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 逮捕された容疑者の身柄拘束(勾留)について、裁判官が必要ないと判断した割合「勾留却下率」が、さいたま地裁で昨年秋から増えている。10月以降の7カ月の平均は全国水準の2倍に上る。勾留のあり方をめぐる若手裁判官たちの勉強会が、地裁内で活発になっていることが背景にあるという。

 逮捕、勾留によって容疑者から自白を得ようとし、否認すれば長期にわたって勾留し続ける司法のあり方は「人質司法」と批判されてきたが、地裁の動きは「脱・人質司法」といえる。

 さいたま地裁への取材によると、2009年から12年までは年間の勾留却下率が1%台だったが、昨年10月に急伸。今年4月まで5・49~11・11%で推移し、平均は8・11%。昨年の全国平均3・90%(最高裁まとめ)の水準を大きく上回った。

 裁判官は一人ひとりが独立した存在で、勾留するかどうかも、それぞれが独自に判断しているとされ、同地裁の戸倉三郎所長は「個別の事件の内容に応じて、適切な判断をしている。却下率の増減についてコメントできない」と言う。

 ただ、地裁のベテラン裁判官は「昨秋から活発化した若手裁判官の勉強会の影響が少なくない」と説明する。勉強会では、勾留を認めなかった個別事案を裁判官同士で検討して、意見を交わす。参加者は、具体的な証拠を検討すれば勾留が必要ないケースがあると認識するのだという。