米国の郵便番号データから、欧州経済の現状に関する重要な考察がもたらされた。アティフ・ミアン氏とアミール・サフィ氏は近著「ハウス・オブ・デット(借金漬けの家)」で、信用収縮に見える現象は実際には融資の需要低下だと明らかにしている。彼らの分析は「バランスシート不況」という概念を裏付けている。負債を抱えた家計や企業は低金利には関心がなく、とにかく負債から解放されることを望むという考えだ。
こうした状況に陥れば、金融政策は効果を失う。野村総合研究所のリチャード・クー氏は20年前の日本も全く同じ状況にあったと指摘する。当時の日本の状況は今でも最も参考になる。
金融システムを整理したのに、米成長率はなぜこんなに低いのか--。ミアン氏とサフィ氏はこの問題に対する答えの一端を示そうとしている。欧州では状況は似ているがさらに悪く、金融システムの整理さえ終わっていない。
■債務圧縮は始まったばかり
だが両氏によれば、この問題は考えられているほど重要ではないという。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のモーリッツ・クレーマー氏も先週、欧州の民間部門の債務に関する試算で、両氏の主張を裏付ける根拠を示した。欧州の民間部門のデレバレッジ(債務圧縮)はようやく始まったばかりで、完了までには数年、おそらく数十年かかるだろう。
ユーロ圏の常設の金融安全網「欧州安定メカニズム(ESM)」と国際通貨基金(IMF)の金融支援が終わったばかりのポルトガルを例にとろう。民間部門の債務残高は2009年に国内総生産(GDP)比226.7%でピークに達し、13年末にもまだ220.4%あった。S&Pの試算では、20年には178%に下がるという。
これはなお大きな数値だが、楽観的すぎるきらいがある。ポルトガルなどユーロ圏周辺国は債務圧縮と平行して、競争力向上のために物価も下げなくてはならない。
これは果たして達成できるのか。市場の見解はイエスで一致している。ユーロ圏危機は終わったのだ。確かに、先月の欧州議会選挙では一部で波乱もあったが、政治的には何とか克服できるだろう。各種統計では欧州企業の景況感は改善しており、投資熱も高まっている。
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