことしたくなるのはわかるけど、今度はちゃんと先に確認してよね！」

「！？」

え？えなに確認したらしていいの？え？
ええ、ワイセクハラしてんねんで？おいおいおい、流石雷ちゃんマジ天使としか言いようがねえぜ。

「それじゃ朝ごはん作ってあるから、はやく食べにいきましょ！今日のお味噌汁の具は司令官の大好きなアサリにしたんだから！」

天使だ・・・・・・神は我に天使を遣わせたもうた・・・・・・。

「わかったよマイエンジェル雷ちゃん。さっさと着替えてラブリー朝食をイーティングするぜ！」

そうと決まれば颯爽と着替えを終わらせるぜ！オラオラオラオラ！服よ！吹き飛べ！

「わっ司令官！着替えるのはいいけど何でパンツまで脱いでるのよ！わ、わわ私先行ってるから！」

むーん、勢いあまってズボンと一緒にパンツまで脱いでしまった。流石の雷でもゾウさんを見れば慌てるのか。ふむふむ勉強になるなぁ。
さて、ちゃっちゃと軍服に着替えよう。休日でも軍服、これ提督のツライとこね。

～～～

鎮守府廊下を足早に歩く。向かう先は第六駆逐隊の部屋だ。
俺提督は、食事は必ず第六駆逐隊と一緒に食べることにしている。
何故かって？そりゃあ食事をする時、人間とは満たされていなければならないからだ。
暁、響、雷、電。あいつらに囲まれた食卓、それが俺にとって最も満たされた食卓なのだ。
つまり、あいつら第六駆逐隊の部屋は魂の安らぎの場所、ヴァルハラ。いざゆかん、ヴァルハラへ。

「おーい！メシだメシ！朝メシをくれー！」

グリッと取っ手を回しドアを開ける。

「もう司令官！おそいわよ！レディーをいつまで待たせるつもり！？」

「ごめんって暁。でも待っててくれたんだな。ありがとうだぜ」

「ななな、れ、レディーは優しさをもって優雅たるものなのよ。だ、だから全然そういうんじゃないから！レディーとして当然のことよ！」

「ははは、レディーのわりには寝癖ついたままだぞー。どれ」

暁の頭を片手で押さえ、手ぐしで寝癖を整えてやる。

「はわっ！？ふ、ふにゃにゃにゃ・・・・・・」

咄嗟のことに反応できずふにゃふにゃしている暁をゆったりと梳いていると、残りの三人が話し掛けてくる。

「おはよう司令官。今日もいい天気だね」

「司令官さん！おはようなのです！」

「おはよう司令官。ちゃんと目は覚めた？」

「おう、おはよう、響、電、雷。今日は遅れてすまなかったな」

「いいさ。いつもより10分くらいしか遅れてないしね。それに、休日の朝は誰だってゆっくりしてしまうものだしね」

「なのですなのです。あれれ、でも雷ちゃんが司令官呼びに行ってから結構時間たってるのです。何をしていたのです？」

「何ってそりゃあ、胸をも」

「うわわわわわわ何口走ってるのよ！！？」

顔を真っ赤にして遮ってくる雷。なんだ、誰かに知られるのは恥ずかしいのか。ふむ、この反応も可愛いなぁ。

「ムネヲモ・・・・・・？何なのです？新しいスポーツとかヨガとかみたいなものなのです・・・・・・？」

「まぁスポーツだなアレは。結構体力使うしな。でもやってると気持ちいいぞ」

「しれいかん！？」

「朝からスポーツとは健康的だね。朝から体操をすると血行が良くなって、スッキリとした気分になるよね」

「血行な、うんうんわかるぞ。俺も朝で既に血行良くなりまくってるっというのに、更に血行が良くなってヤバかったからな」

「ししししれいかん！？」

「さって、それじゃ暁の寝癖も直ったことだし、食事にしようか。冷めたらもったいないしな」

もうちょっと雷の恥ずかしそうな姿を見ていたかったが、あんまりやるとかわいそうだしな。それに腹が減っていて元気がでない。さっさと腹にエネルギーを入れねば。
そっと暁の頭から手を離し、部屋の中心にあるちゃぶ台へ向かう。

