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医学部新設 3陣営「強み/弱み」 あす文科省構想審査スタート

 東北への大学医学部新設に向け、文部科学省の構想審査が16日始まる。新医学部の運営主体に選ばれるのはどの団体か。新設に名乗りを上げている「東北薬科大」(仙台市青葉区)、「一般財団法人脳神経疾患研究所」(福島県郡山市)、「宮城県」の「強み」と「弱み」を探ってみた。
 3団体は、いずれも2016年4月の開学を目指し申請した。有識者でつくる審査会は「条件」「趣旨」「実現可能性」を基準に書類審査やヒアリングを行い、医学部を運営するのに最もふさわしい1団体を選定。最終的には文科、厚生労働、復興の3大臣が話し合って決定する。

◎東北薬科大/理事長に人脈/研究第一主義

 既に付属の総合病院があり、医学部と同じ6年制の薬学教育を実践してきた実績を強調する。薬学との融合を盛り込んだ構想も独自性がある。
 多くの関係者は「高柳元明理事長の知見と人脈こそ最大の強み」とみる。高柳理事長は、大学や学部の設置許認可権を握る文科省の大学設置審で長年、分科会委員を歴任しており、高等教育行政への造詣は深く、影響力も大きい。
 半面「長い歴史の中で培ってきた関係」と公言する東北大医学部との近さは要注意。「研究第一主義」の東北大は、文科省が新医学部の趣旨に掲げた「臨床重視」と対極にある。「近い関係」を審査会がどう評価するかは未知数だ。

◎脳神経疾患研/住民の熱心さ/法人設立まだ

 多様な医療機関を傘下に持ち、学生の実習機関などとして活用することも考えられる。中でも、約100億円を投じて2008年にオープンした「南東北がん陽子線治療センター」は新医学部の目玉になり得る。
 地元の福島県が原発事故に見舞われたこともあり、構想は放射線医療や災害医療の重点化を打ち出した。市民団体が広範に署名活動を展開するなど地域住民の熱意も好材料だ。
 大学の名称を「国際復興記念大学」として震災復興を前面に押し出すが、大学法人を一から設立する計画だけに実現可能性が厳しく問われそう。福島県立医大を運営する県は支援に消極的な姿勢を示している。

◎宮城県/首相と関係密/構想一夜漬け

 そもそも東北への医学部新設は、村井嘉浩知事が安倍晋三首相に直接働き掛け、首相も日本医師会などの反発を押し切って決めた。両者の信頼関係は強固だ。
 全面支援を表明した財団法人厚生会仙台厚生病院(仙台市青葉区)の存在も大きい。教員医師の確保策には、首都圏や西日本に独自の医師供給ルートを持つ厚生病院がノウハウを提供するとみられる。
 ただ設置主体に「県立医科大」と「宮城大医学部」を併記するなど一夜漬けの構想は練り込み不足が否めない。「栗原キャンパス構想」も採算性をめぐって評価が分かれる。あえて医療過疎地へと進出する決断が吉と出るか凶と出るかは予断を許さない。


2014年06月15日日曜日

関連ページ: 広域 政治・行政 特集

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