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コラム:世界に新たな対立軸、中国とブラジルが水面下で激突

2013年 05月 30日 15:11 JST
 
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国際政治学者イアン・ブレマー

国際政治の常識を信じる人なら、今月20日に行われた李克強・中国首相とインドのシン首相の会談は波乱含みと考えたことだろう。ヒマラヤ・カシミール地方の領有権問題をめぐって、世界最大の人口を抱える両国はわずか1カ月ほど前まで軍同士がにらみ合いを続けていた。当然、会談は厳しい結果に終わった――そう思っているのではないだろうか。

答えはノーだ。李首相はどうすれば2015年までに中印間の貿易額を1000億ドルまで拡大できるかに集中し、「ヒマラヤ山脈を越えた握手」をインドに求めた。実は中国とインドは、巷間で伝えられるほどには敵対してはいないのだ。

10億人以上の人口を抱えていること以外、中国とインドに共通点はほとんどない。経済的には概して相互補完的だが、両国には違いが見受けられる。インドは2000年代半ばの劇的な成長を再び実現させようと躍起になっているのに対して、中国は高い成長を維持することに傾注している。汚職と規制のためインドではインフラの整備があまり進んでいないが、中国は建設ラッシュが止まらない。低迷する国内市場に見切りをつけて中国で起業を目指すインド人が増えている一方、中国は、国内の人件費高騰を受け、安い労働力を求めて小規模製造拠点をインドへ移し始めた。

「国際政治通」と呼ばれる人たちは過去20年、膨張する中印両国の対決は避けられないと心配してきた。その根拠となっているのは、安全保障上の懸念や資源の確保といった問題だ。例えば、両国は世界人口のおよそ37%を抱えているにもかかわらず、淡水資源は世界の10.8%を有するに過ぎない。両国が敵対するのは、当然の帰結であるかのように思われてきたが、こうした心配は杞憂に過ぎない。

その一方で、一般にはあまり注目されていないのだが、緊張がふつふつと湧きあがっている2国間関係がある。それは中国とブラジルだ。両国とも堅調な経済成長を遂げており、国有企業が活発で、政府の力が極めて強い。

両国はこの先数十年にわたり、世界で同じような立ち位置にいることだろう。そして両国はともに、より多極的で公平な世界秩序の実現を主張している。つまり、より米国の関与が少ない世界であり、BRICSにとって望ましい世界だ。ところが両国の視点を比較してみると、通貨や気候変動から人権問題まで、ほとんどのテーマで共通点が少ないという実態が浮かび上がってくる。

表面的には、両国が協力し、経済で補完し合う理由は十二分にある。ブラジルは資源の一大輸出国であり、中国は一大消費国である。両国は国境を接しておらず、領有権問題もない。互いの国に投資もしている。中国政府や国有企業はブラジルで土地を購入し、現地企業に投資している。一方、ブラジルにとって中国は最大の貿易相手国であり、ブルームバーグによると昨年の両国間の貿易総額は755億ドルに上った。   続く...

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