(2014年6月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
エアバスの「A350」型機の飛行テストは比較的順調だが・・・〔AFPBB News〕
エアバスの最高経営責任者(CEO)のファブリス・ブレジエ氏は、エミレーツ航空が160億ドル相当の新型旅客機「A350」70機の発注をキャンセルしたことについて、平静を装ってみせた。
これはエアバス史上最大の発注取り消しだが、ブレジエ氏は11日夜の記者団との夕食会で、エミレーツの決断はエアバスに「負の影響を全く与えない」と強調した。「これが我々にとって問題となるか? 答えは明らかに『ノー』だ・・・(だが)エミレーツは最上級の顧客であり、A350を運航してくれた方がいいため、良いことだとは思っていない」
エアバスにとって、A350の顧客としてエミレーツを失うことは、同社の長距離機戦略――特にエアバスがボーイングの後塵を拝しているワイドボディの双発ジェット機という利幅が厚い市場での戦略――に厄介なスポットライトを当てる。
急成長するエミレーツの発注キャンセルは、商用ジェット機産業の景気悪化の兆候があるかどうかという大きな問題も投げかける。もしそうであれば、エアバスとボーイングはこれほどの数の航空機の生産をやめざるを得なくなる。
野心的なスケジュールを達成できるか?
だが、ブレジエ氏にとって最も差し迫った課題は、A350を年末までに運航開始に持ち込む野心的なスケジュールを達成し、その後、生産台数を増やすことができるかどうか、だ。
A350はエアバスの商用機事業における唯一最大のリスクだ。A350の機体は、燃料消費を減らすためにアルミニウムの代わりに主に軽い炭素繊維複合素材で作られており、技術面で大きな変化があるからだ。
1年近く前に始まった飛行テスト計画は比較的スムーズに進んでおり、エアバスは今秋に規制当局からA350の認可を得たいと考えている。
より大きな課題は、1号機がカタール航空に納入された後に訪れるかもしれない。エアバスはその後、2018年までにA350の生産台数を月間10機に増やそうとしているためだ。
エアバスは、増産計画に対応するサプライヤーの能力を綿密に監視しており、ブレジエ氏は多くのサプライヤーは堅調だと述べたが、まだ問題を抱えている企業もある。「我々はこのリスクを軽減するために懸命に取り組んでいる」。ブレジエ氏はエアバスが毎年開催するメディア向けの技術イベントで本紙(英フィナンシャル・タイムズ)にこう語った。