私事ですが、ボイストレーニングに没頭していた時期があります。3~4年ほど前ですから、2010~2011年頃のことです。
ボイストレーニングの教本を買い集めたり、動画を視聴したり、「れみぼいす」(当時は「みくぼいす」)で質問したりと、ずいぶん熱中したものです。
今回から、ボイストレーニングで得た知識を、複数回に渡って書いてゆこうと思います。内容は、以下のものを考えています。
ボイストレーニングはなぜ必要かなぜボイストレーニング理論は混乱しているのか「地声」「表声」「裏声」「実声」について「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」「アクート」についてビブラートについてボイストレーニング教本・動画比較
現時点で書くことを決めている内容はこの六つですが、内容を分割したり、新たに内容を増やす可能性もありますので、6記事とは限りません。
追記: 当初は六記事の予定でしたが、その倍以上の十五記事になりました。詳しくは、後述の「各回の内容解説」をお読みください。
内容について
初めに断っておきたいのですが、内容は、理論的な面に偏り、実践的な面は少なくなると思われます。ですので、実践的な内容を期待されている方にとっては期待外れかもしれません。
追記: 第十五回に少し実践的な内容を書いておきました。
例えば、「ミドルボイスのときの声帯の状態」などについて考察しますが、「どうすれば実際にミドルボイスを出せるか」については考察しないというか、できません。人によってコンディションもトレーニングの習熟も全く違いますから、文章だけで「こうすればミドルボイスが出せます」などと決めつけられないからです。
ただ、実戦的な内容を期待する人にとっても、読んで損はない記事だと思います。世間には誤った知識を流布するボイストレーナーやWebサイトに溢れていますから、それを見抜き、正しいボイストレーニングを身につけるために、理論的知識を身につけておくのは重要です。誤った知識に流されて、誤った練習を積み重ねていては時間のむだです。
当ボイストレーニング論の「強み」
就職活動の自己PRのようで恐縮ですが、当ボイストレーニング論がどういう「強み」を持っているのかを書いておこうと思います。
世の中にはボイストレーニング本・Webサイト・ブログ・動画が大量に存在しています。当ブログのボイストレーニング論もその一つですが、世の中に存在するほとんどのものに比べ、当ブログは以下の「強み」を持っているといえます。
- 定義の正確さにこだわる
- 巷のボイストレーニング論のほとんどが犯している過ちの一つが、概念の正確な定義を行わずに議論を行っていることです。「地声」「裏声」「ヘッドボイス」こういった曖昧な概念を、その意味をきちんと検討することもせず議論をしています。
- こういったいい加減な議論に警鐘を鳴らすべく、当ボイストレーニングでは概念の正確な定義にこだわっています。第三回で「地声」「裏声」、第四回で「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」の定義について詳しく考察しているのはそのためです。これにより、従来のボイストレーニング論にありがちな「人によっていっていることが違いすぎて、どれが正しいのか分からない」ということは避けられているかと思います。
- 科学的な記述に重きを置いている
- 巷のボイストレーニング論が犯す過ちがもう一つあります。非科学的な説明が多いことです。「地声と裏声を混ぜる」「裏声にエッジボイスを混ぜる」といった記述がその典型です。どちらも物理的にありえないことなのですが、こうした記述が何となく受け入れられており、ボイストレーナーでもこんなことを口にする人間がいます。
- 当ブログではこういった非科学的な記述をやめ、極力科学的な記述をするように努めています。
- 音源・映像を大量に掲載している
- ボイストレーニングでは、理論だけを説明しても分かりづらいので、「実際の歌ではどのように使われているか」を示すことが重要です。これは当然といえば当然ですが、音源を豊富に載せている教本やWebサイトは意外と少ないものです。
- 当ボイストレーニングでは音源や映像による説明を重視し、様々な音源・映像を引用しながら説明致します。また、巷のボイストレーニング論が一つのジャンルに偏りがち(例えば、HR/HMのボイストレーニング論ならHR/HM以外の音源をほとんど取り扱わない)であることに疑問を抱き、オペラ・合唱・歌謡曲・演歌・ハードロック・メタルなど、様々な分野から引用しました。
- 特に第七回では多くの歌手の「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」について、第十回では多くの歌手の「ヴィブラート」について、音源や映像を交えて考察しました。
- 他のボイストレーニング教本・Webサイト・ブログに対する批判を行っている
- ボイストレーニングとは不思議な世界でして、様々な立場をとる人間がいるにも関わらず、他の立場を批判する活動がほとんど見られません。例えば、弓場メソッドの立場の人が高田・ロジャーの立場の人を批判するといったことはめったになく、「概念の定義や考え方が違うのだから人それぞれ、相手の立場は批判せず」という感じで棲み分けが起こっています。
- 当ブログでは第十回・第十一回・第十二回・第十三回の三回に分けて、巷に出回るボイストレーニング本・動画・サイト・ブログの内容を批判的に検討しました。本については第十一回、動画については第十二回、サイト・ブログについては第十三回で取り上げていますので、ご自身の関心にあわせてお読みください。
- 「ベル・カント唱法」とポップスのボイストレーニング論の比較を行う
- ボイストレーニングには大きく分けて西洋クラシック音楽向けのもの(いわゆる「ベル・カント唱法」)とポップス向けのものがあります。この両者は二項対立の図式で語られることが多いように思いますが、きちんと比較考察を行った記事はほとんど見られません。「クラシックとポップスでは発声が違う」といった曖昧な記述に終わることがほとんどです。
