大移動の末、決戦の地レシフェへ到着
日々是世界杯2014(6月13日)
2014/6/14 17:00配信 宇都宮徹壱/スポーツナビ
今大会で取材者を悩ませるのは「移動」
昨年のコンフェデ杯、対イタリア戦の会場としても使用されたアレーナ・ペルナンブーコ【宇都宮徹壱】
大会2日目。今日13日(現地時間。以下同)はグループAのもう1試合、メキシコ対カメルーンがナタルで、そしてグループBのスペイン対オランダとチリ対オーストラリアが、それぞれサルバドールとクイアバで開催された。とりわけスペイン対オランダは、前回の南アフリカ大会ファイナルと同じカードだけに、できれば私も現地で観戦したかった。しかし14日の日本対コートジボワール戦の前日会見がレシフェであるため、この日は完全な移動日である。まずはサンパウロからレシフェまで、無事にたどり着くこと。それがこの日の最大のミッションと言っても過言ではない。
今回のワールドカップ(W杯)で、取材者を最も悩ませているのが移動である。何しろ日本の約22.5倍の国土を誇るブラジル国内に、12の開催都市があるのだ。たとえば日本の第2戦の会場ナタルと、第3戦の会場クイアバとの間は、直線距離にして実に2600キロ。東京から北京へ行くよりも遠い。当然、移動は飛行機の一択なのだが、夜の試合が終わって、そのまま明け方の便に直行というパターンもままあって、文字通り綱渡りのようなスケジュール感なのである。
それでも、飛行機が予定どおりに飛んでくれれば何ら問題はないのだが、そこから先にもブラジルらしい混沌(こんとん)が待ち受けている。すなわち、ブラジルの国内便では、すでに予約していたフライトスケジュールが突然変更になることが、ごく日常的に起こるのである(もちろんホームページ上ではアップデートしているのだが)。そんなわけで空港についたら、まずは自分が乗る飛行機が本当に飛ぶのか確認して、長い長いチェックインカウンターの行列を踏破し、ゲートの突然の変更(これもよくある)に注意を怠らず、機内のシートに腰を落ち着けたら初めて一安心できるのである。こうした移動のプレッシャーは、これから1カ月にわたって、われわれ取材者を悩ませることだろう。
サンパウロからレシフェに向かう飛行機は、半分以上を日本人で占められていた。ジャーナリスト、サポーター、JFA(日本サッカー協会)関係者、などなど。W杯親善大使としてブラジル入りしていた、横浜FCの三浦知良も同じ便だった。およそ3時間ほどのフライトで、コートジボワール戦が行われるレシフェに到着。とにかく眠い。しかし気合を入れていかねばならぬ。何といってもここは、決戦の地・レシフェなのだから。
明日のスタメンを「もう少し考えたい」ザッケローニ
1年ぶりに訪れたレシフェの海岸は波が荒かった。近くには「サメ注意」の看板が【宇都宮徹壱】
この日の試合は、いずれもテレビ映像を断片的にしか見ていない。メキシコ対カメルーンは、大雨の中で行われていた。会場となったナタルは、この時期は突然スコールのような大雨が降る(レシフェも同様)。日本はグループリーグの2試合をそうした環境で戦うわけだが、果たして大西洋側の熱帯モンスーン気候はどんな影響をゲームにもたらすのか? そしてそれは、日本にとって有利に働くのだろうか。スペイン対オランダは、1−1の前半まで見てホテルを出た。スペインの先制点はPKだったが、昨日の開幕戦に続いての微妙な判定。やはりFIFA(国際サッカー連盟)は、ペナルティーエリア内のファウルの基準を厳しくする方針なのか。メディアバスを待っている間、ツイッターのタイムラインを見ていると、オランダが5−1の大差でスペインにリードしていることを知り、驚く。いったい何が起こっているのか。ブラジルにいるのに試合が見れないもどかしさを感じつつ、明日の試合会場のアレーナ・ペルナンブーコに向かう。
アルベルト・ザッケローニの会見は、いつもの矢野大輔通訳ではなく、FIFAが用意した同時通訳だった。ちょっと勝手が違ったものの「スタメンはほぼ決まっている」こと、「選手のコンディションは整っている」こと、そして明日の試合では「自分たちのストロングポイントを強調して戦う」ことは理解できた。この4年間で積み上げてきたスタイルを、W杯初戦という重要な舞台でぶつけて真価を問うという、指揮官の覚悟が見て取れた。その後、前日練習の冒頭部分を見たが、23人の選手全員が練習に参加しているのを確認できたのはよかった。その表情も、特に気負った様子は見られない。コンディションさえ問題なければ、明日の試合は伸びやかで日本らしいサッカーを世界に披露することができるだろう。
メディアセンターでの仕事を終えて、再びメディアバスに乗り込み中心街に戻る。途中、激しい雨が降ってきた。明日も雨中での戦いになる可能性は十分に考えられよう。会見でザッケローニは、スタメンは基本的に決まっているとしながらも「もう少し考えたい」としているのは、あるいは試合当日の天候を気にしてのことなのかもしれない。個人的にはGKとボランチ、そしてワントップのポジションで、指揮官の迷いがあるのではないかと思っている。ザンビア戦での起用を見ると(3失点したとはいえ)西川周作の出番は十分に考えられる。ワントップは柿谷曜一朗がファーストチョイスだろうが、コスタリカ戦のように大迫勇也をスタメンにして柿谷をジョーカーとする選択肢もある。そして上記2試合に出場していなかったキャプテンの長谷部誠は、山口蛍とコンビを組んで久々にピッチに立つのではないか。その答えは、もう間もなくで明らかになるはずだ。
<つづく>
宇都宮徹壱(うつのみやてついち)
1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)。近著『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。自身のWEBサイト『徹壱の部屋』(http://supporter2.jp/utsunomiya/)でもコラム&写真を掲載中。また、有料メールマガジン「徹マガ」(http://tetsumaga.com/)も配信中
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