以前、体操教室をクビになった(という表現のほうがしっくりくる…笑)息子。(詳しくはこちらをご覧ください。)もう普通の習い事はきれいさっぱり諦め、隣町にある音楽療法の教室に通い始めました。この教室は、スペシャルニーズのある子どもたちのみが通う教室です。先生は総勢8~10名。この人数で息子一人を見ます。それだけ発達障害児を教えるのって「テク」と「知識」がいるんですよね。そして、いつも先生たち汗びっしょりです。
「やりたくないことは絶対やりたくない」という息子。それに対して、「まずは一つのことを終わらせてみる」「終わらせたら、楽しいことが待っている」という流れを作り出す先生たち。そして息子の頭の回転は超高速で、少しでも退屈させたらもうそこで騒ぎ出しますから、先生たち、とにかく間髪入れずに走り回ります。そりゃもうすごい。
レッスンの間じゅう、息子、いっぱい笑いました。そして初めて、山ほど褒められました。「○○くんは頭の回転が速いよ!すごいね!」「○○くん、飲み込みが早い!」「○○くん、いっぱい笑って、すごいね!」と。息子にとって、習い事で褒められるのは初めての経験。それまではずっと、「○○くん!!座って!!話を聞いて!!ふらふらしないで!!」と怒鳴られ続けてきたのですから。
レッスンが終わって帰ろうとしたときに、息子は「帰りたくない」と泣きました。彼にとって、きっとそれは夢のような体験だったのです。きちんと言われたことができた!そしてそのことをこんなに褒められた!家に帰ってからもずっと「おんがく、次はいついくの?」と私に何度も何度も聞いてきます。息子が、習い事関連で「次」を楽しみにすることなど、今まで決してありませんでした。
体操教室から帰ってきたときに、「僕はできない子なんだ」と私に言ったときの息子の目、私は決して忘れることはできません。どうして先生の言うことが聞けないのか、どうしてみんなと同じに動けないのか、私自身も情けなくて情けなくて、でも私以上に「どうして自分はこうなんだろう」と思っていたのは息子だったんですね、多分。
窓際のとっとちゃんで有名な黒柳徹子さん。彼女も発達障害だったと言われていて、公立の小学校を退学にさせられているんですね。その彼女を受け入れてくれたともえ学園という学校で、校長先生が彼女にこう言うのです。「きみは、本当はいい子なんだよ」と。黒柳徹子さんはこの言葉に支えられて、自己肯定感高く生きてこられたんだそうです。
発達障害児に限らず、子どもを褒めて育てるというのは大切だと言われます。そんなん当たり前のことです。でも、母親として毎日子どもと接していると、褒めて育てるってのがとても難しい(笑。私なんて、特に問題なく育ってる娘ですら、周りと比べてしまってしんどくなることがよくあります。 褒めてあげたいけど、「この程度でしらじらしく褒める自分がイヤだわ~」とか考えてしまって、それがまたストレスになっていったり。
だから私はこう考え直しました。確かに親が子どもを褒めて育てるのは大事。だけど、それはそんなに気負って考えるのはやめよう。それよりも、自分の子どもを褒めてくれる人がいる環境を、全力で探そう!
発達障害児を褒める環境を探し当てるのはそりゃ大変です。普通の子たちと混ざっていたら、「どうしてこんなことができないの!!」と叫びたくなるようなことばかり。当然、十派ひとからげで面倒を見ている先生も、あからさまに邪魔者扱いします。
発達障害児の「イイトコサガシ」は、それなりのテクと知識を持った人じゃないと無理なんです。専門家の凄さはそこなんです。どうやったって悪いトコが引き立ってしまう子どものイイトコが出てくるように動けることなんです。
発達障害児じゃなくてもなくてもこれは同じこと。子どもを褒めて育てるのは大変なことだから、子どもを褒めてくれる環境を探し出す、これが親の役割だと思えば、少し気が楽になります。
「自分は出来ない子なんだ」と二か月前にうなだれていた息子。「君はとても力のある子なんだよ」と先生がたに言われたことで、いろんなことに挑戦できるようになりました。あのままお尻を叩いて怒号を飛ばしながら体操教室を続けていたら、息子はどうなっていたのだろうと今になってみると恐ろしいです。
「君は本当は素晴らしい子なんだよ」
この言葉の魔法はすごい。親以外の人に言われることの価値は、そりゃもうすごいものがあります。
どんな子どもにも「イイトコ」はある。しらじらしい感じのする言葉ですが、それでもやっぱりそう信じて生きていきたいです。