写真展:「水俣から三陸へ」 水中写真家・尾崎たまきさんが作品展
2014年06月15日
「死の海」から再生した熊本県水俣湾を約20年前から撮り続ける水中写真家、尾崎たまきさん(43)の作品展「海と生きる−−水俣から三陸へ」が、東京都調布市小島町の調布市文化会館で開かれている。水俣と三陸は、水俣病と東日本大震災と条件は異なるものの、ともに過酷な環境に置かれてきた。写真からは、故郷の海に希望を見いだそうとする住民の思いや、海の生きものの生命力の強さが伝わってくる。
尾崎さんは熊本市生まれで、川崎市在住。水俣病の原因となった有機水銀が工場から垂れ流され、一度は「死の海」となった水俣湾に1995年から潜り、水中だけでなく、海で糧を得る水俣病患者の漁師たちをカメラに収めてきた。2000年から11年間、水中写真家の中村征夫さんの下で研さんを積み、2011年からフリーで活動している。
展示しているのは、水俣を題材にした40点と三陸を題材にした26点の計66点。水俣の作品は01年から今年5月までの撮影で、▽網の中の漁獲に笑顔を見せる水俣病認定患者の漁師▽栄養を蓄え、森のように茂った海藻▽水俣に多く生息する、ユーモラスな表情の魚▽黒潮に乗ってやってきたクマノミ−−など。
一方、三陸の作品は13年1月から今年5月の撮影。▽朝日に照らされながら長さ1キロの漁網を引く漁師▽収穫まであと3年かかるホヤの順調な生育ぶりを喜ぶ漁師▽荷さばき場に並んだ山盛りのホタテ▽震災前からダイバーに親しまれた浪板海岸(岩手県大船渡市)のダイビングポイント▽砂をかぶって擬態中のホシガレイ−−など。
三陸で撮影中、尾崎さんが水俣の漁師の生きざまを話すと、出会った人からは「水俣の例が希望、支えになる」という言葉が返ってきたという。「大切なものを奪われながらも、海を信じ漁を再開された三陸の漁師さんたちに、水俣の思いが届いてほしい」と尾崎さんは願っている。
作品展は7月27日まで(6月23、24日は休館)。入場無料。問い合わせは同館(042・441・6150)。【平野美紀/デジタル報道センター】