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 ▽記憶遺産推薦 「引き揚げ記録」「百合文書」

  

 ―舞鶴の申請に携わった黒沢さんに聞く―

 2015年のユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界記憶遺産」登録に向けた国内候補2件は、ともに府内から選ばれた。政府申請の「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」と、舞鶴市が申請していた引き揚げ関連資料。舞鶴市の有識者会議会長として申請に携わった黒沢文貴・東京女子大教授(60)=日本近現代史=に選定の理由や今後の課題を聞いた。

 ――「舞鶴への生還 1945~1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録」が国内候補に選定され、まずはおめでとうございます。

 12日夜、市長から電話で連絡を受けた。選定されると信じていたが、本当によかった。外国人であるユネスコの人々に、引き揚げ関連資料には「世界的な重要性」があると理解してもらえると、ユネスコ国内委員会の先生方が考えられた結果ではないか。

 ――「世界的な重要性」とは、具体的にはどんな点でしょうか。

 「白樺(しら・かば)日誌」(シベリアでシラカバの樹皮に煤(すす)をインク代わりに書いた日記)に代表されるように、唯一無二の希少性のあるオリジナルの資料がある。抑留者の手紙、国内で待つ家族の思い、抑留体験を描いた絵画など、資料がバラエティーに富んでいることも舞鶴の特徴だった。

 ――中国、韓国の動きなど、世界記憶遺産は国際的に「政争の具」となっているとの指摘もあります。引き揚げ関連資料がそのように受け止められてしまう懸念はありませんか。

 一般的にいって、近現代の戦争に関する資料は、どうしても加害者、被害者という問題が出てくるので、審査は難しいと思う。しかし、舞鶴市の申請書では、戦争によって引き起こされた惨禍ではあるが、非人道的な逆境の中で生き抜く力や家族愛など、人類に普遍的なものが現れているという点を特に強調した。相手国で一番問題になると思われたロシアについては、実現はしなかったが共同申請の話もあったぐらいで、問題はないと思う。

 ――今後の舞鶴市はどんな取り組みが必要でしょうか。

 登録されると舞鶴引揚(ひき・あげ)記念館への来館者も増えるし、学術的にも注目されるので、応えられる体制を作らなければならない。抑留や引き揚げについての学術的な研究はこれからで、これを契機に進んでいけばいい。各地から資料の展示希望も寄せられるだろうし、記念館の機能強化が必要だ。

  ◇府舎に懸垂幕

 ユネスコの世界記憶遺産の国内候補に舞鶴市の引き揚げ関連資料が選ばれたことを受け、市は13日、市役所に選定を知らせる懸垂幕を掲げた。

 懸垂幕は縦11メートル、横1・1メートル。「御礼 世界記憶遺産国内候補に決定!!」と書かれており、昨年からある登録を目指す懸垂幕の右側に掲げられた。掲揚前にセレモニーがあり、多々見良三市長が職員約100人を前に選定を報告、大きな拍手を受けた。

 市は選定報告のポスターも市内の公共施設に掲示する。16日には舞鶴引揚(ひきあげ)記念館のホームページの英語版もアップする。

  ■評価のポイント

 12日の日本ユネスコ国内委員会の文化活動小委員会で、評価されたポイントは次の通り。

 【舞鶴への生還 1945~1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録】

 ○舞鶴市の文化財にも指定され、それに対応する保存管理がなされており、2014年からの施設整備が予定されている。

 ○舞鶴市と姉妹都市であるロシア・ナホトカ市の理解と協力があるなど、より広い視点から世界的な重要性が説明されている。

 ○絵画、日記、手紙など記録媒体の多様性は評価できる。

 ○すでに公開は実施され、デジタル化等の作業が進められていることが示されている。

 【東寺百合文書】

 ○和紙に墨書、桐(きり)箱保管という形態が、保存性の点でも、文書保管の点でも非常に有益であり、日本文化の優れた点を示す良い事例である。

 ○保存・管理体制がほかの案件に比べて一層優れている。

 ○全点のデジタル化が完了し、ウェブ上で公開されている。