寝台特急:国内最長列車 廃止のお寒い舞台裏
毎日新聞 2014年06月12日 17時48分(最終更新 06月12日 18時27分)
「先例」の関係者は、トワイライト廃止の報を悲壮な思いで受けとめた。「とうとう来たかという感じです」。岩手県の第三セクター「IGRいわて銀河鉄道」の広報担当の男性社員が言う。IGRは東北新幹線の八戸延伸(02年)に伴い、岩手県内の盛岡以北の並行在来線(東北線)を引き継いだ。寝台特急「北斗星」「カシオペア」(いずれも上野−札幌)はIGRの線路を走っており、同社はJR東日本から運賃と特急料金を受け取っている。年間約3億円。「当社の旅客収入の2割を占める額」なのだ。
北斗星とカシオペアについても「北海道新幹線(新青森−新函館北斗)開業までに廃止されるのではないか」と取りざたされてきた。トワイライト同様、電圧問題があるだけでなく、ビジネス客も利用する北斗星は新幹線に客を奪われ、利用者が減る恐れが指摘されている。
「トワイライト引退が引き金になって、北斗星やカシオペアの廃止に向けた議論が進むことが最も怖い」と男性社員。この事情は、青森県の三セク「青い森鉄道」も同じだ。
◇切り離され不安定化する在来線
並行在来線を三セク化する仕組みは、1990年の「政府・与党合意」に基づいている。整備新幹線の建設を進める政府がJRの負担を軽減するために編み出した。新幹線が開通すれば、乗客を奪われる在来線の採算は悪化する。三セク化は、お荷物となったローカル線を、新幹線を「アメ」にして地元に押しつけたようなものだ。事実、並行在来線を引き継いだ三セクは、どこも運賃値上げや沿線自治体からの追加出資などで何とかしのいでいるのが実情だ。
世界の公共交通に詳しい関西大教授(交通経済学)の宇都宮浄人(きよひと)さんは「乗り換えの手間が増え、運賃も上がるとなると、路線のネットワークが損なわれて地元の乗客は減っていく。悪循環です」と指摘する。「新幹線を造ることだけが目的ではいけない。新幹線開業を機に地域の公共交通全体を使いやすく活性化させるべきなのです」