「ふわわわわ・・・・・・ッハ！れ、レディーの髪をいきなり触るなんて！ぷんすか！」

後ろで我に返った暁がぷんすかしているが気にしない。俺提督のスルースキルは108式まであるぞぉ！ははは！

俺提督の食事の促しを聞いて、どこかホッとした表情の雷が胸を撫で下ろしながら言った。

「そ、そうね。それじゃ、ゴハンよそってくるから皆席についてて」

～～～

雷が白飯と味噌汁をそれぞれの椀によそっていく。今日の朝食は白飯、味噌汁、アジの開き、キュウリとナスのぬか漬けという日本帝国万歳なメニューだ。まったく日本人は最高だぜ！
俺提督的にはホットケーキとか甘めな朝食もアリアリなんだが、やはり日曜の眠たげな朝にこういう日本的な朝食がドンッと出された時の安心感は言葉に表せないものがある。流石雷、ツボを押さえてる絶妙な采配だぜ。

「雷ちゃん・・・・・・あのこれ・・・・・・」

「ん？どうしたの電？」

「電・・・・・・ナスは嫌いなのです！！！！」

「何言ってるのよー！好き嫌いはダメよ！それに漬物だから食べやすいわよ！」

まーた電はナスがどうとか言ってるのか。ナス、うまいと思うけどなぁ。
特に、夏の暑い昼に焼きナスに生姜醤油をかけて、そうめんと一緒に食べるのは最高だな。ただそればっかり食ってると夏バテ一直線だが。ソースは俺。
そんなこんなで適当に話をしながら朝食を食べていると、ふと響が皆に目配せをした後、口を開いた。

「そういえば司令官。今日の約束は憶えているかい？」

「え？約束？あ、あー、うんあれね！わかるわかる！提督わかるよ！」

「やっぱり忘れているんだね・・・・・・」

「ええ？！司令官忘れてるの！？レディーとの約束をすっぽかすとは、懲罰房行きは免れないわよ！」

「えええ、ちょ、ちょっとまって思い出すから・・・・・・」

約束？約束約束・・・・・・あ、なんかあったなそういえば、たしか一週間くらい前・・・・・・。
たしか合コンいくとか、なんかそんな約束したような・・・・・・いや多分それだ。よしそれで話を合わせよう。

「あ、ああ、合コンいくんだっけか、ははは、まったくお前たちもマセやがってよー」

「？何を言ってるのです司令官さん？」

「やっぱり忘れてるー！ぴゃー！」

あ、あれ違うみたいなんだが・・・・・・あ！これ先週足柄が酔っ払いながら話してた内容だった！！
たしか「合コン約束されて行ったのに、なんか私だけ自己紹介のあと誰も話し掛けてくれなくて、一人でサラダ皆にもってる係になってた」とか！ぐぬぬあまりにも悲惨な話だったから記憶に残りまくってたわ。足柄ゆるさんあのアラサーめ。
本気で悩んでいると、雷が助け舟を出してくれた。

「はぁー、まったく仕方ないわね。司令官、私たちと遊園地行くって約束してたじゃない」

遊園地・・・・・・？そういえば、確か撮りためていた深夜アニメ消化してる時にそんな話をしたような・・・・・・。

「お、おう、そうだったな！ははは、なんだちょいっとふざけただけだぜ！最初からわかってたぜ！ははは！」

「もう、雷ったら、いっつもそうやって司令官を甘やかすんだからー」

「し、仕方ないじゃない、忘れちゃうことも人間ならあるわよ。ね、司令官」

「うう・・・・・・グスン・・・・・・雷の優しさに、オラなんだか涙がででぎでどまらないよお・・・・・・」

この雷の優しさはアレだ・・・・・・故郷に残してきたオカンの暖かみだ。優しく全てを包み込み、全てを肯定してくれるあの包容力、まさしくそれだ。
ありがとう母ちゃん、俺を育ててくれて・・・・・・今、俺、戻るよ・・・・・・魂よ原始へ還れ。

