2014年06月14日

コートジボワール戦前夜2014

 まだ出発していません。
 トーナメントの最後の最後まで付き合うために、初戦は回避したのです。ギリシャ戦からの参戦となります。

 もう半月も前の事だが、キプロス戦翌日に、某有名新聞社会面に登場させていただいた。記事全体は「50過ぎのサッカー狂が、強くなった代表チームに目を細めるさま」を描写しており、実物よりも随分と上品なおじさんとなっていた。不満はない。実際、私はこんなに立派なおじさんではないし、もっと下品な男なのだが。ただ、
「攻撃に才能あふれた選手が多い今回は歴代最強。ベスト4も夢じゃない」と声を弾ませた
は、いかがなものか。記者さんが「巷では『ベスト4の可能性もあるのではないか』と言われてますが、どう思いますか?」とおっしゃるので、「1次リーグ突破確率は70%、1/16ファイナル勝利は30%、イングランドならばある程度いけそうだが、ウルグアイはちょっと厳しい、準々決勝はブラジル来るから5%くらいでしょうか。すると0.7×0.3×0.05、準決勝進出の確率は1%!大会前の時点でベスト4確率1%も持っている国は、そうはないはずです。」と申し上げたのだが。確かにそれと別に、「これだけ攻撃ラインにこれだけタレントが揃うとは、俊輔、憲剛、豊田、原口と言った選手達を選考しないで済むのですから。」とも言ったな。確かに合わせると「攻撃に才能あふれた選手が多い今回は歴代最強。ベスト4も夢じゃない」になるか。恐れ入りました。

 確率は変動する。
 2002年、アルゼンチン、フランス、ウルグアイが予想外の事態で早期敗退。その結果1次リーグ終了時に、日本はトルコ、セネガル、スウェーデンのブロックを勝ち抜けば、ベスト4に進出できる事になった。今思えば、丁寧に戦えば、トルコ戦もセネガル戦も60%以上の確率で勝つ事ができたように思う。つまり、ベスト4進出確率は36%以上だった事になる。残念な事にフィリップが舞い上がってしまい、トルコに対し自滅的敗戦。あれはあれで、12年前の実力だったんだ。
 ここからは夢想の世界。もし、今大会に全盛期の井原、そこまで行かずとも全盛期の中澤がいれば。今回のチームの守備の強さは格段に違うはず。そうなれば、1次リーグ突破確率は80%、1/16ファイナル勝利は50%、準々決勝はブラジルが来ても20%になる、つまりベスト4進出確率は8%になる。いや、井原と中澤の2人がいて、さらに最前線に往時の釜本がいれば、1次リーグ突破確率は95%、1/16ファイナル勝利は80%、準々決勝はブラジルが来ても45%、ベスト4進出確率は34%、いや、今のチームにこの3人が加われば、冗談抜きでワールドカップ戴冠は現実のものとなる事だろう。「今のチームに井原、釜本、中澤が加わる」と言った瞬間に、夢物語になるのは間違いないが、これは大変な進歩なのだ。南アフリカ大会前に、日本代表の歴代ベスト11でワールドカップに臨むと言う夢想をしても、「優勝できるかも」等とは誰も言えなかったはず。歴代ベスト11をぶつければ、ワールドカップ優勝できるのではないか、と妄想できる国の数はそう多くないはずだ。この4年間の進歩は、ものすごく大きいのだ。

 強いチームが完成しつつある。
 現実的に攻撃力(能動的な仕掛けで敵を崩す能力)と言う視点では、もはや我々は世界屈指に近いものを持っている。昨年のオランダ戦、ベルギー戦。先日のコスタリカ戦、ザンビア戦。課題もなくはない。しかし、攻撃力と言う視点から考えると、敵がどのような守備を行おうが、我々の攻撃力を的確に止められるとは思えない。

 もちろん不安がない訳ではない。
 守備の不安定さ。これにはいくつも要因がある。第一に井原や中澤のような「格段の危機管理能力」を持ったタレントがいない事。第二に麻也や酒井高徳に代表される「おバカ」を相当頻度で演じるタレントの存在。そして、第三にボール奪取の球際の強さの欠如、確かに、第一、第二についてはそう簡単に改善できるものではない。しかし、第三は各選手の体調が整えば存分に改善できるはず。特に山口蛍がベストコンディションで機能すれば、不安な守備は相当なレベルで向上するはずだ。だからこそ、蛍の警告累積が心配になり、細貝不在が心配になる。でも、そんな事はザッケローニ氏は十分に承知しているはず、それでもエヒメッシをメンバに残したのだから、どんな秘密兵器構想があるのかワクワクもするのだが。
 攻撃力のレベルに不安はないが、どうしても敵堅守をこじ開けたい時はどうするのだろうか。絶対的エースの岡崎、経験豊富な大久保、シャープな技巧がパオロ・ロッシを思わせる柿谷、万能型として釜本を彷彿させる大迫。彼らを並べるためには、香川か本田をベンチに、あるいは後方に、下げなければならない。しかし、本田の体調が上がらなかったために、そのテストができていないのだ。いや、さっさと点を取ってリードし続ければよいのだが。

 ワールドカップが開幕して、4試合を見た。ブラジルもオランダもチリもメキシコもクロアチアも、大敗したスペインも、皆素敵だ。でも、日本の攻撃力は、彼らと遜色ない。いや、我々の攻撃力は他国とは全く異なる美しい彩りがある。世界中どこの誰にも自慢できる技巧と連係の冴えがある。そして、全選手の圧倒的な献身がある。
 4年前、ワールドカップ終了後、こんな文章を書いた。当時と比較して日本代表が格段の進歩を遂げた今でも、「ワールドカップとは必ず負ける大会である」と言う思いは変わっていない。ただ、「必ず負ける」と言う思いに、ほんのちょっとだが「悔しい思い」を感じられるようになってきた。ブラジルも、アルゼンチンも、ドイツも、ウルグアイも、皆我々よりも戦闘能力が高い事は認めなければならないだろう。
 でも、我々は彼らの喉笛に食いつき、僅かな隙を逃さなければ打ち破り得る戦闘能力を身につけた。本当の勝負は2次トーナメントなのだ。

 だからこそ。
 我々は1次リーグを抜け出さなければならない。そして、その確率は決して低くないと思っている。上記したように、私の予想では70%の確率で抜け出せると思っている。たとえ、ドログバやヤヤ・トゥーレがいても、まとわりつくような組織力で彼らを完封する事を。そして、我々の美しい攻撃力を見せつける事を。
 「必ず負けるワールドカップ」を満喫するためにも、まずはドログバに絶望を味合せなければならない。
posted by 武藤文雄 at 23:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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