中国北東部の港湾都市・青島は、1世紀以上前に(当時の国際通貨だった)メキシコドル銀貨40万枚を元手に設立された「青島ビール」の醸造所で知られる。だが近年、青島には他の種類の金属も集まって来ている。中国のトレーダーの間で安い外貨調達手段への需要が高まるなか、融資の担保に用いられる銅やアルミニウムが港湾倉庫に積み上がっている。
しかし5月末、青島の金属保管倉庫に動揺が走り始めた。ある中国企業が複数の銀行に対し、同じ量の金属に重複して抵当権を設定しているのではないかと地元当局が調査を始めたのだ。家主が一つの家を担保に複数の貸し手から融資を引き出すようなものだ。潜在的な損失は数億ドルに達するとみられ、銀行やトレーダーは状況の把握に追われている。南アフリカのスタンダード銀行と英スタンダードチャータード銀行は、自らの融資残高を「調査中」だとし、中信集団(CITIC)傘下の資源開発会社CITICリソーシズは、青島港の倉庫に保管する金属の保全命令を裁判所に申し立てた。
■他金属の金融取引が干上がる
青島以外にも波紋はすぐに広がった。銅の国際指標であるロンドン金属取引所(LME)の銅3カ月先物は、年初からすでに5%下落していたが、先週初めから4%下げ、12日は1トン6650ドルだった。中国では銅や他の金属の金融取引が干上がった状態だ。
商品トレーダー、銀行、金融関係者、アナリストは数多くの疑問に思案を巡らせている。この金融不正疑惑は特異なケースなのか、それとも他の中国の企業や港湾も広く関わっているのか? 保税倉庫にある銅が市場にあふれ出し、銅価格へのさらなる下げ圧力となるのか? 中国のシャドーバンキング(影の銀行)の重要な部分を構成する金属取引にとっていかなる長期的影響が考えられるのか?
その後2週間がたち、青島の捜査は依然として、中国でアルミ精錬所や発電所、炭鉱を手掛ける一企業を中心に進められている。この会社は青島港に最大で銅2万トン、アルミナ10万トンを保管しているとされる。
金属取引を手掛けるヘッジファンド、レッドカイトの共同創業者、デビッド・リリー氏は、今週開かれた金融派生商品(デリバティブ)会議で「他の地域で、他の問題が何も発覚していないという事実に、私はある程度安心している」と述べた。
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