集団的自衛権:新3要件、範囲拡大余地 解釈、政権が判断

毎日新聞 2014年06月13日 22時13分(最終更新 06月14日 01時26分)

 自民党の高村正彦副総裁は13日、集団的自衛権の行使容認を巡る与党協議会で、現行の「自衛権発動3要件」に代わる新3要件の私案を示した。他国への武力攻撃でも「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が覆されるおそれ」があれば武力行使を認める内容。政府高官は、この私案を基にすれば、公明党が主張する一部のみを容認する根拠にはなりえないとの見方を示した。「おそれ」があると政権が判断すれば武力行使が可能になり、行使の範囲が広がる懸念をはらんでいる。

 現行の3要件は(1)日本への急迫不正の侵害がある(2)侵害を排除するために他に適当な手段がない−−の両方を満たした場合、(3)必要最小限度の実力行使−−の範囲内で武力行使できると定めている。集団的自衛権の行使を可能とするには「日本への侵害」がなくても武力を使えるようにする必要がある。

 私案は現行の3要件の(2)と(3)はそのまま残し、(1)だけ書き換える。公明党が行使容認の根拠になり得るとみる1972年の政府見解の「国民の権利が根底から覆される急迫、不正の事態」を参考としつつ、「急迫、不正の事態」を「おそれ」に変更。高村氏は新3要件を「閣議決定の原案の核心部分だ」と強調した。

 ただ、公明党の憲法解釈変更の考え方は「国民の権利が覆される事態」が実際に起きた場合のみ、集団的自衛権の行使を認めるもの。これに対し、高村氏の私案は公明党の論拠を引用する一方で、「国民の権利が覆される事態」が現実には起きていなくても、そうした事態が起きる「おそれ」があると政権が判断すれば行使が認められる。

 自民党の与党協議メンバーは「米国へ向かうミサイルの迎撃は『国民の権利が覆された』後では意味がない。未然に防ぐには『おそれ』の段階で自衛権を発動すべきだ」と指摘。政府側にも、テロの脅威のように国民の権利が覆されるおそれがあると認定すれば、米国の「テロとの戦い」などに集団的自衛権行使で参加できることになるとの見方もある。

 このため、公明党内には、私案がそのまま閣議決定に反映された場合、集団的自衛権を行使する判断の幅が無制限に広がりかねないとの疑念がある。公明党の北側一雄副代表は新3要件について「一見して十分でない点がある」と指摘。党幹部の一人は「これは全然歯止めにならない」と、「おそれ」の表現変更を求める考えを示した。

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