ティキ・タカ3度目の崩壊
オランダがスペインを粉砕した試合は、ペップ・グアルディオラが率いたバルセロナによって4、5年前にピークを迎えたスペインのパスサッカースタイル「ティキ・タカ」の崩壊の第3幕だと見なすことができる。第1幕は2013年の春、チャンピオンズリーグ準決勝の舞台で、バイエルン・ミュンヘンがバルセロナに2試合トータル7-0の完勝を収めたことだ。
その1年後、今度はドイツ王者がグアルディオラに率いられてティキ・タカの再現に挑戦したが、アンチェロッティの現実的なレアル・マドリーに一蹴されてしまった。今度は「たった」5-0というトータルスコアだった。
そして最後は、今日のオランダだ。ファン・ハールのチームはデル・ボスケの率いる世界王者に5-1というスコアで冷酷なサッカーのレッスンを突きつけた。ラ・ロハにとって、1963年にベルナベウでのスコットランド戦に2-6で敗れて以来最悪の敗戦である。
サッカーのスタイルというものにも、間違いなく一定の寿命がある。ティキ・タカの時間が終わりを迎えたという見方に多くの者が同意することだろう。
それはその通りかもしれない。だが私の意見としては、スペインはプレースタイルの選択によってこの試合に敗れたのではなく、そのスタイルをうまく用いられなかったことで敗れたのではないかとも思う。
ごく単純に、オランダはコンディションが良く、モチベーションも高かった。一方のスペインは、非常に気前の良い判定でPKをもらって先制しながらも、プレーに締まりがなくミスを連発していた。パスサッカーを実践する上では致命的なことだ。
まず第一に、個人のミス(カシージャス…)が何度か起こり、オランダにボールを奪われて速いカウンターアタックを許していた。第二に、スペインは信じられないほどに規律を欠き、ライン間の距離をコンパクトに保つことができていなかった。
ロッベンとファン・ペルシは間違いなくワールドクラスの選手たちだが、それはピケもセルヒオ・ラモスも同じことだ。両チームの差は、明らかに異なるフィジカルコンディションと集中力にあった。
スペインの大敗は、日本代表にとって意義ある教訓とすることもできるかもしれない。
サムライブルーは厳密にスペイン代表を模倣しようとしているわけではないが、日本の選手たちの多くは近年の大きな流行となった攻撃的なパススタイルのサッカーをプレーして育ってきた。さらに、少なくとも部分的には、アルベルト・ザッケローニもその方向性を推し進めてきた。
このような「スマート」なプレースタイルは、戦術面の規律とコンディションが万全であって初めて効果を表すものだ。イタリア人指揮官はその重要性をここ数週間たびたび強調してきた。
日本はスペインと同じレベルにあるわけではないが、もちろんコートジボワールもオランダほど組織的なわけではない。だが、2つの試合にはいくつかの相似点が生まれることを予期できるかもしれない。
コートジボワールは間違いなく、ヤヤ・トゥーレやドログバらのフィジカルの強さを全面に押し出してくるだろう。ジェルビーニョの破壊的なスピードにも対処しなければならない。
百戦錬磨のスペインの選手たちが粉砕されたのと同じ運命をたどりたくなければ、日本は相手のスーパーな選手たちからボールを離しておくことが必要になる。
コンパクトな陣形を保ち、良いリズムと完璧な戦術的規律を持って相手よりスマートに戦わなければならない。まさにデル・ボスケのチームが実現できていなかったことだ。
文/チェーザレ・ポレンギ
GOAL JAPAN編集長。ツイッターアカウントは@CesarePolenghi