関東大震災:生々しい被災の記録フィルム 京大書庫で発見
毎日新聞 2014年06月14日 19時30分(最終更新 06月14日 19時50分)
京都大学大学院工学研究科(京都市左京区)の地下書庫で、1923(大正12)年9月1日に起きた関東大震災の被災状況を納めた記録映画のフィルムが見つかった。毎日新聞社の前身・大阪毎日新聞社から京都大に寄贈されたフィルムとみられる。当時異例の高層建築物だった12階建ての浅草・凌雲閣(りょううんかく)が損壊し、震災後に爆破処理される様子など、貴重な映像が含まれていた。専門家は「関東大震災関連でこれほど鮮明な映像はなく、防災研究の面からも役立つ」と話している。
同研究科吉田建築系図書室によると、昨年10月、職員が「関東大震災 製作所 大阪毎日新聞社」とラベルに書かれた映画フィルム入りの缶を発見。フィルムの一部がさび付いていたが保存状態はよく、約12分間の映像の分析を進めていた。
冒頭に「魔の手の刻々に延びつつある9月1日の大東京 9月1日午後0時半から同夕刻まで 大阪毎日新聞社 特派活動写真班決死的撮影」とのタイトルが流れ、続いて「大正十二年9月 実写 関東地方大震災」「贈 京都帝国大学 大阪毎日新聞社」と示されている。
フィルムは動画で、77場面で構成されている。多くの建物が火と煙に巻かれる中、人々が荷物を運び出し、避難する様子を撮影。避難者でひしめく上野公園や焼け残った浅草寺など、都心の惨状が収められていた。
1925年発行の「大阪毎日新聞活動写真史」によると、当時の活動写真班は東京に撮影隊を派遣した。ただ、フィルムの多くを占める地震発生当日には東京に到着しておらず、今回の映像を誰が撮影し、なぜ京都大に寄贈されたのかなど、不明な点も残る。
東京国立近代美術館フィルムセンターによると、関東大震災関連の記録映画は十数本あり、今回のフィルムと内容が重なる部分もある。当時、新聞社や配給会社が積極的に上映会を開き、義援金を集めるなどしており、互いに映像の内容を共有し合っていた可能性もあるという。
京都大大学院工学研究科は映像をデジタル化して保存し、フィルム自体は東京国立近代美術館に寄託する。【野口由紀】
◇京都大防災研究所の田中傑(まさる)特任助教(都市史)の話
これほど鮮明な映像は見たことがない。建物の看板の鮮明さは格別で、映っている場所の特定に役立つ。大火災の際の煙の流れや人々の避難行動の分析など、火災研究に有用な映像だ。