法人減税明記の「骨太の方針」の素案6月13日 18時55分
政府の経済財政諮問会議が開かれ、法人税の実効税率について、「数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す」と明記した、いわゆる「骨太の方針」の素案が示され、安倍総理大臣は今月27日の閣議決定に向けて与党との調整を急ぐよう指示しました。
13日、総理大臣官邸で開かれた経済財政諮問会議では、政府が今月下旬に閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」の素案が示されました。
それによりますと、焦点の法人税の実効税率の取り扱いについて、「日本の立地競争力を強化するとともに、わが国企業の競争力を高めることとし、その一環として法人実効税率を国際的に遜色ない水準に引き下げることを目指し、成長志向に重点を置いた法人税改革に着手する」としています。
そして、「数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す。この引き下げは、来年度から開始する」と明記しました。
そのうえで、引き下げに必要な財源については、「日本経済がデフレを脱却し、構造的に改善しつつあることを含めて、課税ベースの拡大等による恒久財源を確保することとし、年末に向けて議論を進め、具体案を得る」として、年末に向けて行われる来年度の税制改正の議論に先送りする形となりました。
このほか、素案では、人口の急激な減少による経済規模の縮小が懸念されることを踏まえ「50年後に1億人程度の安定した人口構造の保持を目指す」としたうえで、具体的な対策として「第3子以降の出産・育児・教育への重点的な支援など、これまでの少子化対策の延長線上にない政策を検討する」としています。
また、極めて厳しい状況にある財政運営については、健全化の指標となる「基礎的財政収支」を、2020年度までに黒字化する目標の達成に向けて、「来年度予算編成などを踏まえ、具体的な道筋を早期に明らかにできるよう検討を進める」としています。
会議の最後に、安倍総理大臣は、「素案には、経済再生と財政健全化の双方を実現していくためのさらなる取り組みなど、わが国が中長期に発展していくために着手すべき改革について盛り込むことができた。グローバル経済を勝ち抜く強い経済を作り、雇用を確保し、国民生活の向上につなげていきたい」と述べ、この素案を基に、今月27日の閣議決定に向けて、与党との調整を急ぐよう指示しました。
経団連と同友会が評価
安倍総理大臣が法人税の実効税率について、来年度から数年間で20%台に引き下げることを目指す考えを表明したことについて、経団連の榊原会長は「安倍総理大臣の決断を高く評価する。企業として中期的な展望を見据えたうえで、新たな投資や雇用、事業展開を決断しやすくなる。ぜひ、実質的な税負担が軽減される形で実行していただきたい」とコメントしています。また、経済同友会の長谷川代表幹事は「成長戦略の柱として歓迎したい。厳しい財政事情を鑑みて、安定的な代替財源の確保が必要であることは明白であり、今後、課税ベースを拡大する方法も検討すべきだ」とコメントしています。
法人税の実効税率とは
法人税は、所得税や消費税と並ぶ国の税収の柱の1つで「基幹税」と呼ばれ、今年度予算では税収全体の20%に当たるおよそ10兆円が見込まれています。
法人税の税収は景気の変動の影響を受けやすく、ピークの平成元年度には19兆円に上りましたが、リーマンショック後の平成21年度には6兆4000億円にまで落ち込みその後は9兆円から10兆円程度で推移しています。
法人税の実効税率は、国税の法人税に、地方税の法人事業税と法人住民税などを合わせて算出します。国税の法人税率は平成24年度に30%から今の25.5%に引き下げられました。
また、今年度の税制改正では企業の税負担を軽減して賃上げを促そうと、東日本大震災の復興財源として法人税額の10%を法人税に上乗せしていた「復興特別法人税」が1年前倒しで廃止されました。この結果、法人税の実効税率はことし4月からおよそ2.4%引き下げられ東京都に本社がある企業の場合、35.64%となっています。
財務省によりますと、法人税の実効税率を1%引き下げた場合の税収の減少額は、およそ4700億円で、仮に税率を5%引き下げた場合には、2兆3500億円の減収となる計算です。
日本の財政は極めて厳しい状況にあるだけに実効税率の引き下げにあたっては減収分を補う恒久的な財源を確保すべきだという意見も政府・与党内で根強くあります。
法人税の実効税率の国際比較
日本の法人税の実効税率は東京都に本社がある企業の場合、35.64%です。
世界各国と比べますとヨーロッパでは、▽フランスが33.33%、▽ドイツが29.59%、▽イギリスが23%。
アジアでは、▽中国が25%、▽韓国が24.2%、▽シンガポールが17%などとなっており、日本より低い水準となっています。一方、アメリカは州によって税率が異なりますが、カリフォルニア州の場合、40.75%となっています。
日本の法人税の実効税率は主要な各国と比べて高いという指摘があり、政府内や産業界からは日本企業の競争力を高めたり海外からの投資を呼び込んだりするためにも税率を引き下げるべきだという意見が出ています。
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