本記事は6月6日付フィスコ企業調査レポート(サン電子)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 柴田 郁夫
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情報通信分野の成長市場でグローバル展開
サン電子<6736>は、情報通信関連事業とエンターテインメント関連事業を2本柱とするIT機器メーカー。2007年に買収したセレブライト社(イスラエル)で展開する携帯電話関連機器が、米国を中心に急成長している。創業時から脈々と受け継がれるベンチャースピリッツと開発力を武器として、今後の需要拡大が見込めるM2M(Machine to Machine)事業など情報通信分野の成長市場でグローバル展開を図り、成長を加速する方針だ。
2014年3月期決算は、売上高が前期比30.2%増、営業利益が同39.1%増と大幅な増収増益となった。モバイルデータソリューション事業が、シェア90%を占める米国を中心に順調に伸長した。スマートフォンの普及を背景として、携帯電話販売店や犯罪捜査機関向けにモバイルデータトランスファー機器の需要が拡大していることが主因。国内でも大手キャリア1社による導入が開始された。また、パチンコ機メーカー向けの遊技台部品事業も、新機種の制御基板の販売が好調だった。
2015年3月期の業績見通しは、売上高が前期比2.8%増、営業利益が同13.9%増とやや控えめな伸び率に設定している。エンターテインメント関連事業の業績予想に読み切れない部分を踏まえた想定となっている。ただ、注力する情報通信関連事業では、モバイルデータソリューション事業及びM2M事業ともに2桁成長を維持し、同社の成長をけん引する見通しだ。
Check Point
●モバイルデータソリューション事業が急成長中
●成長事業のけん引で今期も増収増益の見通し
●ニッチ市場におけるグローバル展開で成長加速へ
会社沿革
情報通信、エンターテインメント関連で事業基盤を拡大
同社は、1971年4月にエレクトロニクス関連機器の製造、販売を目的として、愛知県江南市に設立された。当初は立石電機(現オムロン<6645>)の自動券売機の下請け製造からスタートしたが、大きく成長するきっかけとなったのは、1974年にパチンコホール用コンピュータシステムを業界で初めて開発したことである。当時のパチンコホールでは出玉の集計、管理などをすべて手作業で行っていたことから、省力化ニーズを取り込む形で、同社のコンピュータシステムの導入が進んだ。
また、同時期にパチンコ機メーカーとの取引も開始した。1970年頃から流行していた「雀球」と呼ばれるパチンコ機の制御回路部分に、業界で初めて米インテルのCPU「4004」を採用して大ヒットさせたことから注目を集めた。
1978年には、当時ブームとなっていたテーブル型の業務用ビデオゲームに参入。パチンコ業界向けのビジネスに続く2つ目の柱として、ゲーム業界への進出を果たした。1985年には任天堂<7974 >の「ファミコン」向けゲームソフトを「SUNSOFT」のブランド名で販売し、数々のヒット作品を生み出した。
そのほかにも、パソコンの草創期には、パソコンの開発だけでなくチップセット事業を立ち上げ、パソコンの品質向上や小型化などに貢献するチップセットの供給を開始した。また、パソコン通信の普及期に入る1985年には高性能な通信用モデムを開発し、一時はOEMを含めて国内でトップシェアを握った。