日刊スポーツのニュースサイト、ニッカンスポーツ・コムです。


稲川翔V大阪に51年ぶりタイトル/宇都宮

賞金ボードを持ち上げる稲川翔(中央)。右は競輪イメージキャラクターの中村アン
賞金ボードを持ち上げる稲川翔(中央)。右は競輪イメージキャラクターの中村アン

<宇都宮競輪:高松宮記念杯>◇G1◇最終日◇15日

 稲川翔(29=大阪)が夢のG1初制覇と、12月に地元岸和田で初開催されるKEIRINグランプリ(GP)出場権をゲットした。逃げた脇本雄太の番手で競られたが死守して直線一気。ゴール前の接触から失格審議もクリアし、デビュー10年目でダブルの悲願を達成した。大阪勢のG1級制覇は1963年(昭38)一宮日本選手権の西地清一以来51年ぶり。

 近畿勢の鉄の結束がニューヒーローを誕生させた。先行1車同然の脇本の絶好番手。「攻められる位置。だれがきてもおかしくない」と腹をくくった。打鐘3角で粘った菊地圭尚に競り込まれたが、気迫でしのいで番手死守。ゴール前では中を割った菊地と接触して、菊地は落車したが、審議もセーフ。4度目のG1決勝で執念を実らせた。

 G1タイトルの初表彰式は号泣がお約束だが、近畿が生んだ若き機動型に涙は似合わない。「近畿じゃなかったら、ここまで育っていない。村上(義弘、博幸)さんを含めて近畿の先輩のおかげ。恩返しがひとつだけできた」。最後まで笑顔で締めくくった。

 今年は稲川にとって特別な1年だ。85年(昭60)に産声を上げ、輪界の頂点を決するGPが初めて関東を離れて地元岸和田で開催される。「まだG3も優勝していなくて恥ずかしい限りですが、責任を感じて走らせてもらいたい」と地元でのGP初出場制覇へ突っ走る。

 4歳から自転車競技のモトクロス(BMX)を始め、大阪経大に在学中、競輪学校に合格して同大を中退した。プロデビュー後の08、09年にBMXの全日本プロ選手権を連覇したが「ケガをしないように」BMXを封印して、現在は競輪一本に絞っている。

 業界苦難のG1は幕を閉じた。選手会からの脱会騒動で出場自粛の処分を受けたS級S班を中心としたスター選手が大量に不在で、不安視された売り上げは4日制G1のワースト記録を更新…。そんな中で若きスター選手の誕生だけが収穫だった。【大上悟】

 ◆稲川翔(いなかわ・しょう)1985年(昭60)2月20日、大阪府富田林市生まれ。大阪経大中退。競輪学校90期生で在校24位。05年7月に岸和田でデビュー(1、8、3着)。通算成績は700戦182勝。通算取得賞金は2億2261万6611円。172センチ、80キロ。血液型AB。

 [2014年6月16日8時28分 紙面から]

PR情報






日刊スポーツ購読申し込み