さて、みなさん、こんにちは。本日は、先日行われたブラジルワールドカップの開幕戦、ブラジル対クロアチア戦での誤審騒動についても、ちょっと触れておこうと思います。
誤審!?西村主審のPK判定スロー検証/2014ブラジルワールドカップ ブラジ ...
動画も貼っときますが、このシーンです。非常に微妙なシーンでして、フレッジのシュミレーションにも取れますし、ロブレンが手をかけてるのでPKにも取れます。裁量次第というシーンです。流すことも勿論できました。
で、ここで問題にしたいのは、審判ってのは完全にフェアにジャッジしてるかってーと、そうでもないという話です。これは八百長とか、そっちの黒い話じゃなくて、審判にはある種のバイアスがかかってるんです。これはプロスポーツの世界で幅広く認められる現象です。
審判の不文律
まず、この話になります。
- 作者: トビアス・J・モスコウィッツ,L・ジョン・ワーサイム,望月衛
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/06/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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こっちの本の第一章に「ホイッスルを飲み込む」ってのがあります。こいつは、スポーツにおける不作為バイアスについて扱った章でして、NBAからMLB,NFL、NHL、サッカーなんかにおける審判の不作為バイアスについて幅広く取り上げています。
この章で、NBAの審判テッド・バーンハートの発言が載っているのですが、
「出来る限り、選手たちに勝敗の行方を決めさせないといけない」
「この仕事で最初に学ぶことのひとつがそれだ。ファンは、ぼくたち審判を見に来ているんじゃない。選手を見に来ているんだ」
って奴です。これは、紛れもないバイアスです。審判だって人間ですから、誤審をします。けれど、そういう誤審はランダムにおきるモンですから、選手が誤審を利用することは出来ません。ところが、こういうバイアスを審判がもっている場合は別で、選手はこの仕組みを利用することで自分に有利な判定を引き出すことが出来るわけです。
にも関わらず、NBAの審判の不文律は「出来る限り、選手たちに勝敗の行方を決めさせないといけない」でして、これはフェアで偏見のない判定が求められるはずの審判の性質と逆行してるわけです。
この不文律があるせいで、NBAにおいて、審判の判断の要素が大きいオフェンス・ファールは延長戦になると40%は取られにくくなるそうです。
こういった傾向は、アメリカンスポーツのほぼ全てにおいて見られる傾向で、サッカーでも試合の終盤になるとファール、オフサイド、フリーキックが減っていきます。
じゃあ、なんで、審判はこんなバイアス持ってるの?というと、そりゃファンのせいです。ファンは、試合が盛り上がってる時に審判に出張ってきて欲しくないんです。審判がつまんない反則取った事で試合の行く末が決まってしまうなんて、つまんないじゃないですか。ファンは選手のプレー見にくるわけで、審判見に来ているわけじゃないんです。
上記の本には、こういった不作為バイアスが働いたせいで、試合の結果が歪められたってケースがいくつも例として掲載されてます。
審判ってのは基本的に「競った試合の終盤では試合に関わりを持ちたくない」ってのがあります。自分の判定で、試合の行く末が決まってしまうような事は出来るだけ避けようとするモンなんです。
タック・ルール・ゲーム
これ、有名な話ですけど、NFLで起こった有名な事件として
ってのがあります。上記の本でも扱われていますが、wikipediaから引用すると
タック・ルール・ゲームという通称はこの試合を大きく左右した一つのプレーに由来する。レイダーズがリードして迎えた試合終盤、レイダーズのCBチャールズ・ウッドソンがペイトリオッツのQBトム・ブレイディをサックしさらにファンブルを誘った。これをレイダーズ側がリカバーしたためターンオーバーとなり雌雄は決したかと思われたが、ビデオ判定の結果ファンブルではなくパス・インコンプリートであると判定が覆り、再びペイトリオッツの攻撃となった。このドライブで同点に追いついたペイトリオッツはオーバータイムの末レイダーズを破り次のラウンドへと駒を進め、レイダーズはシーズンを終えた。
この時のパス・インコプリートの判定の根拠がタック・ルールだったので、このゲームはタック・ルール・ゲームと呼ばれてます。
ただ、このゲームの判定は本当に物議を呼び、
しかしタック・ルールの存在を知ってもなお、判定に賛同しない者は多かった。この試合はNFLネットワークの動画"Top 10 games of the decade"「00年代最高の試合トップ10」で第10位にランクされているが、コメンテーターは口をそろえて"terrible"「酷いコールだ。」と発言している[5]。また同じくNFLネットワークの動画"Top 10 controversial calls"「議論を呼んだ判定トップ10」では第2位に選ばれ、コメンテーターは"terrible call"と発言している[6]。レフェリーのコールマンはこの試合以降、2009年シーズン現在まで安全上の理由でレイダーズの試合には関わっていない。
又、wikipediaからの引用になりますが、レフェリーのコールマンは、安全上の理由でレイダースのゲームに関われなくなりました。タック・ルールなんてマイナーな反則を持ち出して、試合の結果を変えてしまった事はレイダースファンの怒りを買ったわけです。
この話、wikipediaの中で、オチまでついてるんですが、
