被災地から安心な環境へ、赤ちゃんたちの避難を支援している「赤ちゃん一時避難プロジェクト」。発起人は早稲田(東京都新宿区)の商店街で活動するNPO法人「全国商店街まちづくり実行委員会」理事長の安井潤一郎さんです。安井さんは、商店街の取り組みで交流を深めていた南三陸町が津波に襲われたことを知り、居ても立ってもいられず支援のために動き始めました。
安井さんは緊急を要する母子支援を優先したいと考え、医療方面に強いNPO法人「日本ファーストエイドソサェティ(JFAS)」代表の岡野谷純さんと手を組みました。そして震災後10日目には、「アトム通貨実行委員会仙台支部(GANBARO↑MIYAGI/宮城復興支援センター)」、NPO法人「災害人道医療支援会(HuMA)」と、同プロジェクトの実行委員会を発足しました。
このプロジェクトに大きく貢献しているのが、新潟県湯沢町です。スキーリゾートで有名な越後湯沢には、ホテルや旅館、民宿が豊富にあります。上村清隆町長は、町内の宿泊施設へ被災者を無料で受け入れることを決め、震災1週間後に発表しました。国の制度を活用し、足りない分は町が全額負担する仕組みなので、被災者は食事付きの宿に無料で滞在できます。
湯沢町は、赤ちゃん一時避難プロジェクトにも空き室を用意しました。上村町長は、そこまでする理由をサラリと「恩返し」だと言います。数年前に新潟県の中越が見舞われた大地震の経験と感謝の気持ちを町長は決して忘れてはいなかったのです。さらに湯沢町は、当初4月25日までとしていた宿泊期限を、このたび7月25日まで一気に3カ月も延長しました。1人30日までという日数制限も廃止し、ゆっくりと骨休めできる環境を整えました。赤ちゃん一時避難プロジェクト実行委員会も、湯沢町の好意を受けてプロジェクト期間を延長しました。
発起人の安井さんは、「震災後すぐに専門知識を持つNPOが結集し、その呼び掛けに応じて自治体が動いてくれました。民間の『スピード』に行政の『信頼』が合わさると、良い活動ができますね」と、今回の官民協働プロジェクトの経過を振り返りました。