自衛権発動の新3要件:首相、容認へ 解釈変更の実現優先

毎日新聞 2014年06月14日 00時55分(最終更新 06月14日 01時23分)

 自民党の高村正彦副総裁が13日の「安全保障法制の整備に関する与党協議会」に示した私案「自衛権発動の新3要件」は、公明党の一部容認論に配慮しつつも、柔軟な解釈の余地を残す案だ。与党協議の行方次第では、政府・自民党の「限定容認論」が当初想定していた行使容認の範囲が狭まる可能性があるが、安倍晋三首相は運用面の「実」よりも憲法解釈の変更を実現する「名」を優先し、受け入れる姿勢だ。

 協議会後、報告に来た高村氏らに首相は「その線でやってくれ」と私案を容認する姿勢を示した。

 首相が結論を出すことを急ぐのは、第1次政権で行使容認の検討を進めた際の「失敗」を意識しているからだとみられる。公明党が2007年7月の参院選前に結論を出さないよう求め、首相は受け入れたが、参院選惨敗後に体調を崩して退陣に追い込まれ、憲法解釈の変更は幻に終わった経緯がある。

 公明党は今回も、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態や国際協力の議論に時間をかけ、集団的自衛権に関する結論の先延ばしを狙った。しかし、首相は周辺に「できる時にやらなければならない」と語り、先送りに応じる姿勢は一切見せなかったという。

 行使容認の範囲を縮小する流れができつつあることについて、政府関係者は「異論はあるが政治が関わる話なので仕方がない。もっと行使を容認すべきだとの思いはある」と不満をこぼした。そのうえで「『根底から覆される』を根拠とすることで、集団的自衛権に関わる例として挙げた8事例ができないことにはならない」と語った。高村私案でも決定的な歯止めにはならず、安保環境の変化などを理由に徐々に広げていくことは可能との読みが首相側にはある。

 ただ、一部容認では首相が目指す日米同盟強化にどこまで資するかは不透明だ。外務省からは「米国は『限定的』をあまり好ましくないと思っている」(幹部)との声が漏れ始めている。

 米海軍トップのグリナート作戦部長は集団的自衛権に関し、米海軍の空母打撃群に自衛隊の艦船が参加することに期待を示している。しかし、高村私案の文脈では空母打撃群に自衛艦が参加することはできない。首相もそのことは織り込み済みで、既に5月15日の記者会見では「武力行使を目的に戦闘に参加することは決してない」と明言し、日米間のギャップをのぞかせた。

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