
ネパール・パタン市のパグマティ川周辺には、初潮前の幼い少女が、
クマリと呼ばれる生きた女神として選ばれ崇拝される、ミステリアスな伝統がある。
(画像:Oddity Central)
伝統によれば、ネワール族の金銀細工カーストに属している幼い少女にヒンズー教の破壊の女神ドゥルガーが宿り、その子がクマリに選ばれる。
クマリは絶大な崇拝力を持っており、何千人ものネパールのヒンズー教徒と仏教徒が、守護神としてクマリを崇拝する。
クマリに選ばれる少女は、クマリが備えているべき30近くの条件をクリアしなくてはならない。
まずは、クマリに相応しい身体的特徴を備えているか審査される―ほら貝のように細い首、牛のような優しい目…まだまだある。
身体的特徴がクリアできたら、次は幼い少女にとっては過酷なテストをクリアしなくてはならない。
テストの一つを例に挙げると、少女は動物の頭が複数置かれ、マスクをした男が踊る暗闇の部屋の中に放置され、その反応を審査される。
また、複数あるアイテムの中から、クマリ前任者が身に着けていたものを正しく言い当てることも条件の一つに挙げられている。
これは、チベット仏教のダライ・ダマ後任者を選ぶプロセスに類似している。
全ての条件をクリアしてクマリに選出された少女は、今まで住んでいた家を出て、家族と一緒にクマリの館で生活をする。ここで少女は、貴族のような待遇を受ける。
クマリは館の中で完璧に守られ、学校にも行かず、人前に姿を晒すのは、特別な儀式の時のみだ。館への参拝料を支払った者だけが、ほんの一瞬、特別な椅子に座っているクマリの顔を見ることができる。
クマリは地に足を付けることが許されず、どこへいくにも、特別な椅子が備え付けられた神輿に載せて運ばれる。
この生活が、初潮を迎えるまで続く。
初潮を迎えると、クマリを退任するための12日間の特別な儀式が執り行われる。この儀式の後、少女はようやく地に足を付けて自分で歩くことが許され、他の子供達と同じように学校へ通うことができる。
今までまったく歩いてこなかったため、クマリを退任した少女たちは皆足が弱く、歩行困難であることが多い。
5歳~15歳までをクマリとして過ごしたチャニラさん(19)は、次のように振り返る。
「(クマリから普通の生活への)移行は、チャレンジでした。それまではいつも神輿で運ばれていたので、きちんと歩くことができませんでした。外の生活は、私にとっては完全に不思議なものでした。」
多感な子供時代を外の世界と隔離して過ごさせ、歩行困難にまで陥らせてしまうクマリの制度は、幼児虐待に当たるとして、人権団体は非難している。
2008年には、最高裁が、クマリは文化的・宗教的に重要であるとしながらも、それにより少女達から教育の機会を奪う権限はないとして、クマリにも教育を受けさせるよう命令を下した。
そのため、現在では近くの学校が、クマリのために教育を提供している。
チャニラさんは、クマリ退任後の生活で様々な困難に直面したが、それでも、かつてクマリだったことを誇りに思っている。
「クマリになることは、私自身と家族にとって大きな誇りです。ネパールはまだまだ男性主義の社会ですが、ここでは少女が女神として崇拝されるのです。女性として、私はそのことを誇りに思います。」
チャニラさんは、元クマリの中で初めて高校卒業資格を手にし、今は大学で学んでいる。
「かつては、元クマリは結婚のサポートを受けられませんでしたが、今では結婚している元クマリもいます。社会は、変わりつつあります。」
【記事:りょーこ】
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