多くのペイトリオッツファンは、これが1976年のお返しであると考えていた。当時スーパーボウル出場の有力候補であったペイトリオッツはプレーオフでレイダーズと対戦した。レギュラーシーズンではペイトリオッツが48-17と大勝しており、この試合もペイトリオッツが優位であると目されていた。しかしチームはレフェリーのベン・ドレイスによる不可解な判定もあり24-21で敗れていた。特に論議を呼んだのが、ペイトリオッツの勝利が大きく近づいたかと思われたプレーでペイトリオッツのNTレイ・"シュガー・ベアー"ハミルトンがレイダーズのQBケン・ステイブラーへのラフィング・ザ・パサーの反則を犯していたという判定であった。この試合に勝利したレイダーズはピッツバーグ・スティーラーズ、ミネソタ・バイキングスを破ってチーム史上初のスーパーボウル制覇を達成した(第11回スーパーボウル)。そのため多くのペイトリオッツファンはタック・ルール・ゲームでの勝利に大いに喜んだ。しかし1976年のチームをエースとして引っ張ったQBスティーブ・グローガンはこの勝利を純粋に喜ぶことはできなかったと語っている。
グローガンは「我々は間違いなくピッツバーグを倒すことができた。ミネソタもそこまで良いチームではなかった。だから我々はペイトリオッツ史上初のスーパーボウルチャンピオンになることができたはずなんだ。だが歴史は変えられない。もう終わってしまったことなんだ。人々は私の店に来てタック・ルール・ゲームについて話す。『レイダーズが報いを受けたぜ。スカッとしただろ。』と。だが私はこう言う。『ファンはそうだろう。しかし私と、私と共に戦った76年の仲間たちの心が晴れることは永遠にない。』 大事な物を奪われたんだ。嵌められたんだよ。」と語り、晴れることのない胸の内と、タック・ルール・ゲームによって自分たちの試合や無念が相殺されたと思われることへの憤りを吐露した[7]。
こんな話です。
この話を例としてあげるのは、「競った試合の終盤では審判は引っ込んでろ」「つまんない反則取って試合を台無しにするな」というのがファンと選手の心理だって話をしたいからです。試合の終盤、とくに競った試合の終盤だと、公平なジャッジでなく、審判に求められているのは、身も蓋もない話ですが、「引っ込んでろ」「試合の行方を選手に決めさせろ」なんです。
で、西村主審のPKの判定
話を今回の西村主審のPKに戻しますが、アレなんですけどね。今回のPK判定、とにかく欧州方面で受けが悪いです。欧州方面からぶっ叩かれており、この後、西村さんがクロアチア絡みの審判に選ばれることは無いと断言していい状態です。今後、彼がW杯で主審つとめる事は、ないんじゃねぇかなとも思います。そんくらい叩かれているので。
とにかくPK取った時間と展開が不味かったです。拮抗してたワールドカップ開幕戦、ブラジル対クロアチアの試合で、実質的に試合を決めてしまうPKを与えた訳ですからね。タック・ルール・ゲームの所で「競った試合の終盤では審判は引っ込んでろ」「つまんない反則取って試合を台無しにするな」ってのを強調しましたが、これも典型的な奴です。こいつは選手と観客が怒りを爆発させる典型例で、審判としてのキャリアを続けることが出来ないレベルのバッシング食らったりします。
今回の記事なんですが、西村主審のPK判定の是非とかの話をしたいんじゃなくて、W杯を観戦する人向けに、こういった審判の傾向について、お話しておきたいと思ったからなんす。
ブラジル対クロアチアの試合における西村主審のPK判定ってのは、正直言って、W杯みたいに注目度の高い大会では、実にレアな判定なんです。
基本的に、注目度の高い試合では、審判ってのは退場者を出さないよう、PKを与えないようにジャッジするモンなんです。だから、あのくらいのプレーだと、W杯の大概の試合では流されます。PKもらえません。とくに競った試合の後半だとね。日本代表の試合でも、あのくらいのプレーは頻発すると思いますけど、まずPKもらえないと思いますし、与えてももらえません。
審判のジャッジなんですが、ここまでW杯の試合、何試合か見ましたが、結構な割合で誤審がありました。メキシコ対カメルーン戦で二つ、スペイン対オランダで一つ、ゴールに直結する誤審がありました。
結局、審判は人間ですから、間違いをします。だから誤審もサッカーの一部です。それから、審判だって自分の身が可愛いですから、試合終盤になると、ファール、オフサイド、フリーキックなんかは取られにくくなります。疑惑のファウル、疑惑のオフサイド、疑惑のフリーキックとか、キャリアに関わる問題になりますから。
そんな訳ですので、この辺、割切るしかない部分があります。ちなみに、僕が例の試合の主審だったら、あのプレーは流します。基本的に、僕は自分の身が可愛いのです。W杯でもそういうジャッジを見る事は多いと思うんですけど、僕はそれでいいと思ってます。やっぱり「試合の結果は選手に決めさせろ」って思うので。それが完全に公平で偏見のないジャッジだとは限らないんですけどもね。取るべき反則を取らない事になる訳ですから。
色々ありますが、言いたい事は、こういうビッグな大会になると、競った試合では審判が些細な反則を流す傾向があるんで、そこは割切ってくださいな、という話なのでした。
こういう大会だと、審判には凄まじいプレッシャーがかかり、判定一つが命に関わったりします。だから、判定をするのでなく、判定をしない、という判断を下すようになるんです。何もしなくても叩かれる事は勿論あります。ただ、何かしでかした場合、バッシングの規模は比較にならないほど大きいんです。
西村主審は、ある意味じゃ根性太いです。あそこでPK取ったら、試合後、どんな展開になるかなんて明白ですからね。まあ、何も考えてなかったかもしれませんが。
今日はこのあたりで。ではでは。