2014年06月15日

◆ W杯 コートジボワール戦(評価)

 W杯 コートジボワール戦で日本は敗北した。これをどう評価するか?

 ──

 《 本項は息抜き用のおしゃべりです。 》




 捏造論議なんかで頭が汚れると疲れる。そこで、スポーツのことでも談じよう。

 今回の敗戦では、「実力差がはっきりと出た」という評価が多いようだ。2ちゃんねるでもそういう声が大部分だ。
 また、数字でもデータが出ている。
  → ハフィントンポストのデータ分析

 ただ、過去の戦績を見ると、これほどの大差にはなっていない。
   ベルギー 2-2 コートジボワール (2014年03月)
   ベルギー 2-3 日本 (2013年11月)

 この戦績から見れば、次の結果になっていいはずだ。
   コートジボワール 2-3 日本

 ではなぜ、そうならなかったか?

 その理由はおそらく、次のことだ。
 「昨年11月に比べて、今の日本は大幅に弱くなっている。香川と本田は状態が上がっていない。長谷部と内田は病み上がり。柿谷と大迫は状態が大幅低下。向上したのは大久保だけ。全体的に大幅に低下」
 簡単に言えば、自業自得というか、自滅というか。……自分が勝手に弱くなって、こけているだけだ。
 つまり、戦術とは別に、個人レベルで、大幅に戦力ダウンしている。

 ──

 戦術的にはどうか? 
 今回の日本は、守備に負われていた。そのせいで消耗して、後半には息切れしてしまった。評論家も言っているし、選手自身も言っている。
 そこで試合中に、次のように批判する人もいた。
 「日本はこれまでやっていたように、守備ラインを上げるべきだ。守備重視でなく、攻撃重視にするべきだ。こんなに守備ばかりやっていると、いつかは失点するし、とても勝てない。1-0 で勝とうと思って、守備重視ではダメだ」
 こういう趣旨で語ったのは、朝日新聞のサッカー担当者。ツイッターでそうつぶやいていた。

 しかし、見ればわかるように、日本は「守備重視の戦術」を取ったのではない。ボール支配率からして、圧倒されていた。相手の攻撃力が強すぎるので、日本は不本意ながら守備の側に回らざるを得なかったのだ。だいたい、相手が強くてボールをもっているのに、日本が攻撃することなどはできない。また、相手が簡単に裏を取るのに、こちらが守備ラインを上げれば、ザルになって失点するだけだ。

 だから、私としては、高評価する。
 「日本が守備重視の方針を取って、守備ラインを下げたのは、賢明だった。あの状況で守備ラインを上げていれば、前半を 1-0 で終えることはできなかったはずだ。たぶん前半で2しんってんして、 1-2 になっていただろう。後半では 3失点して、0-3 になっていただろう。合計して、1-5 で負けていたはずだ。
 しかし実際には、守備ラインを下げた。だから、本来ならば 1-5 で負けているべきところを、1-3 で済ませた。その意味で、今回の守備重視の方針は、非常に妥当だったと言えるだろう。(それでも負けたのは実力のせい。)

 ──

 では、戦術の面で、まったく問題はなかったか? よく考えると、問題はあった。
 第1に、守備ラインを下げるという戦術を、練習してこなかったことだ。そのせいで、いきなり本番で守備重視の試合をすることになった。慣れないことをやったせいで、いろいろと不具合が出た。
 第2に、これまで強豪との親善試合を組んでこなかったことだ。特に最近は、弱い相手とばかり組んでいて、全勝してきた。これは、4年前と正反対だ。(なお、4年前は、親善試合で全敗していた。そのせいで、「攻撃重視」の方針を改めて、「守備重視」の方向に転じた。おかげで、W杯の前に、守備重視の練習をたっぷりとやることができた。)
 第3に、守備重視のカウンター戦法を取らなかったことだ。具体的に言えば、「青山のロングパスと、大久保が裏に出る動き」である。これが有効であることは、ザンビア戦で判明している。だから、この方針を取れば良かった。なのに、青山でなく遠藤を出したから、この方針をとれなかった。

