維新の会:分党へ 「両代表の食い違い」棚上げのツケ回り

毎日新聞 2014年05月28日 21時50分(最終更新 05月29日 00時09分)

日本維新の会の石原慎太郎共同代表(左)と橋下徹共同代表
日本維新の会の石原慎太郎共同代表(左)と橋下徹共同代表

 日本維新の会の分党は、橋下徹共同代表に近い大阪系と石原慎太郎共同代表の旧太陽の党系が当初から抱えていた憲法観や原発政策など根本的な部分での溝が限界を超えたためだ。自民党の1強状態が続き、野党の存在感が薄れるなかで野党再編という課題に直面し、矛盾を乗り越えられなかった。橋下氏と石原氏の発信力の相乗作用を優先して食い違いを棚上げしてきたツケが最終的に回ってきた。

 「石原氏はもう気を使ってまでグループを作っていくことにお疲れになったのかと思う」。維新の松井一郎幹事長は記者団にこう語り、石原氏ら旧太陽の党系との調整に明け暮れた党運営を振り返った。太陽系の一人も「すっきりしてすがすがしい気持ちだ」と漏らす。大阪系も旧太陽系も合流から絶え間なく続くゴタゴタに疲れていた。太陽系の党幹部は「多数決で決めると党が分裂するから分党になった」と語る。

 今回の分裂の原因となっった憲法観の違いも以前からだ。2013年3月に承認された党綱領では、石原氏の要求で「絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法を大幅に改正」するとの復古調の表現が記載されていた。橋下氏が「修飾語だ。(選挙の際に)惑わされなくてもいい」と説明すると、石原氏は「大阪の本家は寝ぼけている」と批判した。

 それでも、これまでは橋下、石原両氏の個人的な信頼関係で決定的な亀裂を回避してきた。トルコなどへの原発輸出を可能とする原子力協定で、石原氏が党の反対方針に従わない姿勢を示した際は橋下氏と石原氏がたびたび協議。石原氏が譲歩し、採決を欠席するにとどめた。今回の会談でも石原氏は橋下氏に「橋下さんのことは好きだ」と語りかけた。橋下氏は会談前に松野頼久・国会議員団幹事長に「会談はうまくいく」と伝えていた。

 しかし、石原氏がこだわる「自主憲法制定」が、橋下氏の目指す野党再編の第一歩である結いの党との合流の障害となったことが、決定的な要因となった。橋下氏は24日夜に京都市内で結いの江田憲司代表と会談。江田氏が「自主憲法」に反対する姿勢を変えないことを確認していた。

 橋下氏は大阪都構想実現のカギとなる大阪府議選、大阪市議選が行われる来年の統一地方選に向けて、野党再編を維新の求心力回復の起爆剤とする必要があった。石原氏か、野党再編かという選択を迫られた橋下氏は「野党再編」を選んだ。【葛西大博、阿部亮介】

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