「そうだったな雷、お前は俺のオカンになるべき存在だ・・・・・・」

「は！？何言ってるの司令官！？」

「あ、ああごめん錯乱していた・・・・・・」

しかし、雷が俺にツッコミしてくるなんて珍しい。
そんな夫婦漫才をしていると響が咳払いをして話題の修正を促す。

「コホン。それで約束の話だけど」

「ああそうだったな脱線しまくってたぜ。それでたしか、新しく出来た海軍軍神遊園地に行くんだっけか」

「そうなのです！ちゃんと思い出してくれたのです！」

「おお、約束忘れちゃってて悪かったな、今ちゃんと思い出したから安心してくれ」

「まったく約束を忘れるなんてレディー度が足りなすぎるわね」

「なんだよレディー度って。それちんちんついてても発動されるのか？」

「はわわ司令官さん何言ってるのです！？」

「司令官！皆がいるんだからエッチなのはダメよ！」

雷電が同時にツッコミを入れてくる。なんでお前らそんな息ぴったりなんだよ、ビック・ボスに訓練受けてんのか？

「おうおうわかったよ。ま、朝飯食い終わったら適当に準備して行くとすっか」

「なのです！」

～～～

ブルルルウルルルルルル。俺の愛車、三菱重工試作10式戦車提督専用機がうなりをあげて車道を進む。

「このまままっすぐ進めば着くんだよな？」

「なのです！地図によれば、もうそろそろ目標座標に到着なのです！」

「お・・・・・・見えてきたな」

ジェットコースターの骨組みが段々と眼前に広がってきて、いやでも遊園地に来たのだということを意識させられる。
そういや遊園地に来たのなんて何年ぶりだろうなぁ。
ブルルルルルルルキュキュキュウウルルルル。俺は愛車を駐車場に停め、地面へと降りる。

「なんだか楽しくなってきたのです！」

「そうね、今日は遊ぶわよ！」

「な、なかなか楽しめそうじゃない」

「皆が楽しそうでなんだか嬉しいよ」

第六駆逐隊4人ともワクワクしている。まったくこれだから子供は単純だぜ。俺なんて全然ワクワク・・・・・・ん・・・・・・？
俺もワクワクしてる・・・・・・ワ、ワクワクが止められねえぜええええええええ！！

「おっしゃー！お前ら出撃だぜえええええええ！！」

「なのです！！！」

「し、司令官もとっても楽しそうだね」

駐車場から全力疾走をしているとチケット売り場が見えてきた。うお、結構並んでるな。こういう時はアレだぜ。職権乱用だぜ。軍服も着てるし適当に理由つければ迅速になおかつ無料で中に入れるっしょ！うはは俺様天才だぜええええええええ。

「それじゃ司令官、この特別チケットで特別入場口から入りましょ」

「えなにそれ」

「この間言ったじゃない、並ぶの嫌だからちょっと高いけど並ばずに入れる特別チケット買おうって。そしたら司令官アニメ見ながら、今良いところだから適当に買っといてってカード渡してきたじゃない」

ッハ・・・・・・そういえばその約束した時、ちょうどアニメがお風呂回で・・・・・・。

「ち、ちなみにそれいくらするんだ？」

「一人2万円くらいだったわ」

「！？」

おのれ遊園地ぃぃぃいいいいいいい。どこまでも卑劣なヤツよ・・・・・・！こんな初心でいたいけでチェリーな提督のサイフから金を毟り取ろうとは・・・・・・帰りに44口径120mm滑腔砲をぶち込んでやるから覚悟するのだ・・・・・・！！
い、いや、やっぱ請求きたら困るしやめとこ。お、落ち着け俺、スタンド使いは常にクールに戦うのだ。イッツクール！