- 当ブログでは、第六回で「ベル・カント唱法」とポップスの歌唱法を比較し、その共通点や相違点を洗い出すことに努めました。クラシック畑の人にもポップス畑の人にも役に立つ内容となっています。
- 「六声区論」を主張する
- 第五回で、「六声論」というものを主張しました。「地声」「裏声」で二種類、「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」で三種類なので、二×三=六種類の「声区」が存在するという考え方です。
- 従来のボイストレーニング論では「二声区」論か「三声区」論をとることが多いのですが、この二つは理論的に不十分な立場です。「二声区」では「ミドルボイス」や「ヘッドボイス」、「三声区」論では「地声」や「裏声」がどのようなものか説明できないからです。当ブログではこの二つを組みあわせ、「六声区」論を提唱しました。
- 「喉のへこみ」を指摘する
- 詳しくは第十五回に書きましたが、「ミドルボイス」や「ヘッドボイス」を発声する際、喉に「へこみ」が発生する歌手がたくさんいらっしゃいます。私がこのことに気がついたのが3年ほど前ですが、3年前も現在も、このことをきちんと指摘しているボイストレーニング論をほとんど見たことがありません。この現象のメカニズムは詳しくは分かりませんが、「ミドルボイス」「ヘッドボイス」習得にあたって重要な現象だと考えられるので、当ブログで指摘しました。
想定する読者層
本記事では、ほとんど予備知識がない初心者の方でも読めるように書くつもりです。
ただ、初心者を想定しているとはいえ、安易で雑な議論を展開するつもりはありません。ボイストレーニングの教本やWebサイトにある雑な説明とは一線を画し、あくまで厳密な議論を心がけますので、難しい箇所もあります。
また、ボイストレーニングの話を掘り下げると、声帯などの話も加わってきます。可能な限り分かりやすく説明するつもりですが、どうしても難しい部分が出てくることをご了承ください。
追記: 第一回と第二回は初心者向けの総論になっているので、既に一定の知識をお持ちの方は、第三回からお読みいただいても構いません。
各回の内容解説
- ボイストレーニングはなぜ必要か──ボイストレーニング論その一
- ボイストレーニング理論はなぜ混乱しているのか──ボイストレーニング論その二
- 「地声」「裏声」とは何か──ボイストレーニング論その三
- 「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」とは何か──ボイストレーニング論その四
- 「声区」に関する理論と誤解──ボイストレーニング論その五
- 「ベル・カント唱法」とポップスの「声区」論──ボイストレーニング論その六
- 歌手の「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」比較──ボイストレーニング論その七
- 「ヴィブラート」とは何か──ボイストレーニング論その八
- 「ヴィブラート」に関する理論──ボイストレーニング論その九
- ボイストレーニング理論比較──ボイストレーニング論その十
- ボイストレーニング教本比較──ボイストレーニング論その十一
- ボイストレーニング動画比較──ボイストレーニング論その十二
- ボイストレーニングサイト・ブログ比較──ボイストレーニング論その十三
- ボイストレーニングにありがちな誤り・誤解・疑問──ボイストレーニング論その十四
- 「ミドルボイス」「ヘッドボイス」を出すためには──ボイストレーニング論その十五
全十五回の記事一覧を上に載せてあります。
一つ一つの記事が長い上に、十五もの記事を全部読むのは大変ですので、ここで各回の大まかな内容解説をします。これをお読みになった上で、自分の欲しい情報がどこに載っているかをご確認ください。
全十五回の内容を大きく分けると、
- 第一回・第二回
- 総論
- 第三回・第四回・第五回
- 「地声」「裏声」・「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」・「声区」について
- 第六回
- クラシック音楽とポップスの歌唱法比較
- 第七回
- 音源解説
- 第八回・第九回
- 「ヴィブラート」について
- 第十回・第十一回・第十二回・第十三回
- ボイストレーニング教本・動画・サイト・ブログの比較考察
- 第十四回
- ボイストレーニングに関する疑問点・誤解のピックアップ
- 第十五回
- 「ミドルボイス」「ヘッドボイス」の練習方法
という具合になります。
- ボイストレーニング初心者の方
- 第一回をどうぞ。そもそもボイストレーニングとは何なのか、なぜ必要なのかといった基本的な話から始めているので、まずはこれをお読みください。
- 理論的な疑問を解決したい方
- 第十四回をお読みください。第十四回は今までの記事のまとめですので、ここを読んでも疑問が解決しない場合は、各回の当該箇所をお読みください。
- 「地声」「裏声」について知りたい方は第三回、「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」について知りたい方は第四回、「声区」について知りたい方は第五回をお読みください。
- 「ベル・カント唱法」について知りたい方は第六回、「ヴィブラート」について知りたい方は第八回と第九回をお読みください。
- 「ミドルボイス」「ヘッドボイス」の音源を聞きたい方
- 第七回をご覧ください。大量に音源を載せてあります。
- 「ミドルボイス(地声)」の出し方を知りたい方
- 第十五回をお読みになられるのがよいでしょう。これが解決に繋がるか分かりませんが、私なりの練習方法をしめしておきました。
- ボイストレーニング本・動画・サイト・ブログについて知りたい方
- 第十回・第十一回・第十二回・第十三回をご覧ください。巷に出回るボイストレーニング本・動画・サイト・ブログの内容が本当に正しいのか検討しています。
- 本については第十一回、動画については第十二回、サイト・ブログについては第十三回で取り上げていますので、ご自身の関心にあわせてお読みください。