人手不足が深刻化する中、企業にとって優秀な人材の引き留めは頭の痛い課題だ。洋菓子製造・販売のモロゾフは短時間勤務でも正社員として処遇する「ST(ショートタイム)社員制度」を導入し、離職率を改善させた。一度の職種転換だけでなく、自分のワークライフバランスにあわせてフルタイム勤務とSTを何度でも行き来できる。柔軟な雇用形態が貴重な働き手のやる気を引き出している。
■短時間勤務OKで人材引き留め
「いらっしゃいませ。本日は焼き菓子がおすすめです」
東京駅に隣接する大丸東京店1階にあるモロゾフの販売店。店長の豊岡由美は店舗運営を取り仕切る現場責任者だが、いわゆる「フルタイム勤務」の正社員ではない。午前10時から午後5時まで働くST社員だ。
モロゾフは正社員の約半分となる年間960時間以上働けば、処遇を正社員とほぼ同じにする「ST社員制度」を導入している。「1日に4時間だけ」といった働き方ができ、福利厚生などの条件は正社員と同じ。パートからの昇格に加えて、フルタイムの正社員からSTへの転換も可能だ。
優秀な社員を引き留めたい――。モロゾフは長くこんな悩みを抱えていた。正社員で46%、パートでは97%が女性。どうしても結婚や出産を機に離職することが多いが、貴重な戦力を失うのは痛手だった。
特に販売の現場では、接客が上手な人材の有無で売上高が増減することもある。「優秀な販売員がいなくなった途端、売り上げが減ったところが何店もあった」(人事総務部長の藤本義久)。その改善策として導入したのがST社員だ。
豊岡はパート社員として入社したが、「仕事の幅を広げたい」と考えて、晴れて2011年に正社員へ昇格した。その結果、勤務時間は7時間から8時間に増加。たった1時間の違いだったが「食事の準備や掃除など家事の余裕がなくなった」と振り返る。仕事と家庭を両立させるため、今年からST社員に変わった。
豊岡は「勤務時間は少し短くなっただけだが、ゆっくり家事ができるようになった。当面フルタイムに戻るつもりはない」と話す。上司である東京支店第2係長、飯野忠は「仕事の質は以前と全く変わらない。店舗への影響も全くない」と、豊岡の新しい働き方に太鼓判を押す。
離職が相次いでいたことに対応し、モロゾフはST社員制度の導入前、パートの時給を上げたことがあった。しかし、効果は薄かった。お金はもちろん大切ではあるが、モロゾフは「より安心して働ける環境が必要ではないか」と考え、有望人材の引き留めに、育児や介護などを含めて「働き」全体について見直していった。
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