「でも電話して申し込みする時、海軍鎮守府って名乗ったら、いつも平和を守ってもらっているからとかで無償にしてもらえたわ」

「なんだよもー！先に言ーえーよー！いかずーちー愛してるよぉーんちゅー」

「！？　ちょ、ちょっと司令官！いきなり抱きついてきてどうしたの！？って人がいっぱい見てるから！ちょっとぉ！」

「んーぺろぺろぺろ」

「んひゃあ！ちょっと、ほっぺた舐めすぎ！もう仕方ない司令官なんだから。甘えたいならそう言ってくれればいいのに」

ああ最高だよ雷ちゃん。僕のサイフは君が守ってくれたんだね！嬉しくて涙とペロペロが止まらないよ！

「はわわ司令官さん！憲兵さんが来るのです！そろそろやめるのです！」

「何！？それはイカン。さっさと入場しよう」

身を翻し、一目散に特別チケット入場口へ向かう。憲兵はこわい、そう提督でもね。

～～～

チケットを渡し、「夢の世界へようこそ！」など受付のネーチャンから言われて、いざ入り口の門をくぐると、そこには中心に噴水を置く、緑豊かな円形の庭園が広がっていた。なかなかデカイ。そして門の反対側、俺たちから見て庭園の向こう側には白亜の城がズンと確かな存在感を持ってそびえ立っていた。庭園といい城といい、まるでどこか別世界に迷い込んだ気分にさせられる。入り口からこの光景とは、いやはや遊園地ってのは卑怯だぜ。

「すげぇな・・・・・・」

「なのです・・・・・・」

噴水から立ち上る水が形を変え、庭園の芝生と木々を吹き抜ける風が気持ち良い。視線を奥に向ければ、真新しい純白の城壁が澄み切った空を背に俺たちを見下ろしている。

「司令官！折角だし写真撮ってもらいましょ！」

「お、そうだな！んじゃその辺の人にでも声をかけて撮ってもらうか。ちょうどあそこにいる二人組のネーチャンに頼むとするぜ。すみませーん！」

「はい？」

「ってお？鈴谷じゃねえか」

「うげええ提督！？」

「っと、もう一人の方は熊野か、偶然だなこんなところで」

「あ、あらあら提督さんじゃありませんこと」

「ははは！なんだよ二人で！デートか？だはははは？」

「「！？」」

「まぁんなワケねぇよな！ははは！お前ら俺のこと大好きだもんな！ははは！」

「「っほ・・・・・・」」

「まぁそれで写真撮ってくれよ、あ、お前らも交代で撮ってやるよ。てか一緒に撮るか？」

「い、いや交代でいいっすよ。そ、それと私たちが二人でここにいたことは皆には内緒で・・・・・・」

「ん？ああいいけどよ。別に女二人で遊園地なんて普通じゃねえのか？フェ○スブックとかでよく見る光景だぜ。まぁ、あんなの女どもの遊園地で楽しんじゃう私可愛いアピール・友達と仲良い私可愛いアピールでしかないんだろうけどよ」

「提督性格アレすぎ・・・・・・まぁとにかく秘密にしてよね。もし言ったら提督がロリと遊園地デートしてたって青葉に言いつけるから」

「お前よくそんなえげつないこと思いつくな・・・・・・」

「とにかくカメラ渡して！時間もったいないよ！」

「お、おう。ほらよ」

「なんかこのカメラ・・・・・・ヌメヌメしてるぅー！」

「してねぇよ！さっさと撮れって！」

鈴谷にカメラを渡し、入り口の門のあたりで遠巻きに見ていた第六駆逐隊のもとへ歩み寄っていく。

「鈴谷さんたちも来てたなんて、ちょっとビックリね」

「おうそうだな。ちなみに、あいつらがここにいたことは内緒にして欲しいらしいぞ。何でかはわからんが」

「なのです。わからなくても内緒にしといてあげるのですよ、司令官さん」

「馬に蹴られたら困るからね」

「そうね、私たちは何も見なかったわ！」

暁以外の3人が何かわかったような顔で頷いている。馬に蹴られるあたりで何となく鈍感な俺提督も察したが、いやまじでそうなの？提督的にはちょっと寂しいけど、俺個人としてはむしろちょっと妄想がほとばしるんだがそれは。今日は鈴谷×熊野で夜食とするか。

「おーい提督ぅー！撮るよー？何真剣な表情で固まってんのさー？」

「おおすまん！体位について考えていた！よーし撮ってOKだぜ！」

「なんじゃそりゃ。まぁ撮るよー！はい、艦上爆撃ぃー」

カシャ。
おいおいなんだよ艦上爆撃って。そこは、はい、チーズ！とかだろ。え、もしかしてこれ、鈴谷のズズヤンジョークなのかな？こ、これ笑うとこ？これは笑ってあげた方が助かる場面だったりするよね？学生時代よく滑って女子から白い目で見られた俺提督にはわかるよわかる。ここは笑うべき時だってね！

