◆姿勢を見透かす
一方、河野談話発表翌日の5年8月5日付の朝日新聞はこう書いている。
《聞き取り調査が終わった7月30日夜、ソウルで田中耕太郎・内閣外政審議室審議官は「(元慰安婦の)記憶があいまいな部分もあり、証言の内容をいちいち詳細には詰めない。自然体でまるごと受けとめる」》
つまり、当時の宮沢喜一内閣はただ早期の政治決着を急いでおり、事実関係の追及や真相の解明など二の次だったのだろう。そうした安易な姿勢を韓国側に見透かされていたのだ。
当時の外政審議室幹部は河野談話発表から数年後、同室後輩にこう語った。
「振り返って、3年12月の慰安婦訴訟提起からの一連の流れをみると、意図的な動きを感じる」
まさに何をか言わんやである。(政治部編集委員)