 ──

 最後の点が重要だ。仮に青山を出していれば、カウンター戦法を取ることができ。とすれば、相手はカウンター戦法を警戒して、守備ラインを下げざるを得なかったはずだ。(もし守備ラインを上げれば、カウンターを食らうからだ。)
 この意味で、遠藤を投入したことは、「カウンター戦法を採らない」と宣言したに等しい。結果的に、相手は守備ラインを存分に上げることができた。かくて、守備ラインを上げるという戦法を、日本が取るかわりに、相手が取ることになった。
 遠藤投入を見るや、コートジボワールはすぐに戦い方を変える。ジェルビーニョを再び右サイド、日本の左サイド側に戻し、徹底的に裏を狙わせている。先程は守備の負担を減らすために日本の右サイド側にいた俊足の選手が狙い所をいよいよ定めたのだ。 一方で、遠藤を中心とした左サイドよりのパス攻撃を封じるため、中央左にカルー、ヤヤ・トゥレ、ボニと選手を集めている。 この勝負どころ、コートジボワールは右サイド、日本の左サイドに7人をかけ、結果的にここから点が生まれる。
( → ハフィントンポスト:試合分析

 上の文字のある箇所の図を見てもわかるように、相手は守備ラインを上げて、攻撃重視になっている。遠藤が出たからには、ロングパスよりも組み立て重視になるとわかっているからだ。カウンターの恐れはなく、十分に攻撃に専念することができる。
 こういして、「遠藤投入」により、「青山投入」の手を封じた日本は、カウンター戦法を封じることにもなった。かくて、相手に攻撃を好き勝手にやらせることになった。
 以上が、日本の戦術的な敗因だ。どうせなら、遠藤のかわりに青山を投入するべきだった。それならば、ひょっとして、1-0 で勝っていた可能性もある。うまく行けばカウンターが成功して、2-0 か 2-1 で勝っていたかもしれない。しかし実際には、点を欲張って、遠藤を投入した。これでは、カウンターの脅威がなくなるから、相手の波状攻撃を受けて、沈没するしかない。それが現実の結果だ。

 ──

 カウンター攻撃がいかに有効化ということは、オランダ・スペイン戦を見てもわかる。ロングパスを出したオランダのファンペルシーが、スペインの守備の裏を取って、ヘディングでゴールした。同じくロングパスから、ロッベンがゴールした。こういうふうに、カウンター攻撃は、強豪を相手には有効だ。相手が前のめりになればなるほど、カウンター攻撃が有効になる。
 ザックの方針は、スペインサッカーのような方針だが、その方針は、強い相手のカウンターを食らったらひとたまりもないのだ。そのことを、スペインは教える。
 その点、今回は守備重視だったから、カウンター攻撃を食らうことはなかった。しかし、こちらがカウンター攻撃を食わすこともなかった。どちらも組み立て重視のサッカーになった。そうなると、個人の力で劣る日本は、どうしようもなくなった。
 仮に日本がカウンター攻撃を見せつけていれば、戦術的に有利な立場になることもありえただろう。持ち駒が多くなったようなものだからだ。現実には、そういうことはなかった。どちらも手持ちの戦術カードは同数で、1枚だけだった。かくて日本は、戦術の幅が限られていたがゆえに、戦術的に有利な立場は取れず、個人の実力の差のままに、順当に負けてしまった。
 


 【 関連項目 】
 「守備重視じゃ W杯は勝てないよ。これじゃ来年は負けるね」
 という昨年の予想(2013年08月12日)を示しておく。
 ザック監督は「攻撃優先」という方針を取る。それは、弱小国や同等国を相手にするときには有効だ。しかし、ブラジルのような強豪国を相手にすると、完全に崩壊してしまうのだ。
 とすれば、強豪国を相手にするときには、「攻撃優先」という方針をやめて、「守備陣を固める」という戦術を採る必要がある。なのに、ザック監督はそのことがわからない。とすれば、来年のW杯でも、同じことが見られるだろう。コンフェデ杯の再現となるはずだ。攻撃陣は奮闘するだろうが、守備陣の崩壊で大量失点負けをするだろう。これは避けがたい運命だと言える。
( → サッカー監督:ザックとペトロビッチ

 現実には、守備重視の方針を取ったが、それは試合のなかで仕方なく守備重視になったものであるにすぎなかった。意図的に取った作戦としての守備重視ではなかった。その証拠に、カウンター戦法を採っていない。単に守備をするだけで、逆襲の可能性がない。これでは相手から見て、ちっとも怖くない。
 かくて日本は、昨年中に予想された通りに、順当に負けることになった。
 
 
posted by 管理人 at 23:14 | Comment(0) | 一般(雑学)2 このエントリーをはてなブックマークに追加
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