「ぬ！ぬははははは！ヌッッツッツッツ！！ぬはははははははははははははは！！ぬははは！！」

「うわキモ」

「ぬわっ！？」

カシャカシャ。
え今キモとか聞こえたんだけど、あれれ俺提督もしかしてしくじった？これ逆に俺提督滑ってる？だ、大丈夫？提督大丈夫？

「くすす、司令官さん面白いのです」

「まったくいきなり何よもう、笑わせないでよ」

あれれ第六駆逐隊の面々にはウケてる。こ、これはOKなのでは？許された？提督許された？

カシャカシャ。
その後高度な心理戦を繰り広げること数度、写真撮影は終わりとなった。
撮ってもらった後、交代して鈴谷と熊野のツーショットも数枚撮ったが、なんだかあいつら終止ソワソワしていたな。恥ずかしいなら別の人に撮ってもらえばいいのに。
カメラのデータ閲覧で撮れた写真を確認していると、鈴谷が歩み寄ってきた。

「いやぁー提督お疲れ様。途中いきなり笑い出した時はお薬きれたのかと思ってガチで引いたけど、まぁありがとね」

「お前こそスズヤンジョークはやめとけよ、俺がいなきゃ今頃お前、心に深い傷跡が残っていたかもしれないんだぜ？」

「なんだよスズヤンジョークって！提督マジでお薬必要なんじゃなーいー？」

「こらこら鈴谷、そんなに提督を言うものではありませんわ。それと提督、ありがとうございました」

熊野が深々とお辞儀をする。うむ、お辞儀の時にチラ見えしたうなじがたまりませんな。

「てか提督写真撮るの上手いね、見直しちゃったよ」

「ああ、昔色々撮ったからな」

「ふーん」

鈴谷、その無関心さは正しい。俺もうっかり口を滑らせてしまった手前、もし詳しく聞かれたらどうしようと内心焦っていたからな・・・・・・。これが艦娘の危険予知能力ってヤツなのだろうか。それとも女の勘だろうか、とにかくツッコまれなくて助かった。え？盗撮？いやいやしてませんよはははは。

「さて俺たちはそろそろ園内を回るが、お前たちはどうする？」

「わたくしたちも、アトラクションを楽しみますわ、それで、その・・・・・・」

「ああわかってる、以後は別行動にしようぜ。流石に俺もホースにキッキングされたくはないしな」

「なっ、ちょっ」

鈴谷がアワアワと慌てている。熊野はよくわかってないらしく頭上に？を浮かべているが。

「と、とにかくそういうことで！んじゃまたねー！」

鈴谷が熊野の手を握り、逃げる様に去っていく。うーんなんだか初々しいねぇ。青春だねぇ。

「さて俺たちも行くか。まず何から行く？ブギョーさんの殿中ハントとか？」

ブギョーさんの殿中ハントとは、江戸城内を模した室内を謎の乗り物に乗りながら勘定奉行であるブギョーさんといっしょに賊を討伐するアトラクションだ。見所はブギョーさんの持つ太刀が名匠和泉守兼定の実物であったりと色々リアリティが凄まじいことだとか。それとブギョーさんはハチミツが大好物らしい。なんだその謎設定。

「なにそれ面白そう！まずはそれから行きましょ！」

暁が体を乗り出して賛成してくる。俺としては、ネタ枠的な扱いで名前を出したんだが。

「えまじでいくの。まぁ身長制限ないらしいし、安心か」

地図を確かめブギョーさんの殿中ハントに向かい歩くこと数分、目の前には江戸城の天守閣がそびえ立っていた。
おいおいおい白亜の城があるってのに、江戸城まであるのかよ、色々カオス過ぎるだろ和洋折衷かよ。

「早速中に入ってみましょ！」

「なのです！」

あああ奴ら、何も臆することなく中へ入っていく・・・・・・これが若さなのか・・・・・・？
俺提督も追って中へ入って特殊チケットをかざすとそのままスルスルと受付を通してもらえた。説明によればこのチケット園内に入る時だけでなく、アトラクションも並ぶことなく乗ることが出来るらしい。流石2万円は伊達じゃないぜ。

江戸城をそのままに造ったという城内に圧倒されながら廊下を奥に進むと、陣羽織を着た精巧な人形が畳の上に立っていた。このアトラクションのマスコット、ブギョーさんである。

