下呂市小坂町の御岳山麓には大小さまざまな滝が点在し、「小坂の滝めぐり」は、すっかり人気の観光スポットになった。二百以上あるとされているが、正確にはいったい、いくつあるのだろうか。
滝巡りの案内をするNPO法人「飛騨小坂200滝」によると、現在の公式の滝の数は二百十六。旧小坂町が滝の調査を実施して、その結果を写真集にまとめており、そこに記載される数が根拠になっている。
だが200滝理事長の桂川淳平さん(66)によると、写真集に載っていない滝が、ガイドらによって「少なくとも三つ」発見されているという。四段にわたって八十九メートルの長さになる滝と、四十メートル級と十メートル級の滝。「いつもは迂回(うかい)して歩く沢を、沢沿いに登った時に見つかったりした。調査で見落としていたのかも」と話す。
旧小坂町の調査に参加した岡崎昌彦さん(67)は「未調査の沢があった」と明かす。調査は一九八〇年ごろと九六年ごろの二度に分けて行われ、一度目に百六十二の滝を見つけ、二度目は一度目に調べられなかった沢を中心に五十四の滝を見つけた。
山仕事をしていた人の話や、地図からの推測をもとに道なき沢を歩いて一つ一つ滝を確認し、データを取る難作業だった。時間や予算の関係で支流のごく細い沢や、調査の時に水が流れていなかった沢には入れなかったと話す。
滝には明確な定義はなく、調査では「五メートル以上の落差があるか、昔から名前がついていたり、滝と呼ばれていた」ものだけを選定した。200滝のガイドの一人で、五十歳の時から飛騨地域のすべての滝を撮影したという和合正さん(73)は「小坂の滝は二百七十六ある」と言う。滝つぼがあれば落差が小さくても滝とみなしている。
正確な数はつかめないが、なぜ小坂に滝が多いのか。飛騨地学研究会の岩田修さん(65)は四つの要因を挙げる。御岳が大きな山のため谷の高低差が大きい、土地の隆起が激しく滝ができる崖ができやすい、硬いが割れ目から崩壊が起きやすい濃飛流紋岩が多く滝ができやすい、さらにその上に広がる御岳の溶岩も水で浸食されやすいため滝を形成する、という。
最後に滝が多いゆえのエピソードを。実は名前の付いた滝は五十ほど。ほとんどが無名の滝で、滝の調査の時にメンバーが名付けた滝も多いという。200滝では古田肇県知事やテレビ番組で滝巡りをした芸能人にも、名前を付けてもらったりしている。名前が付いた滝は、これからも増えていきそうだ。
(田中一正)
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