『それがしは勘定奉行。これより殿中を案内する、おぬしたちはこのクナイに乗るでござる』

そうブギョーさんアナウンスが流れ、目の前にクナイの形をした乗り物が障子を開けて入ってくる。

「2人ずつ6人まで乗れるみたいね！」

「ってことは俺は一人席か」

てかなんでクナイなの？ツッコンじゃだめなのかな、ツッコミたいな、うぬぬ。
前席に暁響、中席に雷電、そして後席に俺が座り、安全ベルトを締めると出発の合図がかかった。

『それでは、いざ出陣でござる！』

ウイイイインゴゴゴゴゴゴ。振動とともにクナイが動きだす。な、なんかこう、勝手に動き出されるとちょっと不安になるよね、わかるわ。

『この江戸城天守は寛永期に造られた事実上最後の天守閣でござる。明暦の大火によって江戸城下町と共に・・・・・・』

え、おいおい、いきなりブギョーさん歴史について語り始めたんだけど！？え、これどういうことなの？やべえよこれ続くと暁とか寝始めるパターンじゃないの？おいおいおい。
と突然の歴史講座にヒヤヒヤしていると、突如敵の鎧を着た兵士が上から降ってきた。
ガッシャーン！！

「ぴゃああああああああ」

歴史の話で集中力を欠いていた暁がガチで驚いてる。なるほどこれが狙いか・・・・・・ブギョーさんの殿中ハント、侮れないな。

「（あ、暁大丈夫かい？）」

「（う、うう、ちょっと出ちゃった）」

「（でちゃった！？）」

何か前から不穏な会話が聞こえた気がするが、き、気にしない。俺提督は気にしない。

『むむ、いきなり賊と遭遇したでござる！皆のもの下がれぃ！ここは殿中なれば鯉口三寸抜けば即ち謀反であるぞ！！殿中であるゥウウウウウウウウウウウウウウ!!!』

大音量でブギョーさんは叫ぶと、いきなり居合いで敵兵の胴を横薙ぎに両断した。ブシャーと血が飛び散り、敵兵の骸が畳の上に転がった。
ひえええええええええ。なにこれグロすぎいいいいいいいい。てか人形とはいえ、めちゃくちゃリアルでなんか内臓的なものまで見えてるんですけど！！腸みたいなものがぬろぬろと出てますけど！！リアリティ高すぎだろこれ！！

「きゅう」

「暁！？」

どうやら暁が失神したみたいだな・・・・・・だがヤツは第六駆逐隊四天王の中でも最弱・・・・・・っと、そんなことを言ってる場合でもないか。

「響、暁は大丈夫なのか？」

「う、うん、どうやらさっきの殺陣で気絶しただけみたいだ。艦娘だし気絶くらいなら大丈夫だとは思うけど」

「お、お前らも怖かったら目を瞑ってもいいんだぞ？これかなり本格派だぞ」

「ヤー」

「司令官、怖かったら私と手を握ってもいいのよ？」

「か、かっこいいのです、ブギョーさん」

おいおい他の奴ら全然平気そうじゃねえか。暁本当に最弱かよ。ちょっとビビッてた俺が逆に恥ずかしくなってきた。てか電が超楽しそうなんだが・・・・・・

その後何度かの殺陣があって、毎回ブギョーさんが華麗に敵を一刀両断してブギョーさんの殿中ハントは終わりを迎えたのだった。
暁はというと、クナイ型の乗り物が終点へ着いたと同時に目を覚ました。

「なによもう！あんなにコワイなんて聞いてなかったわよ！ぷんすか！」

「いやお前めっちゃ最初食いついてたじゃん、あのアトラクション」

「それより暁、どうしてそんなにヨタヨタ歩いているんだい？もしかして本当に失きｎ」

「きゃああああああ！ち、違うわよ！してないわよ！こ、これはさっきので腰が抜けてその・・・・・・」

「OH！艦娘が時代劇で腰を抜かしたってのかい？HAHAHA！これはお笑いだぜ、なぁジョニー？HAHAHAHA！」

「今すぐこのおっさんをぶち殺したいわ・・・・・・」

先導して歩いていた響がくるりと反転し、こちらを向いて提案してくる。

「さて次はどうしようか。少し休むかい？」

「ちょ、ちょっと待って、そ、その前にトイレ・・・・・・」

「暁・・・・・・やっぱり失禁・・・・・・」

「してないわよ！！」

「実は私もおトイレに行きたかったのです」

「となると暁と電か、雷と司令官は大丈夫？」

「私は特に問題はないわ」

「俺も大丈夫だ」

「ヤー、それじゃ司令官。私と暁、電はちょっと花を摘みに行ってくるよ」

「それじゃ俺と雷はそこらへんのベンチでまったり待ってることにするか」

「そうね、わかったわ」

「それじゃ行ってくるね」

ヨタヨタと歩く暁を連れて響と電はトイレマークが指し示す方へ歩いていく。
女子はトイレ近くて大変だなぁ。
帰ってくるまでちょっと暇だし飲み物でも買ってくつろぐか。

「なぁ雷、何か飲みたいものとかあるか？買ってどっかに座って待とうぜ」

「え！？うーんと。それなら、あそこのカフェにある“二人で飲めるジュース”なんてどうかしら！」

「ちょうど二人だしいいんじゃないか。よし、じゃあ買ってくるぜ！」

「私はテラス席をどこか確保しておくわね！」

小走りでレジに向かい、売店のネーチャンに「二人で飲めるジュースってやつくれ」と注文する。かなり適当な注文だと思ったが、流石はプロ「かしこまりました」と笑顔で頷くとササッと慣れた手つきで会計を済ませ、注文した商品をトレーに乗せて渡してくれた。こいつ、できるッ！
てかこの商品、注文してから気付いたが、明らかに恋人同士が一緒に飲むやつじゃないか。ご丁寧に二本入っているストローがハート型に湾曲してやがる！まさか雷、俺とこれを飲みたかったのか・・・・・・？策士ッ・・・・・・そして、それ以上に天使ッッッ！！！
こういうのは男のほうが照れてはいけないドンと構えていくぜ。

「おーい雷！買ってきたぜ！さあ一緒に飲もう！」

「し、しれーかん、そ、その、へへ」

少し恥ずかしそうにはにかむ雷。俺はもう今ここで死んでもいい。

「それじゃあ、一緒に飲みましょ？」

「らりりりりょ了解した」

いかん集中力がさっきのはにかみで切れてキョドってしまった。マイガッ！
さてトレーを机に置くと、早速雷の唇がストローに近づく。そして、ストローをくわえる。こ、これは、俺もくわえざるをえない！雷め先手必勝ということか！やるじゃあないか！！
し、しかし、これ、間接キスか？もしここでジュースを飲んだなら、え、液体同士を通しての間接キスなのか？な、なんだそれ、凄い興奮する。
雷がスススとすこし吸い始めた。液体がストローの中を移動していくのが見える。お、俺も、す、吸わねば。これほどストローからジュースを吸うということに集中する瞬間なんておそらく後の人生においてもうないだろう。吸わねば。生きねば。
スススス。ピチャ。ゴクン。雷と俺、ほぼ同時にストローを通してジュースを飲む。

「んくっ、んくっ」

雷が可愛げに喉を鳴らしてジュースを飲んでいる。
俺も、もう必死でジュースを飲んでいる。もうこれ何味なのかもわからねえ。たしか緑色だったからメロンとかだろうか？い、いやこれはそうじゃない、そう、いうなればこれは雷味のジュース！ヤバイ更に興奮してきた！ジュースうめぇ！雷ジュースうめぇよぉ！うめえうめえうめえ！うめうめ！いかずちうま！いか　うま。

「「ズズズズズズズズ」」

気がついたらいつのまにかジュースを飲み干していた。やべえやべえ完全にトリップしてたわ。
ジュース飲んでる時間が一瞬で過ぎた、なにこれ相対性理論実践。1分が0.1秒に感じるマジック。

「い、雷」

「な、何？司令官」

「ま、ま、まま、またやろうな」

「う、うん、また」

うつむいて首筋まで赤くした雷がふるふると震えながら答える。
こりゃもう辛抱たまらんでぇ！今ここが外じゃなかったら襲ってたね、間違いなく。俺の内なるビーストが暴れようとしている。落ち着け、またできるんだからいいじゃないか、なぁビーストよ。鎮まっておくれ鎮まりたまえ鎮まりたまえ。

前半完。

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